北海道、ワインの道をゆく ~2022年 春~
人類が最強になれるタイミングが、この世にはいくつかあります。そのうちのひとつ、「大型連休」。
人間界で働く勤勉なますたやにも、「大型連休」はやってきます。そんな最強の人類であるわたしが迎えた、2022年のゴールデンウィーク。
新たなるワインとの出会いを求め向かったのは、広大な北の大地、北海道でした。
はじめに
さて今回の #ワ旅 、テーマは「北海道のワインを巡る旅」。
日本でもっとも冷涼な産地であり、かつ、近年ワインの質の向上が著しい北海道。ワインの生産量は山梨、長野に続く第3位と、日本ワインのなかでの重要な位置をしめています。
▶ 第4位の産地である、山形県へのワ旅はこちら。
温暖化によって葡萄の成熟度があがり、良くも悪くも今後の変化に注目が集まる北海道。
これからますます期待したい北の大地のテロワール、それをこの目で見て、風を感じ、そして空気を吸い込みたい。
北の大地で生まれたワインを、北の大地で地産地消したい…!
そう思いついたわたしは、最強の人類であることをいいことに、一路北の大地へと向かったのでした。
さて、旅は帯広からスタートします。
そこから富良野へと移動し、空知、そして札幌へと移動していくルートです。なお、今回は「余市」には寄りません。
それから今回のワ旅、移動はできる限り「現地調達」でおこなっています。記事上細かな移動方法は省いていますが、書いていない部分はだいたいタクシーか電車、もしくは徒歩と思ってもらってよいです。
ここには実は、こだわりました。なぜならわたくしますたや、そして旅に同伴したますたや夫、われわれはどーーーしても、ワインを現地で地産地消したかったんですよ。
と、いうことで、今回のワ旅の裏テーマは『飲みたいアナタのための、北海道ワイン巡り』。
とはいえ、だいたいお金か体力で解決していますので、石油王であらせられる方か、宝くじが当たった方、もしくはワインのためであれば、しばらくのもやし生活さえも厭わない方(※ますたや家です)は、こちらの旅程を参考になさっていただけますと幸いです。作戦名?・・・勇気!
と、いうことで、少々長い記事となりましたので、お時間のありますときにぜひどうぞ!
楽しかった旅の思い出を、誰かと共有させてもらいたくって、頑張って書きました🥰どうか、ぼちぼち読んでもらえると嬉しいです!
それでは楽しいワ旅の、はじまり、はじまり~👏
広大な帯広の地をめぐる
今回のワ旅は、帯広からスタートです。
帯広はなんといっても、「The・北海道」な風景が最大の魅力✨
帯広の初日には、いくつかの牧場をめぐりました。
といいますのも、先日コムラードオブチーズ(チーズ検定)の称号を獲得するなど、実は無類のチーズ好きのますたや。
チーズの聖地十勝にうかがうということで、こりゃもうなんとか現場(牧場)に足を運び、推し(牛)のお顔を拝見しながら推しグッズ(チーズ)を買わねばなりますまい!という、熱い思いに駆られたためです。思いつくことが基本オタク。
とはいえ関東平野に次ぐ広さを持つ十勝平野を、公共交通機関で移動するのはさすがに無謀。
ということで、帯広では現地合流したワイン友達に、車を出してもらいました、持つべきものはワイン友達(オタク)…!
それにしても北海道、「じゃ、隣の牧場まで車で50分ね~!」みたいなことが、1日にだいたい3回くらい起きます。
地図上ではすぐ隣に書いてあるのにも関わらず、ですよ。パッと見20分くらいなのに。北海道の地図、東京の縮尺と違くない?
この帯広での体験のおかげで、なるほど「隣駅まで歩く」とかいう意識は、この旅ではきっぱりあきらめよう、と心に決めることができました。
みなさん、覚えておいてください。北海道の「ひと駅」は東京の「5駅」だし、北海道の「徒歩15分」は東京の「徒歩25分」ということを。一体どうなってるの北海道?地図の縮尺違くない?
池田町ブドウ・ブドウ酒研究所(池田ワイン城)
さて、チー活もひと段落しまして、翌日からいよいよワ活のスタートです。
帯広ワ活の本丸はこちら、池田町ブドウ・ブドウ酒研究所、通称池田ワイン城です!
