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小説「プール・タブーを集めて」③(17日目)

 そして、ついにあと2つのタブーを残すのみになったわけだが、イチル先輩が
「今までいろいろと苦労かけたな」
と急にねぎらいの言葉をかけてきたので何だか逆に薄気味悪くなったおれら2人だが、ココはおれが
「いやいや、おれらの方こそ、彼女さんのことも含めて…」
「いやいや、その話はもうナシってコトで。忘れたい。」
とのセンパイの弁が。
 そんな感じで夜のプールサイドで3人集まってダベっていた。
「そういえば…夜のプールってフシギな印象を受けるよな…おれなんか水泳部で散々練習とかで昼間は使っているのに…夜となると何というか確かに願い事がナンデモ叶うとかぐらいできちゃうような気がするよな…今日みたいにお月さんが見えてると余計に…」
「センパイ!そういえば、願い事がナンデモ叶うなら何叶えたいとかってあります?」
と、トンちゃんがヒトコト。おれは正直もうちょっとセンパイの独り言のような言葉をじっくりと聞いていたかったのだが、そこはトンちゃんのことだ。そんな細かいトコロに神経が張り巡らされているようなキャラではない。
「そうだなァ…おれは彼女…イヤ元カノ…イヤもういい、もういい!おれのことは。そういえば、お前らはどうなんだ?」
「あ!そ~いえば、な~んにも考えてなかったっス!願い事が叶うって聞いたらプルタブ集めるのに必死で!」
「お…おれはやっぱアノ先生を生き返らせてほしいカナ…」
とのおれの一言のち3人の何とも言えない笑い声が真夜中のプールサイドにこだました。

8

 そして、夜のプールでのひと時から一夜明けた翌朝。イチル先輩が神妙な面持ちで
「スマン…。実はこのおれも5つのタブーまでしか知らないんだ」
「えーっ!じゃあ…あとどうやってあと2つのプルタブを…」
「イヤイヤ、と思っておれも7つのタブーを知ってるこの水泳部OBを呼んである」
と言ってセンパイが連れてきたのは水泳部のスの字も想像できないような仙人のような白髪と真っ白なヒゲ面をお持ちの一介の老人であった。
「ナニィ?ノゾミ、お前こいつらがあと2つのタブーを知りたいだって?」
「そうなんだよ、じ~ちゃん、頼むよ!おれからの最後の頼み事!」
「やれやれ、お前の最後とやらはいくつあるのやら…」
「えーっ!この人センパイのおじ~さんなの?」
「そうじゃ…ワシはイチル・ノノゾウ、アノ東京オリンピッ…ゴホゴホ!」
「スマンな…じ~ちゃんは早くお前たちに伝えるだけ伝えて帰りたいとのことなんだ。悪ィが今度また夜プールにきてくんない?」

続く。

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