銀座の地下のドイツにようこそ! 〜ドイツワイン会を開催しました〜
ドイツワインばっかり飲む会を開催しました。またニッチだな!
ドイツワインナイト前夜
今回のワイン会は、新橋駅からほど近い『高級ドイツワイン専門店 銀座ワイナックス』さんとのコラボ企画でした。
ワイナックスさんといえば、”ドイツワインの肩身が広い”ことで、全私のなかで有名なお店。noteをさかのぼったら、最初にお店に足を踏み入れてからちょうど2年が過ぎていました。月日が経つのははやい…
▶ わたしが最初にワイナックスさんを訪れたときの記録。そうだった、この頃のアタシ、こういうテンション設定だった。
ところで今回のコラボ会は、銀座ワイナックスSNS「なかのひと」としてご活躍中のミエさんからのお声掛けで実現しました。
ミエさんは、ワイナックス創始者であり現代表でもある、星野社長のご令嬢。元はバリバリの営業職としてキャリアを積んで来られたそうなのですが、再三にわたるお父様からの「お手紙」を断るに断れず…かどうかはさておき、2年前に家業である「高級ドイツワインの輸入&販売業」を継ぐことになったのだそう。人生、いろいろ。
ちなみに、ワイナックスさんは本当に小さなご家族経営の会社でして、お父様がワインを輸入し、お母様が「銀座の名物ママ」としてワインを売って来られた歴史があります。これを支えて来たスタッフたちもまた勤続が長く、最近、ミエさんの息子氏が「ワイン屋さんごっこ」をしているのを見て、「ミエちゃんも昔、ああやって遊んでたんだよ」とにこにこしていたそうです。なんだその親戚のおじちゃんエピソードは(ほっこり)
そんな元バリキャリのご令嬢ミエさんから、『ワイナックスに来たことのない方にも、気軽に来てもらえるような会がやりたいんです!』というご連絡をいただいたのが今年の10月。「よろしい、ならばワイン会だ」とばかり立ち上がったますたやが広報や参加者集めに奔走している間、ミエさんは着々とスマホを川に落とし、オトナなのに溶連菌にかかって寝込み、最終的にステロイド投与で肝臓を傷めておりました。たった2週間でそんなことある?さらにワイン会の朝はフライパンを足の指に落としたらしく、ほんとにバリキャリだったのか怪しいです(失礼)
しかしふたを開けてみれば、ワインやおつまみの準備に店内のレイアウト、そして当日のサーブまで、すべてをスマートに担ってくださったミエさん。やっぱりバリキャリだった。そんなわけでますたやはただひとを集めただけで、イベントにはいち参加者として、楽しく参加しただけだったのでした。主催とは。
さてこの日は、9名のみなさまにご参加いただきました。
ほとんどのみなさんが、ワイナックスは未踏の地とのこと。そうでしょうそうでしょう、なんせ入りにくいもんなこの地下の扉…!
ちなみにわたしは最初にうかがった際、『高級』の冠に恐れおののき、入店と同時に「あの~…高いお金出せないんですけど、いいですか?」と聞きました。おののきすぎて、なぜか正直に。
今となっては扉を開けるや否や、「こんにちわー!今日の試飲はなんですか?」と元気いっぱい聞く始末。だいぶ図々しく……じゃなくて、安心して扉を開けられるようになりました。高いお金を出せなくても怒られない、3000円の民にも優しいお店。好きです。
ワインでドイツを旅しよう
この日のコンセプトは『ワインでドイツを旅しよう』!
というわけで、ドイツのいろんな産地やいろんな品種を、満遍なく楽しめるラインナップをセレクトしていただきました。贅沢〜!
ワインは全部で6種類。せっかくなので、ひとつひとつ簡単にご紹介していきます。
シェッファー/リヴァーナー 2018[¥3850]
まずは「ドイツワインといえば」の、”ボックスボイテル”型ボトルが登場。早速ドイツっぽい!
