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#小説
アーモンドチョコと彷徨う犬(三)
最近夢を見ない。人は眠るたびに必ず夢を見ていて、夢を見なかったというのはただ夢を見たことを忘れているだけなのだという説を見聞きしたことがある。でも僕には忘れたと思えない。思えないのは正に忘れたからなのかもしれないが、とにかく、目覚めた後の僕の頭に夢の記憶は欠片もない。
ところが、さっき、久しぶりに夢を見た。懐かしい顔だった。高校生の頃に僕が惚れていたクラスメイトの女子と、互いに半裸で抱き合った
アーモンドチョコと彷徨う犬(二)
死人でも見るかのように皆が僕を目を丸くして見る。後で落ち着いて考えてみても、その現象がなぜ起こったかについて決定的な仮説は思い浮かばない。でも、同じ宴会担当の北内さんという小柄な年配女性に限っては、怒りを通り越しているというよくある表現が当て嵌まるんだと思う。何せ一週間以上無断欠勤した上に堂々と始業時間五時間遅れの出勤だ。チーフの坂口さんに関しては少し妙で、僕をまるでそこに居ないかのように振る舞
もっとみるアーモンドチョコと彷徨う犬
体の力を抜いて、少し前に傾いて、あとは、重力に任せてそのまま。
風のない夜、僕の体は水しぶきと共に大きな音を立ててプールの水面に落下した。
着ている服も、髪も、びしょ濡れだ。水面から顔を出し、空を仰ぐと、満月ではないがそれにかなり近い形の月の光は程よく眩しくて、気持ちが良かった。けど、思っていたより水は冷たくて、僕は身震いしながらすぐにプールから上がった。
月明かりは綺麗だし、せっかく忍び