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「自分だけのストーリー」のつくりかた

最近、Twitterの見かたが変わってきた。
以前は、役に立つ情報の収集経路であり、面白ネタ(いわゆる「バズるもの」)の宝庫として楽しんでいた。
しかし最近追いかけてしまうアカウントは、その人の「生きざま」が見えてくるものだ。つまり、発信する情報の奥に「その人の人生のストーリー」が見えてくるもの。そういうアカウントは継続的に追いかけたくなるし、「いいね」で応援したくなる。自分のフォロワーにも紹介したいような「ステキな声」はリツイートしたくなる。

「ストーリー」は、選ばれた人だけが持っているわけではない。
みんなそれぞれがかけがえのない、自分だけの人生を生きているわけなのだから、誰だって「自分だけのストーリー」がある。しかし、その表現のしかたで、共感の輪の拡がり具合もだいぶ変わってくる。私が追いかけているいくつかのアカウントの中から共通する「魅力的なストーリーの要素」をご紹介したいと思う。

①「ギャップ」を感じさせる

魅力的な人生のストーリーを持つ人には、必ず「予定調和を崩す要素」がある。平たい言葉で言うと「〇〇なのに〇〇」というやつである。「偏差値40だったのに東大に合格」などは非常にわかりやすい例だ。「営業成績ビリからナンバーワン営業へ」「TOEIC300点から海外移住へ」「一介の主婦から起業して成功」など、どん底からの這い上がり、平凡な人生からの華やかな転身は、それだけで、その秘訣を追いかけたくなる。私は海外移住した人のアカウントを多くフォローしているが、それは、その行為だけでまわりの日本人にはない「ギャップ」を感じるからである。自分の人生の「最大のギャップ要素」は何か。それを考えるところから自分だけのストーリーの組み立ては始まる。

②「挫折」の体験がある

順風満帆な人生は、鼻について嫉妬の対象になるだけであり、感情移入をすることができない。そして、平凡な自分を突き付けられるような気持ちに、多くの読者を追い込んでしまう。
「この人にもこんなどん底の時期があったのか」
「この人も、こんな初歩的なことでつまづいていたのか」
書き手としては、自分の恥部をさらけ出すことにもなるため、挫折経験の開示は勇気がいることだと思う。しかし、それによって読者は共感できるし、「だったら、自分だってできるかもしれない」という勇気を与えることにもつながるのだ。

③「利他的な志」がある

有名になりたい、お金持ちになりたい、事業で成功したい。その欲望をむき出しにし、ノウハウを提供するようなアカウントも確かに魅力がある。しかし、継続的な応援したくなるのは、やはり「この世界を良くしたい」という純粋な動機のもとに活動していることが感じられるアカウントである。それは、荒れがちなTwitterのタイムラインにおけるある種の「清涼剤」としての役割も果たすし、そういう人のまわりにはやはり人が集まり、どんどん輪が広がっていくのを、フォローしているだけでも感じられるのである。そしてその志の源には、その人特有の「原体験」があり、それが、ちょっとやそっとの困難ではくじけないだけの「内発性」に支えられているのである。利他的な志というと固い言葉になるが、要は「誰に対して何をしてあげたいのか」が明確である、ということなのだと思う。

④「独特の価値観」がある

魅力的なストーリーを持つアカウントは、普通の人にはないものの見方を持っている。それは、その人の人生の個性から生み出されるものである。奇想天外な面白いことなど、どんな人でも、日々頻繁に起こるわけではない。平凡な日常をつぶやくだけでも、人がそれにいいねしたくなるのは、その人の世界の見方に、人を惚れさせる要素があるからに他ならない。「価値観」とはせんじ詰めれば、「自分は何を大切にしているのか」「そのためにどのような思考と行動のスタイルを持っているのか」ということに尽きるのだと思う。

⑤「不完全性」を感じさせる

最後は、意外かもしれないが「完璧ではないこと」がとても重要である。
いいねもフォローも、評価ではない。応援だ。どんなに成功して見えている人でも、基本的なところに欠点があったり、日々の生活の中で失敗があったり、嫌なことがあったら凹んでいる姿を正直に開示することも大切な要素である。それは人の共感を呼ぶとともに、応援してあげたい、という気持ちを生む。人の魅力は、長所だけではない。自分と同じように欠点を持つ同じ人間なんだ、ということを共有するための自己開示もまた、自分のストーリーの大事な一要素なのである。

「ギャップ」「挫折」「利他的な志」「独自の価値観」「不完全性」。
これは、自分のさまざまな経験や個性を、人と共有できるものに編集してくれるレシピだ。しかしここまで書いてきて、自分のアカウントを振り返ると「不完全性」以外は何も満たしていないような気がしてきた。

「自分だけのストーリー」をつくるのは、覚悟と勇気がいる。


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