▲ 通称「ドリカム畑」を撮影しました。
池田町では町の特産として、「山幸(やまさち)」というワイン用ブドウ(黒ブドウ)が栽培されています。
この山幸、2020年に「甲州」「マスカット・ベーリーA」に続いて、日本で3番目に『OIV(国際ブドウ・ワイン機構)』に登録された、すんごいブドウなんですよ。
つまりどういうことかと言うと、この「山幸」のブドウを使ったワインをヨーロッパで作ったときに、エチケットにちゃんと『YAMASACHI』って名乗ることができるんですってよ、カッチョイイ!
近年、ソムリエ協会セミナーでも取り上げられるなど、「日本ワイン界」のなかでも大注目の集まるブドウ品種。えー、YAMASACHI、めっちゃトレンディじゃん…!
厳しい冬がおとずれる池田町では、ブドウ栽培は困難を極めたそうです。
寒冷地にも関わらず雪が降らない土地でもあり、冬になるとブドウの木が枯れてしまうのだそう。(※雪は保温効果があるため、雪が降った方がブドウの樹が守られます)
このため、寒さに強い「ヤマブドウ」を交配することによって、冬でも枯れない「山幸」を生み出すことができた…と、城の住人(スタッフさん)から丁寧に教えていただきました。ふむふむ。
城内の展示からは、1974年にワイン研究所ができてから現在までの、失敗と挑戦の歴史が垣間見えます。
幾度となく失敗を重ねながら、それでも不屈の精神でブドウ栽培を続けて来られた背景を知ると、なるほど「山幸」がOIVに登録されたことの、すごみと重みが伝わってきました。
そんな池田ワイン城でのいちばんの目的は、なんといってもこちら、池田町ワイン3種飲み比べ!
親である「清見」と、そこから交配によって生まれた「清舞」と「山幸」を、一度に飲み比べることができます。おお~、貴重!
味としては、「清見」はかなり軽やかですっきり。果実味はありますがそれを超えるほどの強い酸があり、キリっと透明な作りのワインです。
それと比べると「清舞」は酸も柔らかで飲みやすく、ほんわかした印象のワインに、一方の「山幸」はヤマブドウらしさが前面に押し出され、酸味と、山椒のような独特な香りが立つ、個性豊かなワインに仕上がっています。
城の住人(スタッフさん)に「山幸って、なんの料理に合いますか?」とうかがったら、「そうですね、ジンギスカンとか…」とのこと。つ、強いぜYAMASACHI…!
この「山幸」のほうをOIVに推したというのが、また池田町のすごいところだなぁ、と思います。飲みやすくなった「清舞」ではなく、より”池田のテロワール”を反映したブドウ品種として「山幸」を育てて行こうと試行錯誤されているところが、池田のみなさんのチャレンジ精神を反映している気がして、なんだかぐっときました。
今年、4つ目のワイナリーも生まれた池田町。
「山幸」による新しい挑戦が、ますます楽しみです!
帯広のワ活スポット
今回のワ旅のメインクエストは「ワイナリーめぐり」なのですが、サブクエスト的におとずれたワ活スポットについても、ご紹介いたします🍷
ワインで遊ぶことに疲れたらワインで遊ぶ、それが尊敬するストレッチマン大先生に教わった人生の極意!
さて、帯広駅から徒歩5分のところに、小さな屋台の集まる「北の屋台」があります。
このなかにある、プチ・プレジールさんに、ワイン友達の紹介でうかがってきました🍷さすが、持つべきものはワイン友達(オタク)!
