note氷

【映画アナと雪の女王2・感想】もうヒロインとは呼ばせない【ネタバレなし】

 先日、ふと思い立ってアナと雪の女王の続編『アナと雪の女王2』を観に行ってきた。基本的に、私はハードボイルドな作風を好み、ラブロマンスは避けがちなので、映画館でわざわざディズニー作品を観ることはしない。今回はちょっとした好奇心で『アナと雪の女王2』を選んだが、心から観てよかったと思える作品だった。

 まだ映画館でも上映していると思うので、ネタバレをしないように細心の注意を払って、『アナと雪の女王2』の感想を語っていきたいと思う。

『アナと雪の女王2』あらすじ 

 まず、物語のあらすじは以下の通りである。

なぜ、エルサに力は与えられたのか――。
命がけの妹アナによって、閉ざした心を開き、“触れるものすべてを凍らせてしまう力”をコントロールできるようになったエルサは、雪と氷に覆われたアレンデール王国に温かな陽光を取り戻した。そして再び城門を閉じることはないと約束した。それから3年――。
深い絆で結ばれたアナとエルサの姉妹は、王国を治めながら、失われた少女時代を取り戻すかのように、気の置けない仲間たちと平穏で幸せな日々を送っていた。しかしある日、エルサだけが“不思議な歌声”を聴く。その歌声に導かれ、仲間のクリストフやオラフと共に旅に出たアナとエルサは、エルサの持つ“力”の秘密を解き明かすため、数々の試練に立ち向かう。果たしてなぜ力はエルサだけに与えられたのか。そして姉妹の知られざる過去の“謎”とは? 旅の終わりに、待ち受けるすべての答えとは――。
(『アナと雪の女王2』公式サイト・ストーリーより引用)

 前作『アナと雪の女王』から3年の月日を経たアレンデール王国で物語は始まる。アナやクリストフ、オラフたちと楽しい日々を過ごしていたエルサは、ある日突然不思議な歌声が聞こえるようになった。謎の歌声は、驚いたことにエルサにしか聞こえないのだ。どこからともなく響く歌声は、エルサたちをアレンデールの外へと導いていく。エルサとアナの両親が寝物語に聞かせてくれた“不思議の森”で、エルサたちは数々の試練に直面し、両親の死の真相や、エルサの魔法の力の源といった謎を紐解いていくのだった。

抹茶ソルト的・作品の見どころ①:魅力的な音楽

 前作に引き続き、アナ雪の世界は魅力的な音楽に彩られている。歌について詳しく語ると、ストーリーのネタバレになりかねないのが非常に残念だ。今作では、物語冒頭のエキゾチックなコーラスが誰によって歌われていたのかが明かされる。アナ雪の世界観が緻密に構築されていることの証左だと言えよう。

 今作のテーマソングはエルサが歌う『Into the unknown』である。アナ雪の象徴とも言える『Let it go』はキャッチーな曲調が一世を風靡したが、『Into the unknown』は非常に技巧的で、この曲を歌いこなす松たか子さんの歌唱力には脱帽である。平穏な生活を崩したくないと思う一方で、不思議な歌声の誘いに抗えないでいるエルサの葛藤と決意が見事に表現されている。

 また、エルサだけでなく、他の登場人物の歌も魅力的だ。私がいちばん気に入っているのは、クリストフのソロ曲だ。これまでのアナ雪の中では異色の曲調と映像に、誰もがくぎづけになってしまうことだろう。

抹茶ソルト的・作品の見どころ②:愛くるしいオラフ

 アナ雪のマスコットキャラクターといえば、エルサが魔法で生み出した雪だるま・オラフである。前作と同じく、オラフのコミカルな言動は作中のシリアスな雰囲気を和らげてくれる。どうやらオラフは3年の月日を経て、己の存在意義について深く考えるようになったようなのだが…?オラフから飛び出す突拍子もない言葉には、彼なりの哲学が潜んでいるような気がする。単なる思いつきかもしれないけれど。

 ところで、前作でオラフの日本語吹き替えを担当していたのは、私が大好きな俳優にしてバンドマンのピエール瀧さんだったが、様々な事情により今作では武内駿輔さんが声優を担当している。武内さんは大人の魅力に溢れた低音ボイスで有名だが、今回はオラフにぴったりのかわいらしい声色で演じていて、全く違和感がなかった。画面外から聞こえるオラフのアドリブに度肝を抜かれたので、視聴の際はぜひチェックしてほしい。

抹茶ソルト的・作品の見どころ③:重厚なストーリー

 あらすじでも述べたとおり、今作は様々な謎の真相に迫っていく物語である。両親の死の真相、エルサの力の謎、突如襲いかかる自然の脅威など、家族愛やラブロマンスに重きを置いていた前作とは全く異なるシリアスな展開には驚かされた。もし私が小さな子どもだったら、途中の展開で泣き出して劇場を飛び出したかもしれない。この作品からは、エルサやアナを単なるヒロイン、ディズニープリンセスでは終わらせまいとする制作陣の気迫が感じられる。

 私は、『アナと雪の女王2』におけるエルサとアナは前作以上に「女の子としてではなく、人間として」描かれていると感じた。それが最も強く感じられたのは、エルサが自然の力に対峙する場面だ。そこに描かれていたのは、「女の子でも戦える」という逆説ではない。両足でしっかりと大地を踏みしめて立つエルサは、ひとりの戦士であった。男であろうと、女であろうと、誰もが何かを選び取り、譲れないもののために戦っている。ひとりの自立した人間として、確固たる意志を持って立ち向かう姿は、プリンセスという枠組みにはおさまらない存在として私の目に映った。

おわりに

 『アナと雪の女王2』は、私にディズニープリンセスの新たな可能性を提示した。王子さまを待ち望む心優しい少女も魅力的だが、エルサやアナのように運命に立ち向かう気高い姿はより一層魅力的だ。実写版の上映が予定されている『ムーラン』が、女としての幸せを諦め、男として偽って生きる葛藤を描いたことを考えると、「女だから」という言葉に囚われずに生きるエルサたちは革新的な存在であり、ディズニーにおけるジェンダー表象がたえず変化していることがうかがえる。

 次はどんな物語が生まれるのだろうか。楽しみでたまらない。このnoteを読んだ方に、少しでもアナ雪2に興味を持っていただけたら嬉しい。

 

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?