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【小説】オンリーワンフェイス

全く便利な世の中になったものだ。
ルッキズムという考えが世の中にはびこってはいるが、逆に反対意見があるのもわかるが、実際問題見た目ってかなり大事。
「個性が大事!」とかいうけど顔に関しては相手からしたら第一印象になるし、なあ…。

このところ、おれは画像生成AIにハマっている。最初は見る専だったが、次第に自分でも作ってみたくなり、いろいろと調べてみた。そんな中にこんなサイトがあった。
「貴方の顔をAIで生成します!」
最初見た時は驚いたが、最近の世の中はSFの世界が実際に起きているかのような出来事だらけだと考えたら、怖い話だがそんなことでは驚かなくなっていた。
で、早速そのサイトに登録すべくデータを入力した。

おれって、そんなこと自分で言うのも何だが顔は悪い方じゃないと思っていたが、この際だ。思いっきりイケメンにしてすごいモテキ到来になったら…と夢想した。
で、ログインしてから画面を進めたが、どうやら画像生成AIのノリで出来そうな気がしてきた。AIが、
「貴方ノ成リタイ顔ヲイメージシテ、ワードヲ入力シテクダサイ」
ってなノリだ。
これって何回もやり直しが出来るのかな…?おそるおそる試しに、
「えっと、そうだな…菅田将暉と、えっと…」
「ワカリマシタ…ププッ!」
こら!AIのくせして笑うな!そこの読者もだ!

するとPCのモニターの上のウェブカメラからフラッシュが出て
「パシャ!」
と音がした直後、何か顔が…顔全体がまさしく顔料みたいにインクや絵の具を混ぜ合っている、そんな感覚に陥った。
が、数秒後、
「チン!」
と他にこの音以外の適当なものがなかったのかという音で、おれの顔は出来あがった。
「ハイ!エット、ソウダナ…菅田将暉ト…エット…デス!」
そしておれはモニターにうっすらと映る顔を見て、あわてて洗面台に行った。
確かに…菅田将暉の要素はあるけど…慣れていない画像生成AIのようにヘンテコな部分があるわけじゃないけど…。
「何か違う…」

結局のところ10回ほどリテイクして3回目ぐらいのがまだマシなツラだったので、これでいってみよう!と思って街へと…と思ったが…
ここが落とし穴だったんだが、
「おい!AI!3回目のがいいんだけど!」
「コレ以上ハ無料プランノ上限ヲ超エテシマッテ11回目二ナルノデ出来マセン。有料プランヲ御案内シマス。」
と有料プランの金額を見て、そっちの方が驚いた。
こんなのニートのおれに払える金額じゃねえ…。
おのれ、はかったな!と言っても遅かった。微妙な出来の10回目の顔で有料プランを払うまで、いや、来月になったらまた無料プランでも10回は出来る!その時まで…この顔で暮らすのー!と、その時オカンが帰ってくる音が、
「あんた!誰やの!おとうさーん!泥棒!警察呼んでー!」
「違う!いや、違うんだって!」

と、結局オカンが警察を呼んだのだが…
「ヲホン!ああ…それはまだ…開発中のオンリーワンフェイスですね。実際に被害に遭われている方が非常に多いので…」
と、おれはなるほど説得力あるなあ…さすが!おまわりさん!と思ったら、おれの顔よりもウン10パーセントほどの菅田将暉的要素が少なく入っているぐらいでヒドイ出来の…といったら、悪いが…
「笑うな!いや、もう…笑いなさい!」と半ばヤケクソ気味でおまわりさんは怒りながら笑っていた。
で、ネットでそのオンリーワンフェイスを検索してみたら、画像で見るとおれよりヒドイ?のがいっぱい…。これで安心?
いやいやナンバーワンには、こんな顔ばっかりの中じゃ、なってもなあ…。
やっぱりオンリーワン?


完。


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