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押し入れの話

以前、有名な怪談バーの怪談師さん達が、凸待ち怪談をしてらっしゃいました。

そこで話した、私が育った家で起きた不思議な話です。


小学生の時、夜も更けたころ、母と祖母が話している横で私は寝ていました。

私の足元にはかなり大きな押し入れがありました。

押し入れの中には客用布団や座布団、祖父が集めたレコード類が置いてありました。

私のためにと子供用のソノシートもあったため、私もよく押し入れを開け、ソノシートやレコードを取り出し楽しんだものでした。

ただ、子どもだったこともあり、押し入れの戸をきちんと締めないままにしていることはしばしばでした。

一緒の部屋に寝る祖母にも、その都度叱られたものでした。

その日も押し入れは20㎝ほど開いていました。

小学生だった私は、いつものようにそこへ足を向けて寝ていました。

横では、祖母と母が何か話していました。

夢うつつな状態でそれを聞いていた時、いきなり私の足が捕まれ、そのまま押し入れの方へ、ずるっ と引っ張られたのです。

私はベッドで寝ていたのですが、シーツの上で体が滑ったのを、その場にいた祖母も母も見ていました。

私は飛び起きました。

飛び起きてすぐに、母に足を引っ張ったでしょ、と聞こうとしましたが、母も祖母も私とは離れていました。

そして、私が何か言おうとする前に母から「あんた、何遊んでるの。」と言われました。

母が言うには、寝返りを打って仰向けになったかと思ったら、私が下に動いたと。

寝相が悪いにもほどがある、といわれたんですが、そんなわけないじゃないですか。

けれど、祖母も母もそんな風でしたので、私が寝ぼけたことになり、その場はうやむやになったんです。

でも、後々、それを聞いた祖父が「この家の座敷童のせいかな」と。

私が当時住んでいた家はいつも何かしら気配がしていたのですが、祖父はそれを座敷童が居ると話していました。

私の叔父に当たる方が、幼くして亡くなっていたので、祖父は『その人が家族を守ってくれている』と考えていたのだと思います。

まあ座敷童ならよいか。と、私も納得できたので、結局それは、特に解決もせずそのまま過ぎていきました。


高校生になった頃、私はヴィジュアル系の追っかけをしていました。

当時、ロッキンfという雑誌にソノシートがついていたことがあり、私は昼間、それを聞きながらベッドに仰向けになって漫画を読んでいました。

すると今度は、足をがっちりつかまれて、ポーンッと上に跳ね上げられたんです。

綺麗に直角になるくらい、腰と足が見事なŁ字型になりました。

私は何が起こったか分からずに飛び起きました。

でも、横で針仕事していた祖母はいたって静かに「運動するなら、よそでやんなさい。」と。

 いやいや、そうじゃないと言いましたが、信じてもらえませんでした。

唯一信じてくれそうな祖父も、その頃には他界してしまったので、私はもやもやしたままで終わりました。

その時も押し入れは開いていたので、「ああ、やっぱりこれのせいなんだな。」とは思いました。


結局、あれは座敷童のいたずらだったのでしょうか?

ただ、私の足をつかんだそれは、成人男性の手だったような記憶があります。



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