九綱真寿実(くつなますみ)

小説を書いています。現在、Kindleにて、ノスタルジックファンタジー小説「しめこのう…

九綱真寿実(くつなますみ)

小説を書いています。現在、Kindleにて、ノスタルジックファンタジー小説「しめこのうさぎ」全4巻を販売しています。 noteでは、日々の由無し事から、作品や執筆にまつわるあれこれ。悲喜こもごもの想い出話や、可能であれば、短編等も書いていこうかと。

最近の記事

小説になった「母への手紙」・占子の兎(しめこのうさぎ)が出来るまで

今から8年ほど前のこと。一人暮らしの母に認知症の疑いが出ました。 長らく持病を抱え、日常生活も次第に覚束なくなっている母と向き合ううち、やがて待ち受ける「死」を、酷く恐れていることに気が付きました。  「ねぇ。私、どうしたらいい?」 電話口で繰り返し嘆く母に、私は返す言葉が見つかりません。  しばらく経ち、私は母を励ますつもりで手紙を書きはじめました。ところが、書き進めるうちに手紙でなくなりました。これがやがて、小説「占子の兎(しめこのうさぎ)」の原点になります。

    • 宇宙(そら)に向け、言の葉を編む 5作中の道の名称はタロットカード由来

      めっちゃ、久しぶり~(^^)/ noteのこと気にはなってたけど、何かと忙しくてね~。 ついつい後回しで、ゴメンね❤ って、まずは言い訳。 ブログとかツイッター(今はXだね)とか、毎日投稿してる人、 凄いよね。本当に尊敬します。 でもね。アタシだって、何にもしてなかったわけじゃないっすよ。 ちょっとずつは書いてたもん。(まだ言い訳) と、いうわけで今回は、 「小説『しめこのうさぎ』・バス路線・道の名称について。需要があるのかどうかもわかんないけど、わざわざ表にして、いちい

      • 宇宙(そら)に向け、言の葉を編む 4我が家の銀盃花(マートル)

        信号が青に変わり、颯爽と行き交う車の流れに、バスは滑り込みました。 目の前に立ちはだかるのは、夕焼け雲を蹴散らし、皓皓と光り輝く、巨大要塞のような街。 グランマートル・ハイランド。かつての美籠山(みこやま)です。 (九綱真寿実・著 「しめこのうさぎ 月兎の郷」  第四章「古往今来」より) グランは、フランス語で「偉大な」。 マートルは、英語で「銀盃花(ぎんばいか)」を意味します。 夏に白い花をつけ、それが白梅に似ていることから「銀梅花」と表記されることもあります。 葉っぱ

        • 宇宙(そら)に向け、言の葉を編む 3このブログタイトルに纏わるあれこれ

          宇宙に向けて、言の葉を編む このタイトルを編み出してくださったのは、クリエイティブ・プロデューサーの篠原有利さんです。 篠原さんと話していると、「そうそう!」とか、「あ、まさにそれ!」と、思うことが多々あって、本当にありがたいです。 こちらの、ぼんやりした希望や、上手く表現しきれない思いなども、 さり気なく汲み取って見せてくれる。 私はこれを、ひそかに「ゆーりママ・マジック(マが多い!)」 と、呼んでいるのですが(笑)。 中学生のころ。自分で手編みしたマフラーや手袋を付

        小説になった「母への手紙」・占子の兎(しめこのうさぎ)が出来るまで

          宇宙(そら)に向け、言の葉を編む 2作中の地名由来はカバラから

          「生命の木 Tree of Life」は、ユダヤ教のカバラでは「セフィロトの木」とも呼ばれ、宇宙万物を解析するための象徴図表に位置付けられているそうです。(Wikipediaより) ヱヴァンゲリヲンをはじめとする様々なコンテンツにおいても、その世界観を構築する礎になっていますね。 この「生命の木」を基に、物語の舞台を設定した 拙書「しめこのうさぎ」。 前編「月兎の郷(つきのさと)編」に登場する 地名の解説に移ります。 生命の木の「均衡の柱」と呼ばれる中央のラインを、山の尾

          宇宙(そら)に向け、言の葉を編む 2作中の地名由来はカバラから

          宇宙(そら)に向け、言の葉を編む 1小説「しめこのうさぎ」の舞台設定

          小説「しめこのうさぎ」は、私、九綱真寿実のデビュー作です。 小学生の頃。教科書で読んだ宮沢賢治に憧れて、 初めて見た映画は、従姉に連れて行ってもらった「銀河鉄道999」。 そこから四十四年の時を経て、新たな旅立ちの物語を描き上げました。 舞台になっているのは、「命樹市(みことぎし)」という架空の町。 命樹市は、人口十七万人。入川(いりがわ)と幅川(はばるがわ)、 二本の河川に挟まれた扇状地で、大きく三つの地域からなります。 市の北東部に位置する「命樹丘陵(みことぎきゅう

          宇宙(そら)に向け、言の葉を編む 1小説「しめこのうさぎ」の舞台設定

          小枝と雛鳥 其の八(最終回) 