お友達によると、おススメは「全部」で、気を付けて注文しないと食べたいものまで行きつかない!とのこと。やばいな。
実はこちらのマスター、漫画『銀の匙』にも登場されている名物マスターとのことで、うそ、超読んでたし…っ!!!(ミーハー)
ワインの話でも盛り上がり、マスターがかつてご夫婦でめぐられた、ボルドーやイタリアのワイナリーの写真をたくさん見せてくださいました。
いやはや、美味しい料理と美味しいワイン、素敵な夜をごちそうさまでした😋
二軒目にうかがった、同じく屋台に店をかまえるスピナッチさんでも、しっかりワインをいただきました。
帯広の屋台はどのお店も全7席と狭く、さらに時間が経つほどみなほろ酔いになってくるので、自然、お客どうしで話がはじまります。
お互いにワインが好きとなれば、それはなおさら。「十勝ははじめて?」「あそこのワイナリー行きました?」「あ、次はこのワイン飲むといいですよ」なんて話してるうちに、老若男女関係なく全員フレンドに。
そんな空気を、ときには積極的に、ときにはそっとアテンドしてくださる、屋台スタッフのみなさん。うーむ、なんだ居心地いいなあ、帯広。
笑いすぎて声が枯れるという久しぶりの感覚を味わいながら、見あげた満天の星空。
なるほど帯広の広大さは、空と大地、そして、人の懐だったのだなあ…と妙に感じ入りながら、ほろ酔い気分で帯広の夜の幕は下りたのでした。
富良野の夜はどう過ごすか
さて、お次のワ旅は『北の国から』の聖地、富良野へと向かいます。
帯広から富良野までは高速バスで2時間40分。『動物の飛び出しでバスが急停車することがあります』とのアナウンスに、そんなことあらへんやろ~とタカをくくっていたら、動物、ふつうに飛びだしました🐰 北の大地、いつも全力。
お気に入りのポッドキャストなど聴きながら、うとうとしているうちに到着です。
ちなみに富良野には夜たどりついたのですが、20時をすぎた富良野のまちは真っ暗。
かろうじて開いているバーは人がたくさんで入れず、暗い町をさまよった結果、このような晩ご飯となりました。
これが富良野名物、「夜になったら寝るんです」、か…(北の国からより)
富良野のワ活、なかなか楽しくなりそうです!(やけっぱち)
ふらのワイン
さて、5月といえどもまだまだ寒い北海道。天気も変わりやすく、晴れたかと思ったら強風が吹き、そして急に雨が降り始めます。
富良野岳の頂上には、真っ白い冠雪が。
▲ 富良野のブドウ畑の様子です。
そんな富良野岳にいだかれるブドウ畑を横目に、最初にうかがったのはふらのワインさんです。
ふらのワインさんは1972年にワイン造りをはじめられ、「ふらの2号」という独自の交配品種を使ったワインや、地域密着の実直なワイン造りを続けて来られたワイナリー。
ひんやりとした貯蔵庫での、長い歴史の感じられる展示に悠久の時を感じます。
そんな、地元に根差したまじめなで実直なふらのワインさんなのですが、なんかときどき展示に、小笑いをはさんで来るんですよねぇ… 見てください。
こういう各所の謎の注意書きによって、ふらのワインさん、完全に笑わせに来てるんですよ。
いつの時代に、誰が、誰向けに書いたのかわからなすぎて、絶妙にシュールな感じの空間ができあがっていました。なんで?
お店のスタッフの方たちも、みなさんいたってまじめで親切。自分たちのワインを愛する気持ちが伝わってきて暖かい気持ちになれるワイナリーさんなんですが、数々の謎の展示については、ついに最後まで謎のままでした。
一体なんだったんだあれは夢か…?
ドメーヌレゾン
続いてうかがったのは、ヤギが風船に吊り下げられているエチケットが印象的な、ドメーヌレゾンさんです。
スタッフさんから「試飲いかがですか?」とお勧めいただき、赤、白、オレンジ、泡と、全部で20種類ほどのラインナップをお見せいただきました。
どうやらこちらの店舗では、レゾンさんが発売しているワインのほとんどが試飲できるよう。なんと豪華な。
あまりの豪華さに、「試飲、おいくらですか?」とうかがったらところ、まさかまさかの「無料です」とのお答え。思わず「いやお金取ったほうがいいですよ!!!」と大声出ました。びっくりしたわ。
「上層部からは有料試飲の声も出ているんですが、現場で阻止しているんですよ~!」と爽やかな笑顔で教えてくださったスタッフのお姉さん。
いや、それはめちゃくちゃかっこいいけど、いい笑顔だけど、お金は取ったほうがいいですよ!!!(心配)
お店の外では、ヤギエチケットの元ネタであります、ヤギさんたちともご対面🐐
ヤギは土壌を踏みしめ、草を食べ、そして糞が肥料となります。こうして環境に配慮した、循環型のブドウ栽培を目指しておられるとのこと。
なるほど、こういったサステイナブルで継続可能な農業スタイルは、これからとても大事になってきますよね。それをヤギで実現していこうなんて、なんて尊い理念…!
