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米国移住したのち、老後に日本に帰るかどうか問題

 先月末くらいに、米国に移住した後、老後そのまま米国に住み続けるか、日本に帰国するかという話題がtwitterで出ていました。この話題は、個人的にとても気になったので色々調べてみました。

実際にアメリカに移住し、老後を迎えた人たちの声

 実際に、アメリカに長年住んで老後を迎えた人がどういう考えでどう決断したのかについては、福田恵子氏が「ディスカバー・ニッケイ」というサイトで沢山記事にしておられます。上記の2つの記事はその福田恵子氏の執筆した記事になります。2つの記事を読んでいると老後にアメリカに帰国する人たちの理由としては、⒈日本に子どもがいる、伴侶と死別した等の理由でアメリカに身寄りがない。
⒉アメリカの介護・医療費が高い
の2点、反対にアメリカに永住を決める人の理由としては、
⒈アメリカに子どもがいる。
⒉メディケア(米政府による医療保険制度)を受けることができ、医療費の自己負担額を抑えることができる。
の2点に集約されるのかなと思います。おそらく、子どもや身寄りとなる人がどこに住んでいるかメディケアの受給の可否が老後帰国するか否か決断する上でポイントになっていると考えられます。

アメリカの公的医療保険制度について

 上記で出てきた「メディケア」非常に気になりますよね。
アメリカでは、65歳以上の高齢者、身体障害者、慢性腎不全患者を対象としたメディケアと低所得者を対象としたメディケイドという大きく2つの公的保険が連邦政府または州政府によって提供されています。保険に加入するには、所得や病状などに厳しい制限があるため、誰でも入れるわけではありません。そして、加入するパートによっては保険料がかかります。
 また、メディケアは医療費の負担を軽減してくれますが、その後の介護に関するケアやリハビリについては保障対象外です。

メディケアを受給できる条件を満たす人は、
・65才以上で、アメリカ居住5年以上の、アメリカ市民権または永住権保持者
・65才未満の身体障害者で、一定の資格を満たす人
・末期の腎臓病またはLou Gehrig病(筋萎縮性側裂索硬化症)の人

のいずれかに該当する人で、そのうちメディケアに加入している企業などで本人または配偶者が10年以上働いていた人は入院費に対する保険料は無料です。
(参考HP:健康保険USA介護ぷらす)

アメリカでの介護の実際

  アメリカでは多くの高齢者が在宅ケアを選択し、老人ホームや介護施設への入居は少ないようです。2010年の US censusによると老人ホームを利用する高齢者は3.1%なのだそうです。
 在宅ケアということは訪問看護や訪問介護を利用されている方もいるのかなと想像するのですが、家族(配偶者、子どもなど)に介護をしてもらうというパターンが多いようです。家族を介護する「家族介護者」は成人したアメリカ人の26.5%を占めているといわれています。4人に1人以上が家族の介護に関わっているので少なくはないですよね。

 例えメディケアを受給できたとしても、介護ケアに関する負担は全額自己負担ですし、専門的なケアが受けられる介護施設は費用が高いので、アメリカの高齢者は在宅で家族によるケアを望むのでしょうね。家族介護者の約66%が女性です。また、約60%が就労をしている人、つまり働きながら介護をしている人、という事になります。
(参考HP:Caregiver Action Network
https://www-caregiveraction-org.translate.goog/resources/caregiver-statistics?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc

National Family Caregiver Support Program

 こうした家族介護者が多いという背景から、2000年にアメリカ高齢者法(Older Americans Act, OAA)が改正され、連邦政府が全米家族介護者支援プログラム(National Family Caregiver Support Program)を 創設しました。
 
 介護者支援プログラムは介護の現物給付(レスパイト等)、直接的及び間接的現金給付、介護 者就労支援、などを規定しています。このうち間接的現金給付は介護施設や介護サービスの利用費に相当する金額を家族介護者の税額から控除するプログラムで、就労中の介護者が対象となります

 このNational Family Caregiver Support Programはとても良い制度ですね。こうした制度が整うくらいには、アメリカでは家族による介護が一般的なのだろうなと推測できます。

(参考文献:新井光吉,アメリカの介護者支援,海外社会保障研究, Autumn2013,p31)

まとめ

 以上、実際に老後を迎えてアメリカに残るか日本に帰国するか決断した人のインタビューとアメリカにおける医療保険制度や介護の実際を見てみると、老後アメリカに残るか否かは、子どもや身寄りとなる人がアメリカに在住しているか否かという点がポイントとなるようです。アメリカにおいては、老人ホームの入居はせずに、家族や友人に在宅ケアをしてもらう選択をする人が多いようです。アメリカの専門的なケアが受けられる老人ホームや介護施設への入居や利用は自己負担費用が多くかかるため、よほど資金面で余裕がないと選択できません。ですので、「もし、自分に介護が必要になったら、きっとアメリカで家族が見てくれるだろう」と思える人はアメリカに残るし、そう思えない場合は日本の介護制度の方が手厚いので日本に帰国することを選択されるのかもしれませんね。


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