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怪我のアイシングの結論

アイシングの概要

こんにちは、院長の増田です。ケガの治療を60年診察してきた当院がお教えします。今日は、本当に知ってもらいたい「アイシング」についてお伝え出来ればと思います。

まず、一般的な捻挫の処置から説明致します。

「RICE処置」

Rest (安静)
Ice (冷却)
Compression(圧迫)
Elevation(挙上)

この4つは、みなさんも聞いたことありますか?有名な処置ですよね?簡単にいうと「足をあげて、冷やして、安静にしておく」ということになります。しかし、以前より疑問がずーっとありました。みんなRICE処置をやってくれていますが、ある日こんな疑問を感じました。

腫れが引く人もいれば、そんな変わらない人もいるんじゃない?

この現象に対する疑問を持ちながら、共通点に気がつきました。「熱心に、アイシングをしている人ほど良く治っている」という事実がそこにはありました。そのデータを元に、「アイシングのメリット」をみなさんにシェア出来ればと記事をまとめました。さっそくですが、メリットからお伝えできればと思います。

アイシングのメリット

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アイシングのメリットは大きく分けて二つあります。

1.副作用がないこと
2.安価であること


この2点は、大事なポイントであると思います。「どこでも出来て、誰でも出来る」こんな治療法は他にはありません、順番に解説していきましょうね。

①アイシングは副作用がない

みなさんによく言われることがあります。「凍傷になるんじゃないの?」と言う問題です。「凍傷」という副作用はひどい誤解なんですね。アイシングは、子供から高齢者まで季節を問わず行えます。絶対にアイシングでは、凍傷にはなりません。ただし、条件があります。それは「氷」に限りです。

基本的に、氷は0度のままですので、マイナスにはなりません。これに対して、「アイスパックやアイスノンは氷点下」になります。また、寒冷過敏の方や体調が悪い方は控えてください。特別な場合を除いて、副作用はほとんど無いといって良いのではないでしょうか?

②アイシングは安価である

金銭的な面というのは、医療において重要です。みんなができる治療でないと普及しないからです。その点で、氷は百均で凍らせると「無料」です。またコンビニで、袋で買っても「数百円」です。

とにかく、どこでも手に入る「手軽さ」があります。これって大事で、お金の有無に左右されないんです。テーピングとかギブスとかは「材料費」で何千円かかります。破損していくと、また追加で色々かかります。費用面でも「氷」に問題はないといって良いでしょう。「財布に優しい庶民の味方」なわけです。

次に考えておかないといけないのは、「なぜ氷のアイシングは効果があるのか?」という点ですね。ここを抑えないと、いくら臨床で結果が出ていても説得力に欠けてしまいますね。これも「中学レベルの物理化学」で解決します。さっそく解説していきましょう。

アイシングの理論科学

ここからは、理論的な話です。簡単ですので、ついてきてください。まず、RICE処置の中でも「アイシング」が最も大事です。そして、「氷」でなければならない理由があります。その理由を、科学的にお伝えします。中学物理にお付き合い下さい。

「比熱」(ひねつ)という言葉をしっていますか?

「比熱」とは、1kgの物質の温度を1℃上げるのに必要な熱エネルギー量を示す。したがって、その物質の比熱が大きいほど、多くの熱エネルギーを引き出すことができる。
 (クライオセラピー スポーツ外傷の管理における冷却療法より 引用)

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           (水といくつかの物質のデータ比較表 より引用)

上の図からわかるように、一番上に水氷335KJと書いてますよね?これは、一番熱を奪えるぞ!ってことなんですね。言い換えると、「水や氷は比熱大きいので、冷却効果がとても高い」といえます。

次は具体的な熱量の計算に入ります。ここでは、「コールドパックと氷の熱量の差を計算しています」わかりやすくいうと、「アイスノンvs氷」のどっちがいいの?ってやつです。これも、「結果」だけ見てればOKです。

・コールドパック
−17℃から5℃まで、つまり22℃水温を上げるのに1段階を必要とする
必要とされる熱=質量×比熱×温度変化
       =92092J

・クラッシュアイス
−17℃から5℃まで、つまり22℃水温を上げるのに3段階を必要とする

1.-1℃の氷を0℃の氷に、つまり1℃温める =2090J
2.0℃の氷を0℃の水にする(融解熱)=333000J
3.0℃の水を5℃まで温度上昇する =20930J
             合計 =356020J