・・・・などと思いながら店内を見渡すと、あちらこちらにさまざまな「ヤギ」が鎮座していることに気づきます。
・・・・・・・いや、ただヤギ可愛がってるだけやないかーーーい!!🐐
理念とかいったん置いといて、可愛いヤギをカワイイと愛でるみなさんが造るワインが、美味しくないはずがない(断言)
この日はワイナリーツアーも事前にお願いしており、醸造設備も見せていただきました。参加者は我が家だけということで、これあれですね、ふつうに個人的に醸造家さんからお話を聞かせてもらっただけ、っていう感じです🥰なんと贅沢な…!
ドメーヌレゾンさん、実は40ヘクタールもの畑から、年間4万本のワインを生産されているとのこと。これ、日本国内のワイナリーの中では、かなり大規模なほうです。
どうやらドメーヌレゾンさんは「グループレゾン」というグループ会社によって運営されているそうなんです。山梨のマルキワイナリーさんも同じグループとのことでした。
ふむふむ。こうしたある程度の資本のおかげで、2019年に就農されたばかりのわりに、この規模の施設を整えられているんですね。
ワインはどれを飲んでも美味しく安定感があり、特に白ワインの完成度の高さには正直びっくりしました。
最初から資金をかけられた幸運と、いい意味でこだわりすぎない丁寧で無理のないワイン造りが、レゾンワインの「等身大」の美味しさに繋がっている気がします。
いやほんと、ちょっと今回の旅で推しになっちゃうくらい、どれをいただいても美味しかったですねぇ…!
とはいえ、こんな大規模で大丈夫なんですか?と率直にうかがったところ、「正直、富良野という土地柄もあり、人も集まりにくく、手がまわってないんです…」とのこと。
確かに醸造施設のなかには、手が回ってなさそうな大量の段ボールが積みかさねられていました。
うーん、余生はヤギとともに富良野でワイン造りでもするかなぁ… でも富良野、夜、なんもないんだよなぁ………
富良野のワ活スポット
ふらのワインさんから徒歩10分ほどのところに、「カンパーナ六花亭」という、六花亭さんの支店があります。
ここがなんとですね、ブドウ畑のなかにたたずむ店舗なんですよ…!
こちらのお店、六花亭のお菓子を買えることはもちろんですが、ちょっとしたカフェスペースが設けられていて、一面のブドウ畑を見ながらほっとひと息つくことができるんです、最高。
ブドウ畑を見ながら「うわ~!日本じゃないみたい~!」とうきうきするところまではギリギリ一般人の体裁を保てていたのですが、「見て!この仕立て!えー!なに仕立てだろう?!」などと興奮しはじめたあたりから、一般人への擬態が怪しくなってきていますからねみなさん、そこんとこ気を付けてください。なに笑ってるんですかひとごとじゃないですよ。
これからラベンダーが咲き始めると、ますます富良野の美しい季節がやってきます。
ヤギとワインとブドウ畑に癒される旅、おすすめです。夜になったら寝てください。
空知の大地の奥深さを知る
さてお次の産地は、北海道で「余市」の次に注目されている「空知」地方へとうかがいます。
空知地方にはいくつかのワイナリーがありますが、一般開放されているのは、宝水さん、TAKIZAWAさん、そして山崎さんの3か所です。
特にTAKIZAWAさんと山崎さんのあいだは、徒歩でも移動が可能(徒歩15分前後)。
さっきTAKIZAWAさんを出るときにすれ違ったスポーツカーに、途中で追い抜かされ、そして山崎さんから去っていくのを見送る程度の時間はかかりますが、もはや北海道タイムに慣れてきた我々にとって、このくらいの時間なんかなんでもないんですよ。次の電車が50分後? 全然待つし。
一瞬の晴れ間がのぞいた空知の風を感じながら歩くのも、なかなかよい時間でした。
それにしても、この北の大地の「一瞬感」にも、だいぶ慣れてきましたよ。ほんと一瞬なんだよなぁ、陽がさすの…
▲ 山崎ワイナリーさんから見渡す風景です。
宝水ワイナリー
2004年に設立された宝水ワイナリーさん、小さなワイナリーですが、映画「ぶどうのなみだ」のメインロケ地となったことで一躍有名になりました。
二階には映画の展示もされていますし、ぶどうのなみだのポストカードなんかもいただけます。毎年ゴールデンウィークから売り出される、ブドウソフトクリームも有名みたいですよ、寒くて食べられなかったけど…!
