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【小説】ココロのイヤフォン(19日目)


 だーい好きなあのコって何考えてんだろ。
実は言うと何も考えてないのかもしんない。喋ってみたらイイんじゃないかって?いやいや今の世の中便利なシロモノがその必要をなくしてしまっていた。
 でも…でも…ホントはあのコの心の声なんて聞かなくても良かったのかもしれない。

「ナッタ…アンタ、それマジで言ってんの?」
この姉貴に頼み事なんかしたおれが悪かったのかもしれない。
「う…うん…マインド・イヤフォン貸してもらえるだけでイイんだけど?」
「って…簡単に言ってくれるけど、私アレの免許を取るのにバイトどんだけしたと思ってんの?で、あの本体自体まだまだ実用化されたばっかしだから、当分高いだろーけど、どーしても欲しかったからネットで転売ヤーが売ってるのをやっとの思いで買ったのに…アレ、扱い大変なんだからネットの知識だけで使って何かあったとしたら私が貸したってバレたら即免許取り消しなんだから!」
と、まだまだ姉貴の剣幕は止まらない様子だったが…。

 ブーブー言いながらも結局のところ姉貴はマインド・イヤフォンを貸してくれた。とは言ったものの、どーゆーシチュエーションなら心の声を聞ける方に持っていけるんだろうか。どっちかとゆーとそっちの方が問題であった。何しろネットで調べた知識によると相手のヘソにイヤフォンのコードの先っぽを当てないといけないらしい。そんなハレンチな…っていうか、難易度高すぎ!ある種喋るよりハズいじゃん…。つーか、その前に前提として断りを入れないとダメだからコレって…どーゆーつもりでこのイヤフォンを開発したんだ!それこそその人のアタマ&ココロの中って…?つーっても姉貴との約束・レンタルのタイムリミットは一週間だ。こればっかりは後回しにはできない。でも…。

 こーなったら正面突破だ。と、ゆーか超古典的・超アナログな方法ではあるが手紙をしたためて好きなあのコ・コノアさんを休み時間に思い切って手渡した。その時の教室の男子・女子ともの様々な視線が気になったが致し方ない。
 そして放課後、屋上に呼び出したおれはコノアさんに話を切り出そうとした時、
「ナッタくん!分かった、分かったよ!確かお姉さんがいたよね?今、高校生の!で、例のイヤフォン借りたんじゃないの?」
えっ…なんて察しのイイ…コレって…。
「だったら私にも貸してくんない?私…心の声聞きたい人いるんだ!」
「えっ…でも…又貸しになるし…ってか姉貴に…」
「ダメかな?ちなみに…ちなみに…ナッタくんが心の声を聞きたい人ってだーれ?」
「えっえっ…」
おれは戸惑った。コノアさんって…ホント何考えてんだ…ますます心の声が…聞きたい!お…おれは…コノアさん…の…こ……

 気がついて目覚めた時にはおれは保健室のベッドにいた。と言うのもおれは屋上で興奮のあまり、ぶっ倒れてしまったらしい。気がついたら、おれの視線上にコノアさんがいた。
「ナッタくん、気がついた?」
「いや?あの…あの…あれ?マインド・イヤフォンは?あれがないとー!」
「あれってホントのホントに必要?」
確かに…おれは…まだレンタル期間が何日も残っていたが今すぐにでも姉貴にマインド・イヤフォンを返すことに決めた。
 でも、肝心のマインド・イヤフォンがないー!まあでもたった今おれはそんなことはどーでもいいぐらいに幸せの絶頂にあった。

「バカナッタ!アレなら彼女から返してもらったよ」
えっえっどーゆーこと?
「つーか、言うのも野暮だけど、ナッタに貸した夜にアンタの心の声聞いてメンドくさーと思ったけどコノアちゃんにさっさと心のウチを伝えたら、ちょっと戸惑っていたけど二つ返事でOKもらえたってわけ!だから、屋上では一芝居打ってもらったんだけど、アンタが倒れたのはシナリオになかったけどね…まあ終わり良ければすべて良し!ってことで!」
「で…でも…確かコノアさん…心の声が聞きたい人がいるって…それって、どこのどいつだ?」
「バカ!アンタ、ホンット鈍いわー」
あ!でも肝心なことを…
「あ!じゃあ姉貴がバイト頑張って免許取ってまでして心の声が聞きたい人ってどんな人なの?」
と言った瞬間、おれはしまったと思った。
「バカナッタ!」
ドタバタと姉貴の部屋から超ひさしぶりに追いかけっこが始まった。  

完。

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