(クライオセラピー  スポーツ外傷の管理における冷却療法より 引用)

結果だけ、見ていきましょう。

コールドパック  92092J
クラッシュアイス 356020J

すごい差ですね。4倍近くの熱量の差があります。これがコールドゲルパックやアイスノンの代わりに「氷を使う理由」です。氷が溶ける際に、多量のエネルギーを必要とするからです(融解熱)氷の方が、4倍もの熱を奪いますし、凍傷のリスクもありません。(補足として氷の表面がくっつくレベルは凍傷になります。少し溶かしてから、圧迫してください)

具体的なアイシングのやり方

これは以前にtweetしています。参考にしてください。ポイントは「皮膚との距離と圧迫」の関係です。もちろん、皮膚との関係性が「薄い」方が冷却には効果を発揮します。当たり前ですが、氷嚢よりも「ビニール袋」の方が冷たいですよね?ここで、オススメなのがこれです。

「スーパーとか百均の安くて薄いビニール」

上からさらに、包帯やタオルなどで圧迫しておくと効果的です。0,1mmとかですから最強の薄さですよね。ほんとに簡単で、やり方は以上です。どんどんいきましょう、次は「アイシングの回数」についてお話します。


アイシングの回数について

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一般的には、1日に1回〜2回といわれています。しかし、当院の考えは全く違います。患部の熱をとるには、やればやるほど良いです。理由は骨折や捻挫が、物理的な「エネルギー」によるケガだからです。ケガをした際の、転倒のエネルギーを、積極的に取る必要があります。 

例えば、針金を曲げて伸ばしてを繰り返していると、やがて「熱」を持って壊れてしまいます。また、筋肉組織に似ている輪ゴムを、口に加えて伸ばして見ましょう。口には、「熱」が発生するのを感じます。これらは、「疲労骨折」や「肉離れ」の原理と全く一緒です。

ここから見えるのは、組織を損傷したり引っ張ると「熱」が発生します。この熱を取り切ることが痛みや機能障害を起こさない為にも大事なことです。

これだけ後遺症が多いのは、3、4日程度のアイシングで「エネルギー」は完全には取りきれていないということです。だから、何回でもアイシングをすることが重要なんですね。

アイシングの時間について

何回でも冷やすといいながら、ある程度の目安が欲しいのが人間ですよね。

目安として、1SET30分〜40分程度
冷やす→放置→体温戻る→また冷やす→以下ループ

間を開けて、何回も繰り返して下さい。急性の場合は、腫れがぐんぐん引きますし、慢性のランナーズニーやアキレス腱炎やテニス肘などありとあらゆるスポーツ障害に適応しています。アイシングは予防としても万能ですね。※寒冷過敏の方や体調が悪い方は、中止して控えてください。

そして、最後はアイシングの予後についてお話ししていきたいと思います。

アイシングは予後が良くなる

当院は怪我の患者さんを、担当してきて60年です急性期から亜急性期に「ガッツリ冷やしている人」はぶっちゃけ、治り早いです。逆にやってはいけないことはお風呂に入る、体操、温めるですかね。

繰り返しになりますが、体が受けた衝撃「エネルギー」を残すと痛みが残ってしまう原因になるのです。ですので、積極的に冷やしてくださいね。以上でアイシングの説明を終わりたいと思います。まとめますね。

まとめ

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・RICE処置の中で最重要はIce(アイシング)
・「氷」が効率的に熱を奪える
薄いビニール袋がベスト
・1日に、何回アイシングやっても良い

この記事を読んで、あなた自身やそのご家族の方へ皆さまの周りでケガの処置や痛みで困っている方がいるならアイシングの情報をシェアしてあげてください。

急性期にアイシングをしておくと、病院にかかる際でも予後がよくなります。当院の知識や経験が、お役に立てたら幸いです。

長文お疲れさまでした。最後まで、ご覧頂きありがとうございました。
不明な点は、LINE@にてご質問待ってますね。






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