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カンボジアの小学生のドロップアウトの実態について少し聞きました

カンボジアの小学校就学率はとてもよくて、100%に近い90%台を推移しているのですが、卒業となると、やっぱり半分を超えたくらいというのが実態。大都会プノンペンに暮らしていると見えないことだし、田舎の学校に行っても実感はあまりありませんでした。そりゃそうですよね、学校を訪問している時点で、学校に来ている子どもを見ているわけですので。

全校児童数を見て、あれ?

先日、カンダール州の小学校を3校ほど視察させていただいたのですが、2校目の学校がわりと貧しい地区にあって、家庭の経済レベルが低めの子どもが多いとのこと。全校児童数は600名を超えているので、小さい学校ではありません。職員室の壁に貼られていた各学年ごとの数字を見たとき、あれ? と思ったことがありました。毎年、100から150名くらい新入生がありますが、6年生の数を見ると60から70名で安定しています。例えば今年の6年生は66名ですが、5年遡って彼らが1年生だったときは105名という数字が見えます。つまり、入学時は105名だったけど今は66名に減ってしまったということになります。39名はどこへ? 校長先生に聞くとストレートなお答えが。「ドロップアプトしました。」

ドロップアプトの前段階

数字が推移し出すのは、だいたい4年生。学校に来なくなってしまう子が出てくるそうです。理由は、労働。農業を生業としている家では農作業といった肉体労働の働き手になるようです。さすがに低学年では無理かもしれませんが、高学年になって体も成長してくると労働者とみなすご家庭があるのでしょうか。先ほど6年生になる前に39名がドロップアウトしたと書きましたが、内訳を探ってみたら、35人が男の子、4人が女の子でした。圧倒的に男の子が多いのです。
学校に来なくなると、この学校ではまず先生が家庭を訪問して学校に来るように親と子どもの説得に試みるそうです。何割かは一旦学校に戻っては見るものの、今度は、休んだ間に勉強がわからなくなって授業についていけず、結局来なくなってしまうというパターンに。先生たちもフォローしようと頑張ってはいるものの、家庭訪問や学習指導でもどうにもならないケースが近年多発しているらしいのです。

工場で働く子どもたち

ドロップアウトした子どもたちの行方を訪ねると、農業意外に「工場」という単語が出てきて驚きました。カンダール州は首都プノンペンの周りを取り囲む州で、近年目立った開発が進んでいます。外資(主に中国)の縫製工場なども多くあり、そこで働く人々が増えました。そんな”大人用”の工場で子どもがどうやって? と思ったので聞いてみたところ、月給制ではなく、出来高制でお小遣いがもらえるような仕組みがあるそうなのです。そのお小遣いも、家計の助けになるのだと・・・。

新空港の建設

今回学校を案内してくれた国際NGOの車両は、ガタガタ道を走りました。ジャングルの中ではないのにガタガタなのは、道路工事中だから。2030年完成予定の新空港の建設に伴って、空港に向かう道路整備をしているのです。新空港はプノンペンではなくカンダール州にできます。こんな小さい国にそこまで必要なのかと思ってしまうのですが、アジアで? 世界で? 何番目かに大きなハブ空港を目指しているとか。経済発展のために大きな空の窓口を作ろうという巨大な開発です。
さて、その開発に当たっては広大な土地が必要となりますが、「高く買ってくれるから」と地域住民たちは農地を手放すこととなりました。農業に代わって、工場労働で生計をたてていくことになったのです。

経済のための開発が変えた住民の生活

大規模な開発によって、まず大人たちの暮らしが変わりました。農業をしていたお父さんや家事や子どもの世話をしていたお母さんが工場で働くようになりました。工場の朝は早いからお母さんは朝ごはんを作る時間がありません。子どもたちは朝ごはんもとらずに学校に行くようになりました。お腹が空いて勉強に身が入りません。高学年になると、金銭的な問題から勉強より労働を選ばざるを得なくなる男の子も出てきたのですが、農地が広がっている他の地域とは違って自分たちが住んでいる場所にはすぐに現金というお小遣いを得られる場所ができたのです。
人々が快適に暮らせるための開発の裏には、これまでになかった変化の影響を受けている子どもたちがいるということを、あらためて考えるきっかけとなった学校訪問でした。

これはカンダール州のある地域でのケース。ジャングルがある森の学校、島の学校、広大な田園地帯の学校など、また違ったお話しがあるだろうなと思います。「田舎の学校」とひとくくりには言えず、その地域独特の問題もあるのだなぁということも。

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