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地球は電気エネルギーの貯蔵庫か

地球は膨大な電気エネルギーを貯めている巨大な貯蔵庫であると言ったら、みなさんはどう感じるでしょうか?

地球には大気があります。この大気にはおおよそ100キロメートルの厚みがあって、この大気の上空には比較的電気を通しやすい電離層があります。地球の半径は約6400キロメートルなので、地球を1個のリンゴと見れば、この地球と電離層の間にある大気の厚みはリンゴの表皮ぐらいしかありません。この薄い大気の隙間を電波(電磁波)が全地球的に駆け巡ってます。この電波は電離層を超えて宇宙には飛び出さず、大気中を伝って地球の周りをひたすらぐるぐると回っているのです。

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「え、電波?そんなのあって当たり前じゃない」と思われる方もいるでしょう。ラジオやテレビを聴いたり、見たりするために、ラジオ局やテレビ局が日々アンテナから電波を送っているのですから、人工的な電波が大気中に溢れていて当然なわけです。ラジオやテレビが使っているこのような電波の波長は、10mから100mぐらいです。ところが、電波は地球上のいろいろな現象から発生しています。特に大きなものとしては、大気中で発生する雷光のような気象現象があります。ここで発生する電波には様々な波長を含んでいますが、共鳴という現象によって特定の波長をもつ電波だけが選ばれ、地球と電離層の隙間を地表に沿って飛んでいます。このような電波の波長は一番長いものでなんと約4万キロメートルと、地球一周するほどの長さにもなります。波長がこれ程長いと周波数はかなり低くなります。そして、この電波の特徴の一つは、地表と電離層という、電気を通しやすい壁に囲まれた全地球的な電波の共鳴によって発生したものであることです。この全地球的な電波の共鳴はシューマン共鳴と呼ばれています[1]。

シューマン共鳴を起こす電波は、電磁気学の空洞共鳴の現象として1950年代に予想され、研究されていました[2]。しかし実際に、この電波に最初に注目したのは、交流やテスラコイルの発明で有名なニコラ・テスラ[3]のようでした。1900年以前に、テスラは既にシューマン共鳴を観測していたと言われています[1]。学術的に最初に報告された観測は、1960年のBalserとWagnerが行ったものでした[4]。彼らが報告した周波数は、小さいものから7つほど挙げると、8、14、20、26、32、37、43Hzでした。特に最初の8Hzは、はっきりと見える形で観測されました。

ぼく自身、この事実について知ったのは学生の時で、その時はそれほど注目していませんでした。しかし、よく考えてみれば、地球と電離層の間の大気中で発生するシューマン共鳴には膨大な電気エネルギーが蓄えられていることが簡単に予想できるのです。シューマン共鳴のエネルギー源は自然現象なので、ほとんど尽きることはありません。言ってみれば、地球と電離層の間の大気は、膨大な電気エネルギーの貯蔵庫になっているのです。この電気エネルギーは、地表のあらゆるものの上を常に素通りしていています。電離層という衣をまとうことで、地球自身が電気エネルギーの貯蔵庫になっていることに気付いた時、地球の神秘にひとつ触れたような気がしました。

シューマン共鳴を起こすのは電波の共鳴であることを見てきました。次回は、波動という大きな枠からこの共鳴という現象に触れてみたいと思います。

by Jaros

参考文献
[1] John David Jackson, Classical Electrodynamics (Second Ed.), John Wiley & Sons, Inc. (1975).
[2] W. O. Shumann, Z. Naturforschung 72, 149, 250 (1952).
[3] Nikola Tesla, U.S. patent No. 787,412 (April 18, 1905).
[4] M. Balser and C. A. Wagner, Nature 188, 638 (1960).

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