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中国でのペットに対する価値観の転換期を象徴?#为金毛Siri发声

ここ数日、中国のネットを大きく賑わせている事件があります。

Siriくん事件概要


南京に住む女の子が大学を卒業し、故郷の貴州省へと戻るため、ペットのゴールデンレトリバー・Siriくん(1歳半)の輸送をペット輸送専門会社に依頼。
※南京〜貴州間は1,600kmほどあり、飛行機で約2.5時間、陸路で20時間前後。
Siriくんに負担をかけたくなかった女の子は空路での輸送を依頼、フライト予定日前日にSiriくんを業者に引き渡す。
ところがフライト当日早朝に、予定していたフライトの欠航が確定。女の子が輸送会社に連絡すると、Siriくんは別の貨物用飛行機で既に貴州に向かっている、とのこと。
不安に思った女の子がSiriくんの今の様子の写真や動画を提供するよう何度も依頼するが、輸送会社は拒否。思うように連絡も取れない状態へ。
そして同日のうちに輸送会社から女の子へ届いたのは「今すぐSiriくんを引き取りに来ること、もう亡くなってるから19時までに来なかったら埋める」という連絡。
先に貴州省へ到着していた女の子が急いで指定場所へと向かうと、Siriくんの遺体は既に腐敗が始まり、虫が湧いている状態だった。
実は、少しでも多くの利益を得ようとした輸送会社によって輸送経路が空路から陸路へと勝手に変更され、Siriくんは実際は大型長距離バスの荷物室で輸送されていたのだった。その結果、Siriくんは熱中症で亡くなってしまった。
その後も輸送会社の誠実さを欠く対応が続き、女の子はこの件をSNSにUP。
ネット上で話題になり始めてようやく輸送会社が女の子に提示した対応は、賠償金6,000元(≒約10万円)を支払うか、または新しいゴールデンレトリバーを送るかのどちらか。
あまりにも命を軽視した対応と言い逃れを続ける不誠実な態度に、ネット上で「#为金毛Siri发声=ゴールデンレトリバーSiriくんのために、声をあげよう」というムーブメントが起き、KOLや芸能人、弁護士、大学教授など様々な分野のオピニオンリーダーが、この輸送会社を糾弾し続けている。
現在は市政府機関が介入し、調査中。

Siriくんと対面した時、女の子はショックで卒倒してしまったとのことですが、その時の辛さや絶望感と言ったら、とても計り知れません。
私自身小さな頃からずっと犬と一緒に生活し、今は猫と生活をしているので、想像するだけで胸が痛みます。辛い。

中国での反応

まだ決着が付いていないSiriくん事件、抖音(中国版TIKTOK)の社会カテゴリの話題ランキングでは1位・2位になっていて(7/18)、かなり注目されていることが分かります。

抖音热榜

中国のペット市場規模は急速に拡大し続けていて、2019年当時のデータによると、2018年時点では約1,700億元(≒3兆円)規模だったのに対し、2020年には約3,000億元(≒5兆円以上)規模となる見込みだったよう。

古いデータなので誤差はあるでしょうが、スピード感は見て取れます。



急速な変化に摩擦は付き物ですが、中国にはペットの動物を「毛孩子=毛の生えた子ども」と呼び、本当の子どものように可愛がり、家族の一員として扱う人がたくさんいます。
一方で、Siriくん事件を起こしたペット輸送専門会社にとっては、動物はモノと同じであり、手っ取り早くお金を稼ぐための単なる道具・手段だったのかもしれません。

今までとは違う、大きな動き

今回のSiriくんの一件の動きを見ていて興味深いのは、ペットを飼っている人も飼っていない人も、更に犬は苦手だという人も「#为金毛Siri发声=ゴールデンレトリバーSiriくんのために、声をあげよう」の動きに賛同している点。
ネット上の「#为金毛Siri发声」関連動画は既に数億本を超え、動画クリック総数は数十億回にもなっていると言われています。

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※抖音上の「#为金毛Siri发声」動画のスクショ

今までは、動物虐待事件に対して声を上げるのは動物好きな人がほとんどで、話題としてもすぐに消えて行ってしまっていました。

ところが今回はあらゆる方面からたくさんの人が声を上げ、それぞれの知識や立場を生かして、問題性の指摘や輸送会社の批判を続けています。
その結果、市政府機関の介入調査という大きな進展に結び付きました。
ペット関連の事件で、ここまで大きな社会問題化したのは初めてなのでは?と思います。


改めて中国のエネルギーを感じました。
もしかすると中国は今、動物やペットに対する価値観の転換期にあるのかも、とも思います。

Siriくんの死を無駄にしてはいけない

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※飼い主の女の子が撮影したSiriくん

Siriくんの事件はたまたま表面化しただけで、悲しい最期を遂げたペットは数え切れないほどたくさんいるはずだ、と友人が言っていました。
私もそう思います。

ある人にとっては、ペットは家族の一員。
でも、別のある人にとっては、ただの動物。
これは考え方の違いであって、どちらが正しいか間違いかという問題ではなく、どちらの考えも誰にも否定することはできないと思います。
でも、動物の命も、人と同じ命であるということ。命は大切にしなくてはいけないということ。何かの命を脅かすことはあってはならないということ。
これは、個人的に動物に対してどのような考えを持っているかは関係なく、理解しなくてはいけないことだと思います。

Siriくん事件は、中国ペット業界にとっての大きな転機になるのではと思いますし、そうなってほしいと思います。

最後に、Siriくんが虹の橋の向こうで幸せに暮らしていますように。

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