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夏の仕込みもの、ケチャップとサルサ・パサヘ

加工用トマト、1キロから別途発注できます。

毎週野菜を宅配してもらっている柿右衛門農園さんが、こんなお知らせをくれた。今年はトマトが豊作らしい。確かに毎週届く野菜もトマトが多く、かつ美味しい。「トマトケチャップを作ったら、すごく美味しかった」と柿右衛門農園の奥さんがコメントされていた。美味しいトマトを作るひとが、トマトケチャップ作ったら美味しいって言うてはるやん。よし。作ってみよう。加工用トマトを注文した。

レシピ通りに作ってみた(写真多め、レシピリンクあり)

『トマトケチャップ 手作り』で検索すると、思ったよりたくさんレシピが出てきた。そのなかで選んだレシピはこちら。

クローブ、シナモンとホールスパイスを使うところにも惹かれたが、いちばんは

トマトを湯むきしなくていい

これならできそう。だがその後、湯むきの代償として、ひと手間かかる作業があったことを私はよくわかっていなかった。

まずは、1キロのトマトを洗う。

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これはほんの半分以下。小玉で真っ赤で可愛いトマト。

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四つ切りにして、フードプロセッサーにかけてペーストにする。玉ねぎも同じくペーストに。

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もうこれで煮込んだらええんちゃうん? というエゴの声に負けず。

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レシピ通り忠実に大きめの網で裏ごしをした。
最初の半分は裏ごし器で裏ごししていた。だが、目が細かいゆえ、おっそろしく時間がかかるとわかり、目の荒いザルに変えた。これから作る方は、ぜひ最初からザルで裏ごしすることお勧めする。

なお、レシピには「3回裏ごし」と書いていたが、裏ごし器で半分やったからいいよねとレシピに語りかけて、裏ごしは1回だけにした。

湯むきはないけど、裏ごしがある。

ケチャップ作られる方、ぜひこれを心に留めておいて欲しい。私がめんどくさがりなだけという話もあるが。

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裏ごしして、タネと皮を取り除いたら煮詰め開始。「半分になるまで煮詰める」とレシピにあるのを見て、「ここまでやったのに、減ったらもったいないー」と思ったが「トマトソース」のようだったので煮詰める。半分強くらいになったところでスパイスや白ワイン酢を入れ、さらに煮詰めた。

トマトはもう1キロある。こちらはトマトソースにしようとケチャップを煮詰めながら仕込みを始めた。

イタリアでなくスペインのトマトソース『サルサ・パサヘ』

去年までとはちょっと違うトマトソースを作ろうと、こちらの料理本を取り出した。

こちらにあるトマトソースのレシピをいくつか見ていたら、

トマトはミキサーにかけ、こし器に通す

という作り方に目がいった。
スペインのトマトソース、サルサ・パサヘ。

湯むきしなくていい!
さっき使ったフードプロセッサーとざる、そのまま使える!


それだけではない。
スペインの文字にこのひとを思い出したからだ。


かもめさんが作って食べてるスペイン料理、少しはその香りを感じられるかなあと思いながら、料理本を開きフードプロセッサーにトマトを入れた。

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こちらのミニトマト。色、形とも可愛らしい。1キロはこの倍。

真っ赤なトマト。フードプロセッサーでペーストにすると、

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ピンク色になる(左)。右の作り立てトマトケチャップと並べると、色の違いがよくわかる。

サルサ・パサヘは、たっぷりのオリーブオイルでみじん切り玉ねぎを蒸し炒めにする。

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オリーブオイルの量の多さにドキドキするが、弱火で蒸し炒めにするといい感じのペーストができる。

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トマトペーストを入れて煮詰める。
レシピには30分と書いてあったが、15分追加して煮詰めた。
ひとさじ味見。去年までのトマトソースとは一味違う。

美味しい。パスタソースにしても、焼いたお肉にソースとしてかけても合いそうだ。頭の中で展開が広がる。冷凍用密封保存袋に小分けして、冷凍保存した。

(※残念ながら出来上がりの写真撮り忘れた。近日中にパスタソースとして使った際、写真を追加します。)

いざ実食! 手作りトマトケチャップ、その味は?

