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クリスマスのさびしみを味わって

クリスマスは、1年でもっともさびしみを感じさせる1日かもしれない。

赤とミドリのデコレーション、陽気なクリスマスソング、夜を照らすイルミネーション、両手に買い物袋をぶらさげる親子、手をつないで歩くカップル。世界が明るくなるほど、ひとりでいる自分が際立ってしまう。

すると、彼女のいない男子校生が共学のカップルを見るような目で、クリスマスを見てしまう。

ぼくは、1年半海外を旅していた。日本に帰ってくると「旅をして、価値観変わった?」とよく聞かれる。「根本的な価値観は変わっていないと思うし。旅をしていなくても、毎日価値観は変わっていると思う」という、なにかを言っているようで、なにも言っていない答え方をしていた。

よく考えてみると、変わったことのひとつとして、さびしみを感じられるようになった。

ボツワナの南部ナタにある「Elephant sands」という野生のゾウが集まるホテルに宿泊したときのこと。ホテルといっても、ぼくの場合はキャンプ場にテントを建てさせてもらうかたちで泊まった。

泊まった日は雨だった。旅の途中に旅人からもらった薄いテントはポタポタと水が漏れてくる。雨だとみんな予想していたのかテントで泊まっている人はいなくて、周りにはゾウしかいない。テントの底も濡れてきた。寝るしかないけど、寝られない。ああ、さびしい。

この経験はわかりやすい例だけど、他にもさびしみを感じることはあった。さびしみを感じられるようになってから、自分から人に話しかけるようになった。

去年のクリスマスイブは、ルワンダのキガリにいた。ホテルには旅人らしき人もいなくて、夜はホテルのガードマンと一緒に話していた。「今日は1日仕事なの?」「そうだよ」「クリスマスなのにね」「仕事だからね」「彼女はいるの?」「いないよ」「ぼくもだよ。さびしいね」「さびしいね」って。

さびしみは悪いものじゃない。満たされないものがあるから、人は人と仲よくできるのかもしれないね。さびしいと思ったことのある人と、ぼくは仲よくできる。

読んでくれて、ありがとうございます。今日という日は、とことんさびしさを味わえばいい。


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