にゃくいちさん
自己喪失の恐怖
思い出したくない過去を、共有している李亜と明妃。二人は故郷である二本木を離れ、古都、嘉久でルームシェアをし、平穏を保ちながらも、どこか不安な影を感じていた。
そんな彼女達の元に、二人が育った施設の関係者、久慈が訪れる。彼は、李亜に対して「そろそろ二本木にお戻りになる頃かと思いましてね」と船のチケットが入った封筒を手渡した。その日を境に、「にゃくいちさん」という不思議な言葉が李亜の耳にこびりつき、彼女の現実が崩壊していく。
逃れることのできない定めに翻弄され、戸惑う暇も与えられない李亜。彼女の背景には、人間の世界とは違う、慣習や倫理観が支配する社会があったのだ。