宝水さんは、雪の結晶のエチケットのRIKKAシリーズが有名ですが、実はまだいただいたことがありません。
「日本ワイン」は、立派なイチ沼ジャンル。だからこそ「希少性は追いかけない、ご縁があれば買う」が、我が家の基本コンセプト。
そんなことを言ってるうちになんやかやと機会を逃し続け、ようやくご縁が繋がった、今回の宝水ワイナリーさん訪問だったというわけです。
自社畑もののシャルドネを購入させていただきましたが、現地での試飲はなかったので、これからいただくのがとっても楽しみです!🥰
TAKIZAWA WINERY さん
TAKIZAWA WINERYさんは、酸化防止剤無添加、野生酵母発酵による、ナチュラルな作りが特徴のワイン造りをされています。
こちらでは、3種のワインの試飲をおこなうことができました。
試飲をいただきながら、TAKIZAWAのスタッフさんから熱いお話をうかがいます。なかでも印象的だったのが、「買いブドウ」と「自社畑ブドウ」についてのお話でした。
「わたしたちは買いブドウによる醸造も、自社畑のブドウによる醸造もどちらもおこなっています」とTAKIZAWAさん。
「でも、どちらのブドウも、おなじ造りで醸造しています。だから、買いブドウ、自社ブドウ、どちらがいい悪いということではないんです。どっちも同じくうちのワイン。ブドウはもちろん、信頼できる農家さんからいただいていますしね」
なるほど、と思いました。
どうしても日本のワイン業界、いや、おそらく世界的に見ても、「買いブドウによる醸造」つまり「ネゴシアン」モノのワインは、自社畑で栽培されたブドウを使った「ドメーヌもの」のワインと比べて「格下」の扱いをされがちです。
これは特にブルゴーニュでは顕著で、それは「畑の個性(=テロワール)」を反映させたワインが至高である、というブルゴーニュ地方の歴史と文化によるものでしょう。
これに関してはもちろんひとつの真実ですし、これからも揺るぎない、大切な価値観であり続けると思います。
ただ、これまでワイナリーの方から、「この○○の絵がついたエチケットは買いブドウで造ったワインです」とご紹介いただいたときに、わたしはなんて思ってたかな?と思ったんです。
もしかするとわたしはこの説明をうかがうとき、「なるほど、格下ランクのワインなんだな」と、思っていなかったかな?と、はたと思ったんですよ。
買いブドウ、自社ブドウによるワインの違いは、格の上下ではなく単なるブドウの違い。
そこから造るワインには、どちらも同じだけ情熱を傾けている、というTAKIZAWAさんからのお話に、なんだか目が覚めるような気持ちでした。
ということで、自信を持って買いブドウものである、「旅路」のロゼ泡をいただくことにしました。
旅路は以前にも小樽のOSA WINERY さんでいただいたことのある品種ですが、フローラルな香りのわりに、とにかくシャープな酸が目立つ個性的な品種。
「これ、なにに合いますかね?」とうかがったら、「うーん、ジンギスカンとか…」って言われました。
あれ、池田の山幸もジンギスカンだったんじゃ…?
ジンギスカンに合わせに行きがちだな北海道のテロワール…!
