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瞬間的な「出来事」が永続的な「思い出」に~香港のセブンイレブンにて。

香港では「日本人?」と聞かれることが多かった。

香港金融市街を望む

香港のセブンイレブンは、日本のセブンイレブンとはその雰囲気が異なり、おばちゃんがやっている「個人商店」のような趣もあった。街歩きに疲れて水分を買いにセブンイレブンに入った時に、僕のこの旅のハイライトと言っていい出来事があった。

海外に行くとその国の貨幣に慣れるのに時間がかかる。だから、往々にしてレジで現金払いをするときには、余計な時間がかかってしまう。当然ながら、香港も電子マネー文化である。日本以上にそうだと思う。だから、僕もせっかく香港のICカードを持っているのだから、それでピピっと済ませたらいいのだけれど、すでに両替してしまっている現金もどこかで使わないとそのまま香港のお金を日本に持って帰ることになってしまう。そんなことしても仕方ないし、さらに手数料のかかる再両替は是が非でも避けたいところだ。

セブンイレブンの店員のおばちゃんは、支払いに時間のかかる僕を目に留めると、「日本人?旅行?」と声をかけてくれた。財布から目を上げると、丸めがねをかけたおばちゃんが僕に柔和な笑顔を向けてくれていた。僕はといえば、僕の後ろに出来ているレジ待ちの列に焦っているものだから、その笑顔にどれだけ救われたことか知れない。日本人ゆえの気の弱さがこういうところで表れる(いや、僕の個人的な性格に過ぎないかもしれないな)。

僕は「そう。日本から。初めての香港なんです。お金にまだ慣れてなくて、すみません。」と伝えた。「Don't worry,No problem No probrem. 」と"ゆっくりでいいわよ"と"ゆっくりゆっくり"という仕草で、そう伝えてくれるおばちゃんの笑顔が嬉しかった。

財布を探る僕に向けて「香港は楽しい?気に入ってくれるといいんだけど。私は日本には行ったことがないけれど、日本のことは好きよ。とてもいい場所みたいね。」とおばちゃんは続けた。「ありがとう。香港も楽しいですよ。ご飯もおいしいし。街も元気だ。とても気に入っている。でも、とてつもなく暑いと思う!」と、僕は自分が買った水とポカリスエット指して、額の汗をふく仕草をしながら、やっとのことでお金をおばちゃんに渡した。

おばちゃんは、「あっははは!私たちにとってはそうでもないわよ。これくらいじゃあね。じゃあ、たくさん飲みなさいね。」とお釣りとお水とポカリを渡してくれた。僕は礼を言ってそれを受け取ると、おばちゃんは「Have a nice trip,Take a care.Bye Bye!」と手を振ってくれた。

おばちゃんに礼を伝え、さらに僕の後ろにできてしまった列に向けて、「すみません」と頭を下げた。すると、その先頭にいた20代後半くらいの男性がレジに向かいながら「Bye Bye〜! Have a nice trip!」と笑顔で僕に手を振ってくれた。僕も「Thank you~!Bye Bye〜」と手を振り返すと、そのお兄さんの後ろに並んでいた人たちも一緒に手を振ってくれていた。最高に心が満たされて、一気に香港が好きになった瞬間だった。

これまでにいくつかの国を訪れてきて実感していることなのだけれど、その国のことが好きになるどうかは、やはりその国の「人」に対する印象で左右すると思う。僕がベトナムと台湾に殊更に愛着を持っているのは、やはり「親切に優しくしてもらった」という思い出があるからだし、マレーシアのクアラルンプールに対してはピリッとした感情を持ってしまうのはあのバスの態度の悪いおっちゃんのせいだと思う(笑)。とはいえ、好きか嫌いかというのは旅の印象の枝葉に過ぎないし、新しい思い出が出来れば嫌いは「好き」を上書きするだろうし、逆もまた然りだと思う。どんな経験、体験も総じて「エピソード」になって、「良い思い出」になる。瞬間的な出来事が、永続的な思い出となる。この積み重ねこそ、旅の醍醐味であるな、と思う。

一人旅に出るというと、「一人で海外なんて不安じゃないのか?」とよく聞かれるのだけれど、「不安だから行くんですよ」と僕はいつも答える。さらに
「円安のこんな状況のときに、わざわざ海外旅行なんて」ということも言われたりした。お金の問題は旅する上でとても大切な問題だけれど、円安が収まるの待っているうちにまた世界的疫病が流行って鎖国状態になってしまうかもしれないし、今以上に悪い状況になってしまうことだって考えられなくはない。

僕が一人で旅をする理由は「自分を鍛えるため」である。もちろん、タフさという意味で自身を鍛えたいということもあると同時に、より柔軟でしなやかな考え方、感じ方を手に入れたいという思いがある。そのためには、やはり「外へ」出ていくしかないのだ。圧倒的な「非日常の中」に身を置くしか、その方法はないと思っている。想定しうる、やれそうことをやっていても、自分自身の幅が広がることはありえない。昨日と今日、先週と今週、去年と今年で、まるでコピー&ペーストをしたような生活をしていたら、「変化」などおこりうるはずもない。そんなこと火を見るよりも明らかだ。だから、一人旅は「不安」でないと意味がない。少なくとも僕にとっては。

ここ数年、激動の時代を過ごした香港の街で、僕たちも、いや地球全体が「激動の時代」になるであろうとことを改めて思った。大切なことは、どんな時代になっても「それに対応できる自分」を作っていくことだ。

僕にとって、そのために一人旅は必要不可欠な構成要素である。

香港旅を終えて、早くも2ヶ月近くが経って、少しずつ「次の旅」への夢想を始めている。次回はアジア方面では無く、欧米方面に行きたいと思っている。思いっきり振れ幅を大きくしたい。香港旅で「得ることができたもの」に想いを馳せながら、そんなことを強く思っている。

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