生産地は「フランケン」とのことで、えっとそれどこだっけ?って言ったら、みんなから「北のほうだよ」「川のほとり、東の端だよ」などなどご指南をいただきました。北って…うえってこと?(地図が読めない女)
ドイツの生産地、なんだか何回聴いても覚えられないんですよ…ワインは飲まなきゃ覚えられない。どうやらドイツワインの飲みが足りないようです。今日は飲むぞ。
こちらのワインの品種は、リヴァーナー(=ミュラー・トゥルガウ)でした。かなりすっきり系でするっと飲めちゃうライトな飲み口ですが、ほんのり和柑橘のような苦みも感じます。
そんなこともあり、このワインは白身系のお寿司に合いそうだよね、とも話題になりました。なお、銀座ワイナックスさんは「ワインと寿司」を提唱されているお店でもありまして、最近ではもっぱら社長が「寿司に合うかどうか」で、輸入を決めているとかいないとか…あくまで風の噂です。
メスマー/ヴァイスブルグンダー・トロッケン 2021[¥4400]
続いて、プファルツのヴァイス・ブルグンダー。このワイン、好きでした。レモンクリームみたいな果実の香りとしっかりと輪郭のある酸、それでいて硬質なくちあたり。塩っぽくて酸味があるワイン、大好きなんですよアタシ!お値段とのバランスもいいしPayPay20%還元中だしで、今回のお持ち帰り人気No.1でした。なんなら実質3000円ワインだよこれ。
ところで、ソムリエ協会式ではこの地域、「ファルツ(Pfalz)」表記だったと思うのですが、今回の資料では「プファルツ」になっておりました。「ファルツ」なの?「プファルツ」なの?どっちなんだい?!と筋肉に聞いてたら、ドイツワインケナーを受けられたのぞみさん(人間)から「ドイツワイン協会は、プファルツ表記になってますよね」とのお答えがありました。なるほどーー!
ちなみにのぞみさん、この日はほぼ全員と初めましてだったはずなのですが、確かな知識となめらかな抜刀に一同が魅了(≒爆笑)されていました。「嫌いなやつはやっぱりキライ」の選手宣誓は、今回のワイン会のハイライトだった。詳しくは本人に聞いてください(炎上こわい)
カルフェルツ/メルラー・ケーニヒスライ・テラッセンGG リースリング 2021[¥11000]
さてお次はもう、今回の目玉ワインです。高ワインは、酔っ払う前に飲むのが正解。
こちらはグローセス・ゲヴェックス、いわゆる「GG」と呼ばれるドイツの特急畑のワインです。細かいようですが、この生産者はドイツ高級生産者連盟であるVDP(ファウ・デー・ぺー)には非加入だそうで、モーゼル地域の生産者団体、ベルンカステラー・リングにおける「GG」認定なんだそうです。ドイツは細けぇないろいろと…!
ちなみに、何度聞いてもGG規定が覚えられないわたしは、「なんかいいやつ」と覚えています。たぶん間違ってない。
▶ ナギさん会でも聞いたのに……ますたやのワイン知識は、「すごいワインに、すごいって言える」くらいで頭打ちしています。
ふわあっと花開く白いお花と、白桃やアプリコットのような甘い果実の香り。うわーッこれは、香りを楽しむタイプのいいワインだ…!
余談ですが、我が家ではこういった香りを楽しむ系のワインについて、「いつでもポケットに入れて持ち歩き、たまに匂いたい」という思いを込めて「匂い袋候補」と表現しています。というわけでこちら、めでたく我が家の匂い袋候補に認定されました、たぶん誰にも伝わらないけど!
飲み口はまだまだフレッシュですが、十分に飲めます。というか、わたしは白はフレッシュに飲むのが好きなので、むしろ今から10年くらいが好みかも。とにかく香りの層が厚くて、あんな香りがする、こんな香りもする、と、あることないことみんなで言い合いました。その全部が正解で楽しい、懐の深いワイン。イイワインはやっぱり楽しい!