山崎ワイナリーさん
さて3か所めは、山崎ワイナリーさんにうかがいます。こちらも試飲はおこなっていなかったので、ボトルだけ買わせていただくことにしました。
山崎ワイナリーさんは、すべて自社畑ブドウのみを使った丁寧なワイン造りをなさっています。すごい。
・・・と、ついさっきまで「買いブドウが格下ってわけじゃない」などと豪語した同じくちから反射的に「すごい」などと単語が出て来くるあたり、ますたやの底が知れるってもんです。
いやでも、わたしのワイン愛なんてこんなもんなんですよ。
なんかすごそう、なんか美味しい気がする、なんかマリアージュしてるかもしれない、なんかわたし、ワインのこと、わかってるかもしれない・・・!そんな、「気のせい」こそが楽しくて、こうして旅にまで出るんです。
買いブドウにも迷いなく愛情をかけるTAKIZAWAさんもすごいし、全部自社ブドウで醸造する山崎さんの覚悟もすごい。
矛盾しているようでどちらの「すごい」も共存できる、そんなワインの世界が、わたしはやっぱり大好きです😊
さて、そんな山崎ワイナリーさんからは、ピノノワール プライベートリザーブ をいただきました。
樹齢24年のブドウの樹を使ったピノノワールとのことですが、「現地販売のみ」の赤文字にやられました。ますたやの底が知れるってもんです・・・!
俄然注目中の北海道のピノノワール、おうちでいただく楽しみができました!🥰
富良野のワ活スポット
富良野駅から徒歩10分、北海道ホテルグリーンランドサンプラザ1階に『空知ワインステーション』というワインショップがあります。
こちらは空知のワインはもちろん、世界中のワインがそろった、見ているだけで嬉しいワ活スポット。
「あっ、見て、これが甘口のパシュランドュビックビルだね!」などと、「くちに出して言いたい」ワインがそろっていて、なかなか楽しいです🥰
しかもよくよく目を凝らして見てみると、ケンゾーエステイトのハーフボトルや、カリフォルニアの新進気鋭ワイナリー、北海道ワインのなかでもちょっと本州では手に入らないものなんかも置いてあったりして、見る人が見たら垂涎の的だろうと思うようなラインナップとなっていました。は~、空知のワイン界、奥深いな…!
ちなみに、お店の奥ではご飯をいただくこともできます。
「コースしかないんです」とうかがい、もちろんお願いしますと注文したランチコースが、なんとちゃんと前菜から出て来てデザートで締めるという、超ちゃんとしたコースでした、ウソやんこんなさらっと頼んだのに…?
空知の思わぬ奥深さに、お腹も心もはち切れんばかりにぱんぱんな1日。
まだまだ底が知れないな、空知…!
などと言っていると、北海道ワ旅も残すところあと1日となりました。
最後に行くぜ!一路、札幌へ!
札幌で描く都会の夢
札幌のテレビ塔のたもとで、北海道ワインが飲めるイベントがやっているらしい、という噂をつかんだますたや。
「北海道ワインが飲めるイベ」くらいで行くことが決定しましたので、さっそく街に繰り出してみました。
いやあそれにしても、札幌は都会だな~~~!
これまで人がいないところをめぐってきたため、急な人の多さに面食らいながらも内心ちょっとほっとします。
広島の田舎に生まれ育ったもので、都会には永遠の憧れがあるんですよね。これはもう魂に刻み込まれた憧れなので、たぶんこの先もずっと都会に、そして東京に、憧れ続けるんだろうなぁと思います。
さて、そんな感傷もいただきつつのぞいたイベントは、こちら。ピコレワインフェア。
ここでは3種のワインをセレクトして、いただくことができました(グラス1杯800円、3杯で1500円)。
ラインナップの半分くらいは北海道ワイン、もう半分は世界のワインです。ご飯の出店もありましたので、軽いランチに使われる方もいらっしゃる様子。うむうむ、いいね、楽しい楽しい🥰
もちろんわたしは旅のコンセプトを大事にするため、北海道ワインをいただきます。選んだのはこの3つ。
左端が、屋台で出会ったおじさんから「美味しいから見かけたら飲んでみな」と教えていただいた、奥尻ワイナリーさんのピノグリ。まるで「残糖あり」のような甘やかな口当たりに驚きます。基本は酸味が強い北海道ワインの中、人気が出るのもうなずけます。
真ん中は「10R(トアール)さん」という、もともと受託醸造専門のワイナリーが醸造された、えべおつWeinさんのいろいろ混ざった白。10Rさん、近年わずかながら自社のワインを発売されていますが、人気が高くなかなかお見かけできません。
ということでいただいてみましたが、やはり道産ワイン、酸が強い…!この「すっぱさ」を楽しめるかどうかが、道産ワインとの相性を左右するといっても過言ではなさそうです。ちなみにわたしは、酸はだいぶ好きなほう。それでも「酸っぱい」と感じるワインに出会うことが多く、酸が苦手な方にとってはかなりすっぱいぞ北海道…!
