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こわい夢

兄は、平日は6時半、休日は6時に目覚ましでシャキッと起きて、朝活までする朝型人間だ。そんな兄がめずらしく、目覚ましが鳴っても起きず、夫に体を揺すられても起きず、時間より遅れて起きてきた。「ごめん、ちょっと起きるの遅くなっちゃった」と申し訳なさそうに(誰も困らないけど)起きてきたときは何も思わなかったが、ちょっとした隠し事があったようだ。

今週は登校日が2回に増えたので、学校へ行かない日の課題量がグッと減った。これまでは、午前中いっぱいを費やしてこなしていたが、課題量が減る→午前の自由時間が増える→その時間に別の勉強をプラスアルファでする、なんてことはあるわけもなく、ゲームやマンガ片手にゴロゴロしている。その様を見て、イライラするのは私である。

今は休日じゃないんだぞ。こういう時間を有効に使って、習い事の練習や苦手な勉強の復習などしたら? 君には上達したいという気持ちはないのかね。何でも上達するためには、繰り返し練習する努力が必要なんだぞ。1回取り組んで「はい、おしまい」じゃ身につかないに決まってる。ーーこういうときの饒舌は、なかなか止められない。段々と兄の目に涙が溜まってきた。

「勉強も習い事の練習もやりたくないわけではないけど、今日はやる気が出ないんだよ。こわい夢を見てさ、こわくて起きたらそのあと眠れなくなって、夜も明けちゃって、それで朝は起きられなかったんだ」「どんな夢だったの?」「こわくて言えない」「お母さんも昔はこわい夢をよく見たよ。誘拐される夢とかさ」「へー」「連れ去られるとか、死ぬ夢とか見た?」「(コクリ )死ぬ夢」「あら!死ぬ夢ってラッキーなんだよ!お母さんも一度でいいから見たいと思っているけど、まだ見られていないよ」「そうなの!?」「そうだよ、知らなかった?」「うん!お母さんありがとう!」

兄は、プールで溺れて死ぬ夢を見たらしい。なぜ自分が死んでしまったことがわかったのかを聞いてみると、自分のお葬式が営まれている光景が見えたからだという。思わず目が覚めて、2時間も寝付けなかったなんて、よっぽどの恐怖だったのだろう。そういうのは私も何度も経験がある。重いテーマを軽くあしらったが、心は軽やかになっただろうか。夢は夢、現実とは違うんだよ。混同すると精神的につらくなるだろうから、そう思っていてほしい。

突然どうしたのだろう。聞けばこのところ、こわい夢をちょくちょく見るという。この3か月間、新型コロナを最大限注意しながらも、家庭内がシリアスな空気にならないよう過ごす努力をしてきたつもりだ。それでもストレスを感じているのかもしれない。はたまた、寝るときは窓全開でも暑苦しくて、夜明けには冷えた空気で寝冷えしている、最近の睡眠環境が悪いのか。とにかく今夜は、ぐっすり眠れますように。

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