どんどん行きます。
クニプサー/ "クラレット" ロゼ・トロッケン 2022
こちらもプファルツより、ボルドー品種のブレンドロゼです。これもしっかりしてて美味しかった〜!わたしが5000円ワインの民を名乗っていたら、これを買って帰ったに違いない。
正統派でシンプルな造りなのですが、どこか親しみやすさがあってごくごく飲んじゃう。安ワインの軽やかさとは違うんですが、かといって、高ワインとしてありがたがって飲むような感じでもない。
さらに、そのまま飲んでも美味しかったんですが、たぶんこれ、食事と合わせるともっと優等生なんじゃないかなあ。この「優秀な中間管理職感」に、5000円を出せるかどうか…ワインってほんと、「なんの価値にお金をかけるか」という、生き方のスタンスが問われる気がします。あと財布の体力。
シュロスグート・ホーエンバイルシュタイン/シュペートブルグンダー 2018[¥5500]
お次は、ドイツといえば!の第二弾。ドイツのピノ・ノワールであるところの、シュペートブルグンダーですってよみなさん…!
ところでわたしはシュペートブルグンダーを飲むと「雨に濡れた石畳の街にある、すすけた煉瓦造りの家」が思い浮かぶんですが、これまた誰にも伝わらないんですよね…それで、これってなんて言ったらいいの?と以前Twitterでつぶやいたら、今治のワインバー・ブルーノの青野さんが『それ、土っぽいんですよ』と教えてくれました。それだ。ワインのひとたち、みんななんでも教えてくれる…!
こちらもそんな「土の香り」がする、シュペートブルグンダー・オブ・ザ・シュペートブルグンダー。果実味がしっかりあって、ひとくち飲んでもう美味しい。ほんのり秋の森の香りがする、ちゃんと美味しいシュペブルでした。
こちらのワイン、ワイン迷子を自称するたべもえちゃんが「これは美味しい!」と発見していました。たべもえちゃん、「酸っぱいワインはそう好きじゃない」と話すのに、ますたや教の信者すぎてフランスと南アばかり飲むことになり、なかなか自分の好みに出会えないという謎の修行をしています。ほら教祖(ますたや)って、酸味教徒だから…今後は改宗を勧めます。
ハウク/"エッセンシャル" レゼルヴ・トロッケン 2018[¥6600]
最後のドイツはメルローとカベルネ・ソーヴィニヨンのブレンド、いわゆる「ボルドー」タイプの赤ワインです。
しっかりとした紅色に、樽の香り。口内に残るぎしっとしたタンニンは、まさにボルドー。酸味の高さとどことなく香る土っぽさが、ほどよくドイツらしさを醸し出し……と思った気がしますが、このあたりでわたしの記憶は途切れています。たぶん、会話に夢中だったんじゃないかな。
結局いちばん楽しかったのは、ワイン片手にどうでもいい話でゲラゲラ笑ったこと。めちゃくちゃ面白かったはずの、もう思い出せない話。ワイン会の醍醐味ってやっぱり、ワインを忘れることにこそあるんじゃないかなぁ…!(ワイナックスに謝れ!)
そして宴は続く
この日はワイナックスさんのご厚意で、ワインの持ち込みOK!となっておりました。ワイナックスさんの店内にドイツワイン以外が並ぶなんて、めったにない光景なんじゃないこれ…?
さらに、Mikiさんからのシュトーレンをはじめ、おやつ軍団のみなさまからのお持ち込みも。ちょうどよく甘いもしょっぱいもそろって、卓上がとってもイイ感じになっておりました。
あ〜そうそう、心地いいワイン会って、不思議となんか全体的に「ちょうどいい」感じになるんだよなぁ〜…!
