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【松下政経塾の教え】5分で読める、新しい人間観の提唱について【松下幸之助から学ぶ】

松下政経塾は、パナソニックの創業者・松下幸之助によって設立されました。その原点は、「物と心の繁栄を通じて、平和で幸福な社会を実現したい」と願う強い想いでした。

パナソニックの創業者、松下幸之助の言葉を借り、コロナショックで苦しむ日本人に向けて、今改めて人間観の見直しをしたい。スタートアップや起業家など、経営に携わる者が、原点を振り返る一助になれば嬉しい。

また、あわよくば、現代人がコロナショックに負けずに順応していくことを願う。以下は「新しい人間観の提唱」の引用である。


『新しい人間観の提唱』

 宇宙に存在するすべてのものは、つねに生成し、たえず発展する。万物は日に新たであり、生成発展は自然の理法である。
 人間には、この宇宙の動きに順応しつつ万物を支配する力が、その本性として与えられている。人間は、たえず生成発展する宇宙に君臨し、宇宙にひそむ偉大なる力を開発し、万物に与えられたるそれぞれの本質を見出しながら、これを生かし活用することによって、物心一如の真の繁栄を生み出すことができるのである。
 かかる人間の特性は、自然の理法によって与えられた天命である。
 この天命が与えられているために、人間は万物の王者となり、その支配者となる。すなわち人間は、この天命に基づいて善悪を判断し、ぜひを定め、いっさいのものの存在理由を明らかにする。そしてなにものもかかる人間の判定を否定することはできない。まことに人間は崇高にして偉大な存在である。
 このすぐれた特性を与えられた人間も、個々の現実の姿を見れば、必ずしも公正にして力強い存在とはいえない。人間はつねに繁栄を求めつつも往々にして貧困に陥り、平和を願いつつもいつしか争いに明け暮れ、幸福を得んとしてしばしば不幸におそわれてきている。
 かかる人間の現実の姿こそ、みずからに与えられた天明を悟らず、個々の利害得失や知恵才覚にとらわれて歩まんとする結果にほかならない。
 すなわち、人間の偉大さは、個々の知恵、個々の力ではこれを十分に発揮することはできない。古今東西の先哲諸聖をはじめ幾多の人びとの知恵が、自由に、何のさまたげも受けずして高められつつ融合されていくとき、その時々の総和の知恵は衆知となって天命を生かすのである。まさに衆知こそ、自然の理法をひろく共同生活の上に具現せしめ、人間の天明を発揮させる最大の力である。
 まことに人間は崇高にして偉大な存在である。お互いにこの人間の偉大さを悟り、その天命を自覚し、衆知を高めつつ生成発展の大業を営まなければならない。
 長久なる人間の使命は、この天明を自覚実践することにある。この使命の意義を明らかにし、その達成を期せんがため、ここに新しい人間観を提唱するものである。

昭和四十七年五月 松下幸之助


追記 「王者・支配・君臨」について

この『新しい人間観の提唱』においては、ややもすれば弱いものと考えられている人間を、「偉大なる王者」として認識しようとするものです。したがってここでは、人間は王者としてふさわしい責務、行動をみずから自覚実践しなければならないということになります。
真の王者であるということは、いいかえれば自己の感情、欲望、愛情などにとらわれず、正しい価値判断につとめて、人間として万物それぞれを生かし、ひろく共同生活を向上進歩させようということです。
また、支配・君臨するということは、自然の理法にもとづいて、万物に順応するということです。いいかえれば万物に従いつつ万物を導き生かすこと、これに徹することが、支配・君臨するということです。
「王者」ということば、「支配・君臨」ということばなど、過去の通年をはなれて、いま一度この『新しい人間観の提唱』をご高読いただきたいと思います。


いつもありがとうございます。少しでも皆様の為になることを願っております