16日目 あこがれ冷ややっこ

右手を使いすぎて手首が痛い。左足のつけねや左の背中も痛い気がする。今日の朝の栄養剤の時間は早かった。5時くらい。6時半には薬まで終わってしまった。昨晩は2回くらい起きたけれど、むせることもなく、吐くこともなく過ごすことができた。ここのところ、37度なかばくらいの微熱が続いている。前の病棟にいたときは38度台のこともよくあった。全身の怪我と手術で、身体が熱を持つのは当然のことだと思う。

気管切開をしたのどの穴にはチューブが入っている。このチューブがずれないように、首にぐるっと紐を巻いて固定するような仕組みになっている。なるべくなら普段から触れたりしたくない部分だ。少しの刺激でむせてしまい、苦しいのだ。(だから約2時間毎の痰の吸引はいつも緊張だった。看護師さんもかなり気をつかってくれた。)今日はその紐をべつも紐と交換した。見事にむせた。むせにむせてむせまくっていたので、リハビリのためにベッドまで来てくれた作業療法士(OT)さんも私も、(これはリハビリどころじゃないな)と感じ、後回しにすることにした。

むせこみが落ち着き、昼食後、レントゲンをとることになった。ベッドから飛び出しレントゲン室に移動!とはいかず、ベッドごと移動する。病院内をベッドで寝ながら移動するのはもう何回目だろう。天井が後ろに流れていくのを眺める。

レントゲンから戻ると、リハビリがはじまった。理学療法士(PT)さんとは足の運動。自主筋トレができるようにと、わかめみたいなゴムバンドを貸してくれた。ドラえもんから素晴らしい道具をもらったような気分だった。作業療法士(OT)さんとは左手の指の運動。自力で握るのはまだ難しい。根気よく、根気よく。

医師回診では、数日後に迫る手術の話が少しでた。左橈骨の整復のための金属固定術。つまりは、顔の時と同様、骨が骨同士でちゃんとくっつくまで金属プレートを折れた骨に固定するというものだ。術後は今のがっちりギプスではなく「もう少しかわいらしい添え木」になるらしい。細身の身体には不釣り合いのいかつい左腕をみて、お医者さんたちが微笑む。私は見た目なんかより、肩こりが解消されるのが嬉しいです。

突然のことだった。予告もなかった。

久しぶりに食事をみた。ペースト食が始まるのは明後日の左手の手術が終わってからのはずだけど…と思いつつも目の前の豆腐に目は釘づけになる。冷ややっこが食べたいなぁと一週間前にぼやいた(筆談で)のが、急に実現したのだった。ちなみに、見た目は何がなんだかわからないし、気管切開中は鼻が効かず匂いがわからないけれど、味は美味しかった。こう見えても煮魚、野菜の煮物、フルーツ、おかゆ、豆腐。

ゼリー以外のものを口から摂取できる喜び。完食、ごちそうさまでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?