にゃくいちさん 十三話
彼女は部屋に戻ると、すぐに浴室のドアを開けた。浴槽には赤、白、ピンク、黄と様々な色と形の違う薔薇の花弁が浮かべられていて、甘い花の香りと温かい蒸気が李亜を包んだ。
「はぁー」と彼女は大きな溜息をつく。浴槽に体を沈めたまま、両足を浴槽の外へ出し、李亜は足を組んだ。そして両手で両膝を押さえるようにしながら、天井を仰ぐ。今の待遇に対する逡巡が彼女の中にあるのか、自分の境遇を嘆いているのか、それはわからない。彼女の視線は天井を捉えているが、何かを見ているという感じではない。
「なん