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白い布と照明

私がE区の学校で働いていたときの話です。

私は演劇部の顧問をしていました。

演劇部は体育館の舞台裏通路を部室替わりにしていて、衣装やメイク道具を、通路に並べたロッカー内にギュウギュウに詰めていました。


その通路には、見えない人達がたむろっていました。そこでひとりで居ると急に電気が落ちたり、ドアが開かなくなったりするのです。

生徒の数人が見ただの触られただのと言っていました。

私はまあ慣れっこになっていて、そこで作業する時には「通ります!」などと声をかけてから行けば、見えない人達とお互いに距離を保って過ごせるようになっていました。


その職場の文化祭は、冬の最中にありました。

私は受け持ち学年の舞台発表もあり、前日の夜、最終確認で体育館に入ろうとしていました。

体育館に半身が入った時、2階の観客席からふんわりと何かが降ってきました。
白い布に見えました。
綿のよくある布です。
でも、重さが違います。ふんわりと羽のように翻りながら、下へゆっくり落ちていきます。
そしてそれは数秒間漂い、下に落ちずに消えました。

見ることが無かった実体を見てしまい、ふひゃ、と、変な声が口をついて出ました。

体育館にあとからきた若手教員が、私の驚いた様子にビビってしまうなんてことになりました。


その後は何事もなく、文化祭当日が来ました。

私が受け持つ学年が舞台に入る前、入りの確認に体育館に行くと、中が騒然となっていました。

舞台担当に確認すると、観客席の動スポの回転盤が2枚外れて落ちたそうです。

幸い怪我人が出なかったので、そのまま回転盤を付けて、舞台をすすめました。


それだけの話です。


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