いちばん右はもはや推し、ドメールレゾンさん。こちらは自社畑ものの赤で、ワイナリーの試飲にはなかったものでした。
個人的な好みでいえば、値段と味のバランスを考えると、買いブドウで造られた「ルージュ」のほうを推したいです🥰でもこうしてふいに見かけると「やだレゾンさんだ…♡」と胸が高鳴るので、やはり現地で出会ったワイン、強しです。
と、いうことで、札幌でワインに油を売っているうちに、ワ旅の旅程もあとわずかとなりました。
それでは最後のもうひと押し、この旅最後のラストワイナリーへと向かいます!
北海道中央葡萄酒・千歳ワイナリー
新千歳空港のひとつ手前の駅、千歳駅から徒歩15分。
ここに「中央葡萄酒」さんの千歳ワイナリーがあります。
「中央葡萄酒」さんといえば、山梨県勝沼が誇る名ワイナリー。
わたしの元祖推し日本ワイナリーでもあり、今でもそのクォリティには飲むたびにうなずく、信頼度の高いワイナリーさんです。
その中央葡萄酒さんの第2ワイナリーとして1988年に生まれたこちらのワイナリー、2011年に分社・独立され、引き続き北海道の地でワイン造りを進められているそうです。
小さな扉から中に入ると、驚くほどの「蔵感」が。
「なんか、めっちゃ蔵ですね」という雑なコメントをつぶやくと、「昔、JAの穀物庫だったものを譲り受けたんです。穀物を保存するための場所なので、温度が一定に保たれやすいんですよ」と、きちんと説明をくださった千歳ワイナリーさん。
小学生みたいな質問にも丁寧に答えていただける、心落ち着く空間が広がっています。
千歳ワイナリーさんのワインには、余市の「木村農園」さんのブドウのみが使用されているとのこと。試飲もお願いできましたので、さっそく飲ませていただきました。
ピノノワールプライベートリザーブは、樽熟したピノノワールのなかでも特に「質の高い樽」を選別し、そこからさらに1年樽熟させてリリースされたピノノワールだそうです。確かに通常ラインのピノと比べると、柔らかで深みのあるワインへと変貌を遂げていました。
いやあ、日本ではなかなか難しいピノノワール栽培、北海道大先生にはぜひとも頑張っていただきたい所存…!
ほんと、ブルゴーニュが高くて買えなくなる前に、なんとかお願いいたしますなにとぞ…!
ところで北海道の「ケルナー」(白ワイン)、この旅でもいくつか出会ったのですが、フルーティで香り高く、どちらかというとボリューミーな口当たりのわりに、きっちり酸があって味わいがぼんやりしていなかったんですよ。結構、いい感じの子に出会う確率が高かった印象がありました。
冷涼地域で伸び伸び育つ品種なんでしょうねぇ、ケルナー。これは道産ワイン入門編として、チャレンジ(飲酒)してみる価値のあるワインだと思いました😊
そんなわけで、千歳ワイナリーを出た我々はこのあと、空港へと向かいます。
レジで会計中の夫の背中と、その向こうに広がる高い天井を見あげながら、ああ、これでついに旅が終わるのかぁ…と、満足感と寂しさがつのります。
北海道、いいところだったなぁ…!
札幌のワ活スポット
ところで札幌市内では、ワインフェア以外にもう1か所うかがったところがありました。それが、こちら。ワインショップフジヰさんです。
ますたや家の #ワ活 にとって、ワインショップめぐりは重要な位置を占めています。今回も、おもしろいワインショップはないかしらと、グーグルマップで見つけたのがこちらのお店でした。
ワインショップフジヰさんでは、奥のカウンターで試飲もできるのですが・・・
今回うかがった日には、たまたま、こちらにお会いすることができました。
さすがの北海道旅でも、1度も拝見することのなかったタカヒコさん。まさか旅の最後に出会えるとは…!