ところで、ここで話はおもむろに、1本目のリヴァーナーへと戻ります。
このワインをひとくちめに飲んだとき、ほんのりと苦みを感じたんですね。でも、誰もそんなことは言ってない。しかも、わたしはもともと苦みを不快に取りやすいタイプです。
ちょっと不安になってきて、「あれ、さっきの甘夏がグラスに残ってたかな…?」って呟いたんです。そしたら師範から「わかりますよ。苦み、あるよね」って言葉が返ってきたんです。
わかるわかる、その香りもあるよ。
その感覚、理解できるよ。
今回のワイン会では、そんな言葉がたくさん行き来していた気がします。
なんか、ワインの表現ってちょっと怖かったりするじゃないですか。こんなこと言って違ってたらどうしよう、とか、変なこと言っちゃったら恥ずかしいな、とか…わたしはテイスティングがあんまり得意じゃない自覚があるから、ほんとはちょっとだけ、ワインの話には及び腰なんです。
でも、なんでだろうな、この夜はいつのまにか、思いついたことをたくさん言ってました。
これって、メロンの香りしない?あ、小梅ちゃんの飴っぽい!さっきより酸っぱいくないこれ〜?甘いと思ったけど糖度みたら大して甘くなかったわ、ワハハ…!――
ああ、楽しい…
本当に、楽しかったんですよ。なにを言っても「それもあるよね」が返ってくる。「それもある」「でも、これもある」。「そっちもいいけど、こっちもいい」が、どちらもちゃんと並立する世界。
ワインは化学だから、正解か不正解かは実際にはあると思うんです。この芳香成分があるから、この香りがするよね、とか。こういう熟成をさせると、こういう香りになるよねとか。もちろんそれは正しいんだけど、同時に「ばあちゃんちの畳のにおい」も許容される、この、面白さ。
そして、これってもしかしたら、ワインの話をしているようでいて、わたしにとってはそれだけじゃなかったのかもしれません。
「実は今日、手術が決まったんです」
天才ななちゃんがさらっと、そんなことを言ってました。前から足が痛くて歩けないことがあったんだけど、今日、ついに手術をしようってことになって…
そしたら、のぞみさんが言うわけです。
「あ、わかります。わたしもこないだワイナリーでますたやさんに会ったとき、実は似たような状況だったんですよ」
なんならあのとき、ちょっと自暴自棄だったんです、と話すのぞみさんの言葉に、みんなでワハハ!と笑います。いや自暴自棄でワイナリーって!斬新だな!
銀座の地下で、こうして夜な夜な、誰かの人生が軽やかにすれ違っていく。誰かにすごく聴いて欲しいわけじゃないけど、どうでもいいわけでもない、アタシの話。あしたになったら忘れてしまう、「ここでしか話せない」ささやかな話。それを誰も否定しないし、評価もしないし、ただ「わかるよ」と言って笑い合う。
片手には、美味しいワイン。ああ、なんだこれ。最高だな…
と、そんな空間が心地よくて隅っこでにこにこしてたら、いつのまにか大幅に時間が過ぎてました。ぬおーーーごめんなさい!!!(1時間オーバー)
というわけで、準備からお片付けまで全部まかせてしまったミエさんをはじめとした銀座ワイナックスのみなさん、打ち合わせからなにから本当にお世話になりました!これに懲りず、また呼んでください!
美味しくて楽しくて、ちょびっと勉強にもなって、こころがぱんぱんに満たされた夜でした。みんなありがとー!やっぱワインって楽しいな。
またこんな風にカタギのみんなとも飲みたいので、みなさまにおかれましてはちょっと無理をしてでも、ぜひますたやイベントに飲みに来てくださいませ!🥂(斬新)
▶ みんなの飲み友達、安ワイン道場師範視点のドイツワイン会はこちら。師範がワイナックスに!とドイツワイン界隈(?)が話題沸騰となっておりました。甘夏、甘口、ありがとうございました!やっぱりワイン会の締めに甘口があると締まりがいいです。甘いは美味い!
▶ 令和の文豪なのにのっけから入店拒否されるななちゃんのブログはこちら。ななちゃんは、ドイツワインナイトじゃなくて「ドイツワンナイト」に参加したそうなので、もしかして違うワイン会だったのかもしれません…
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■ ますたやとは:
関東在住の30代、3000円ワインの民(たみ)。ワイン好きが高じて、2023年3月から都内のワイナリーで働きはじめました。
2021年J.S.A.認定ワインエキスパート取得/2022年コムラードオブチーズ認定。夫もワインエキスパートを取得し、現在はWSETLevel3を英語で挑戦中。
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