          横浜市内のマンションに住んでいた頃。 或る、風水に詳しい方と、お会いする機会があった。 幼少期に大病を患った息子は、既に完治していたものの、 当時は、まだ定期的に病院に通っていた。 そのとき、家の中に数か所、観葉植物を置くことを勧められた。 家族の誰かが不調を来たしていたり、ストレスをため込んでいたりすると、家内の気の巡りが停滞し、邪気が溜まる。 その邪気を植物が自ら吸い取り、枯れることで、気の巡りを改善し、家人の健康を扶ける、というのである。 あの日。南天木の華奢な小枝

          小枝と雛鳥 其の八(最終回) 

          小枝と雛鳥 其の七

          あれから、三週間が経った。 連日猛暑が続くなか、ようやく昨日、梅雨明け宣言が出た。 バゲットハットを目深に被り、洗濯物を干し終える。 朝日が燦燦と当たる庭は、我が家の長所の一つではあるが、早朝から灼熱の太陽が照り付くこの季節は、さすがに厳しい。 「置き配」を取りに、玄関側へ回る。 そのとき。ふと、玄関先の南天木に目が留まった。 枝が枯れている。 ほぼ丸一日、雛鳥が留まっていた、あの小枝だけが枯れているのである。 大暑の猛烈な日差しのなか。 かりかりに赤茶けた枝葉を見つめ

          小枝と雛鳥 其の六

          翌、早朝。 雨は上がっていた。 東の雲は、切れ切れに伸びていて、その隙間から薄日が射している。 息子がアルバイトに出掛けたついでに庭に出て、南天木の枝を覗き込んだ。 雛鳥は、いなかった。 昨夜は、大粒の雨だった。激しく降り頻(し)く時間もあった。 風も、強く吹いていた。 恐る恐る、地べたを見る。 小さな鳥の亡骸が打ち落とされてはいないか。 まずは、南天の根元。 その横の山茶花(さざんか)。満天星(まんてんぼし)、躑躅(つつじ)、白梅… 一歩一歩、慎重に探す。 けれども、

          小枝と雛鳥 其の五

          正午を過ぎ、昼食と休憩のため、夫が二階から降りてくる。 庭で煙草を一服した後、 「あいつ、まだいるね。丸くなってる」 と、端的に雛鳥の様子を私に伝える。 親鳥が一度、餌を与えに来たこと。『AI Chat』の提案に従い、自然保護センターに連絡し、今後の指示を仰いだ旨を夫に伝えると、 「すげぇな、AI」 親鳥が来たことよりも、センターの対応よりも、AIの機能に感嘆する。 「…死なねぇかな。あいつ」 彼なりに気遣っているのだろうが、やや言葉の配慮に乏しい。 簡単に昼食を済ませ

          小枝と雛鳥 其の四

          あった。ありましたよ! 県自然環境保護センター。 すぐさま指定の番号に電話をかける。 対応してくださったのは、女性の声。 質問されたとおりに、自宅のある地域と、逸れ雛鳥の様子を伝える。 「怪我をしている様子は、ありますか。羽や脚が折れているとか、どこか、出血しているとか」 「私の見る限りでは、無いと思います」 「木の枝に留まって、じっとしている…」 「はい。体を膨らませて、目を閉じていることもあります。さっき、親鳥らしい鳥が来たときは、伸びあがって啼きましたけれど」 「あっ

          小枝と雛鳥 其の三

          「やったー!親鳥キター!」 小さくガッツポーズをするも、親鳥は、すぐさま高く舞い上がり、どこかへ行ってしまった。 南天木の周りには、静寂が戻った。 犬や猫ならば、親が子を口に咥えて塒(ねぐら)に連れ帰ることも出来るだろうが、鳥の場合、そうは行かない。 どんなに小さくても、非力であっても、雛自身が羽搏かなければ、どうにもならないのである。 心許なくて、つい、スマートホンに手を伸ばす。 最近インストールしたばかりの『AI Chat』に意見を伺う。 「あなたは、家の主です。只

          小枝と雛鳥 其の二

          ひとまず、茶の間に戻る。 夫は、仕事のため、既に二階の自室に上がっていた。 この天候では、洗濯物の外干しは不可。台所の片づけを優先する。 幸い、南側の腰高窓から南天木がよく見える。 ところが、雛鳥の姿がない。私は、再び玄関へ向かった。 上がり框で一旦落ち着いてから、サンダルを履き、そっと扉を引き開ける。 先ほどと同じ場所、同じ姿勢で雛鳥は居た。 一息つき、茶の間に戻る。改めて腰高窓から雛を探す。 驚いたことに、この位置からだと雛鳥の姿は、ちょうど、小枝の先の葉陰に隠れて見え

          小枝と雛鳥 其の一

          六月末日のことである。 朝、畑の世話をしていた夫が、茶の間に戻ってきた。 「黒くて、ちっこい鳥が、木に留まったままで動かない」 という。 玄関脇の南天木を見る。地面から、おおよそ60センチぐらいの処。 細い幹と小枝との間に、挟まるような格好で小鳥がいた。 体長は7、8センチ程。 羽の色は、消炭(けしずみ)にが斑に入っている感じ。 頭から首周り、それから、ぷっくりしたお腹の辺りは、ぽしゃぽしゃした綿毛のような羽毛に覆われている。 薄紅色をした平べったい嘴は、その頭の大きさに比べ