花見
「うぅーん…」
今日はみんなで花見だ。
鳥居の横に桜がある。
すでに満開で、今日がみんなの休みが揃う日だったのだ。
「何を唸っているの?」
後ろから女神様が聞いた。
「大根の花って白いんですね」
「もう、お花見って言ったら桜だよ。
大根は今度でいいよ」
美子が言った。
「あら、素敵ね。
一緒に持っていく?」
ほぼ同時に女神様が言った。
「じゃぁ、せっかくだから」
ぼくは持っていくことにした。桜の木の下にブルーシートを広げ、お弁当を並べる。
卵焼きとタコさんウインナーとおにぎりだ。
「美味しそうだね」
美子が嬉しそうに言う。
「お野菜がなかったね」
女神様が言った。
「一応卵焼きには刻んだ玉ねぎとキャベツを入れました」
ぼくは一応栄養バランスにも気を使っている。
「おーい、サンドイッチもできたぞー」
護が中から遅れて出てくる。
「言われた通り、レタスやトマトを挟んでいるよ」
「ありがとう、二人とも」
女神様が嬉しそうに言った。
「さて、じゃぁ早速」
みんなで手を合わせる。
「いただきます」
ある程度お弁当を食べ終わり、桜を見上げる。
「やっぱりここの桜が一番だな」
護が言った。
そして一枚、写真を撮る。
「この前ね、公園でお花見をしたんだよ」
美子が楽しそうに言う。
「そう、よかったね。
どこで?」
「公園でね、座敷童子のみんなと」
美子はいい職場で働いているんだなと思う。
女神様はただただ黙って桜を見上げていた。
「うぅーん…」
「どうしたの、コマ兄?」
ぼくは持ってきた大根を見て言った。
「流石にもう食べられないよね」
来年は地面に植えるか、もう少し大きな植木鉢を使うかだなぁ…
「もう、食べ物の話ばっかり」
美子は怒ったように言う。
「まぁ、いいじゃない」
女神様はおかしそうに言う。
「それが大根の花かぁ…初めて見た」
護は花を上から見下ろした。
「菜の花みたいだな」
「まぁ、アブラナ科だからね」
ぼくは言った。
いつの間にか護が寝ていた。
「仕事の都合をつけて急いで帰ってきてくれたからね」
「さて、続きを読もうか」
美子はぼくの膝の上で絵本を読んでいる…はずだった。
「美子も寝てる」
女神様は静かに笑う。
「二人とも気持ちよさそうね」
「そろそろ、お弁当箱だけでも片付けましょうか」
ぼくは言った。
「ううん、コマはそのまま、美子を寝かせてあげて。
片付けは私がやるから」
そう言うと女神様はてきぱきと片付けを始めた。
ぼくはそっと美子の頭をなでるのだった。
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