一晩寝かし、再度火入れしたトマトケチャップとトマトソース。

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昨日の晩ごはんでいざ実食!

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プレーンオムレツとソーセージにトマトケチャップをかけた。
朝ごはんみたいだが、晩ごはん。私が朝から夕方まで頭、首、肩が痛くてずーっと寝てたから。ケチャップ食べたくて起きてきて、これと白ごはん、味噌汁飲んだら元気になった。自分ごはんのパワーすごい。

さて、ケチャップのお味。香りがめっちゃいい。市販のものよりゆるいが、スパイスと白ワイン酢の効果で味はまさにケチャップ。

俺、市販のケチャップやと思ってた。

晩ごはんを食べ終えた息子の感想。

よっしゃーーー!!!!!!!

めっちゃ勝った気分になった。


仕込みものが教えてくれること

2キロのトマトを使って、ケチャップとサルサ・パサヘを仕込んだ。

買うた方が早いやん。
買うた方が安いやん。

自分の内か外側か。そんな声も聞こえてくるが、それでも私は仕込みものが好きだ。自分の手を動かし、色の変化を見て、香りを楽しむ。自分で作るからこそ、五感をフル稼働して味わえる楽しさがある。

もうひとつ。自分で作ると味の変化が楽しめる。市販のトマトケチャップは賞味(消費)期限内なら、ほぼ味は変化しない。と、私は感じている。だが、自分で仕込んだケチャップは時間が経つにつれ、少しずつ味が深くなってくる。そして不思議なことだが香りは変わらない。そんな「いいところ♫」を考えながら辰巳芳子さんの『仕込みのも』をゆっくり読んだ。美味しいだけではない、大切なことが書かれていた。
(“仕込みもの“を手がける心  『仕込みもの』pp6−7)

真に仕込みものらしい仕込みものを仕上げるには、ものがよい方向へ向かうように、ものに心を添わせ、一喜一憂の中に何か月も “よくなれ、よくなれ“ と願い働くのです。

ケチャップは数時間の仕込みだったが、それでも一喜一憂がその中にある。トマトのチカラが発揮できるように、トマトがよい方向へ向かうように。美味しくなってねと思いながら仕込んでいた。

ものを相手にする人々の中には、ものを支配する気分の持ち主と、そうではなく、ものに従い、ものの自由を認め、収まるべきところへ収まるように自分は手を貸すのみと心得ているかたとがあるようです。「ものに従ってゆく態度」とは「仕える態度」と言いうると思います。

おもしろいもので、自分の中で正解を持ちながら仕込むと、どうしてもその通りにはならない。カ●メやデル●●テのケチャプに近くしようとしても、鍋の中のケチャップはそうはならない。鍋の中のトマトに従い、自分は手を貸すだけ。なるほど。自分でなく、トマトやスパイス、白ワイン酢の方がちゃんとわかっているのだ。「ちゃんとケチャップになるから。手ぇだけ貸して」と鍋の中から言われていたんだろう。

辰巳芳子さんは、都会暮らしの私たちこそ、季節の仕込みものを少しずつでもすることを勧めている。

人は自然を離れると、予想以上のものを失います。それは、人間が自然そのものであるからでしょう。

スーパーへ行けば、秋でも冬でもトマトは買える。それでも、夏の初めのこの時期、旬の時期に手に入るトマトでないとケチャップなどの仕込みものはできない。いやきっと作れるだろう。だがなぜか、この季節にふっと自然に湧いてくる「作ってみたい」は、他の季節には起こらない。

都会の真ん中で人々が掌中に収めうる、確かな自然の一つ

そう。旬のトマトを見て、触れて、仕込むことで、私は自然を、夏を自分のなかに感じる。だから仕込みたくなるのだろう。

自分も自然のひとつと、確かめたくなるのだろう。

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美味しい。お代わりしよう。また作って。

そんな家族の言葉も嬉しくて。
また私は仕込むだろう。

めんどくさくても、手間と時間がかかっても。

大切なことを確かめるために。




美味しいはしあわせ「うまうまごはん研究家」わたなべますみです。毎日食べても食べ飽きないおばんざい、おかんのごはん、季節の野菜をつかったごはん、そしてスパイスを使ったカレーやインド料理を日々作りつつ、さらなるうまうまを目指しております。