バッカスの采配に、ありがたく1杯いただいて帰りました。は~、そうそう、この梅シソ感なんだよなぁ…
ショップには次々とお客さんが来られていましたが、なかには醸造家の方もちらり。地元の方のみならず、北海道のワイン界隈の方から信頼を置かれているショップさんなのだなぁとお見受けしました。
いやはや、旅の最後にいい思い出をありがとうございました。っていうか、うちのバッカスが有能すぎて泣ける。まじで一生ついて行きます、いや、ついていいきますっていうか、憑いて(?)いてください、っていうか…
ワ旅の終わりに
今回の北海道でまず痛感したのは、とにかく過酷な自然環境でした。
冷たい空気、朝晩の寒暖差、吹き荒れる暴風。肌を痛めつけるひどい乾燥と、ころころ変わり続ける天気。
こうした過酷な環境は、ブドウにとってはある意味「よい環境」なのかもしれません。日中の寒暖差、乾いた空気、そして痩せた土壌。これらは「おいしいワイン用ブドウ」のための、素晴らしい条件となります。
でもこれ、人間が暮らしていくのには、やっぱり向いてはいないんじゃないかなぁと思うのです。
たった2日で手が荒れて、クリームが手放せなくなりました。鼻の粘膜が乾くので、うっかりすると鼻血が止まりませんでした。飛行機は揺れに揺れ、テレビ塔にはのぼれず、ホテルの加湿器は数時間で「エンプティ」になっていました。ああ、北海道!
しかしこの過酷な北の大地で、懸命にブドウを育て、そしてワイン造りを続けて来られた、ワイナリーのみなさんがいらっしゃるんですよね。
そのあっけらかんとした笑顔を見ていると、なんだか北海道が過酷な大地だということを、すっかり忘れそうになるんです。
あたりまえに自然と闘い、あたりまえに共存してきたからこそ、あたりまえに受け入れている「どうしようもない現実」がたくさん横たわっているはずなんですよ。
それはたとえば、トイレの扉が二重になっているところに、あるいは道路脇の位置を示す矢印に、あるいは「今朝そこでひぐまが出たんだよ」というタクシー運転手さんの語りの中に、よくよく目を凝らしていないと見過ごしてしまうそんな日常の中に、「どうしようもない現実」が見え隠れするのです。
それが、北の大地の宿命。だとしても、せめてわたしはそのあたりまえを、あたりまえじゃなく受け取る感性を、これからも持ち続けたいなぁ、と願います。
北の大地のワイン造り。
それは過酷な大地との戦いと、それを凌駕するワイン造りへの熱い思いが織りなす挑戦の歴史。
厳しい冬を乗り越えて生み出される、キリっと酸の効いた道産ワインをいただきながら、この厳しくも温かい北の大地へと、思いを馳せ続けたいと思いました。
わたしはこの旅でますます、北海道のことが好きになりました。
ひととの距離感がちょうどよく、けれども気づくとちゃんとフォローされている、そんな北海道の控えめな親切さが、わたしにとっては心地いい😊
きっとまた、うかがいます!
そのときまで、どうかお元気で。
――あ、地図の縮尺、きみだけは呼び出し案件です。(北海道、でっかいどう…!)
それでは、ここまでお読みいただいてありがとうございました!今年のゴールデンウィーク、みなさんはどのようにお過ごしでしたか?ぜひコメントで教えてください♪
そして、記事を読んで「頑張って書いたね!」って思ってくださいましたら、右下の「❤」ボタンを押して「スキ!」してくださると嬉しいです🥰
それではまた次の #3000円ワイン か、 #ワ活 でお会いしましょう!3000円ワインの民、ますたやでした(^○^)🍷
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■ ますたやとは:
関東在住の30代、3000円ワインの民(たみ)。ワインは週に約5本(休肝日2日)。夫婦で1本を分けあって飲みます。2021年、夫婦でJ.S.A.認定ワインエキスパート取得。これからもおいしいワイン、いっぱい飲むぞ~!
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