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調査としてはなんですが、参考として 楽天モバイルのこと


私が楽天のモバイル事業がこの先どうなるのかに興味があるのは、この企業が今後どんな醜態を晒しながら生き残るのかに大変興味があるからである。
いわゆるFintechに特化して行けば全く違う企業グループになったであろう。その分野は大成功だ。しかしこの通信事業がニッチもさっちも行かなくなりつつある。
なぜモバイルをやりたくなってしまったのか、ということは政府に近づきすぎたからだろうと言うのが私の見方である。いつの頃からは知らないが財界の団体の盟主となっているくらいだから官邸で総理と話をする機会も多かっただろう。適菜収の本の安倍語録の中に三木谷への謝辞があったから、その頃からはガッツり入っていたわけだ。
菅政権になって彼のテリトリーであった総務省関連で国民のウケが良い政策は何かと、それは携帯料金の値下げだ、と言う話と、元々米国のITベンチャーと肩を並べたいと言う願い、それを実現してくれそうなインド人エンジニアたち、これらが複合したとではないかと見ている。

この仮説に沿って話を一旦整理すると、まず政府主導の携帯料金の値下げはNTT法の改正がNTTの宿願であった固定網と移動網の一括管理を実現した。簡単言えば、NTTがahamoで大幅に値下げする代わりに、NTTドコモを100%の子会社としてNTTが経営できることになったのである。このメリットは大きいのであるが、民業圧迫とならないように小出しにやっている。そこはNTT、じわじわやるのだろう。どうしたって潰れない会社、その証拠に市場ではNTT株は高値を更新している。
個人相手の商売ではない、それもあるのだがそれが最後だろう。法人単位の通信契約においてNTTが全てパッケージにして提供できるようになっているのである。今までのNTT法はそれを認めていなかった。それはアメリカからの注文でそうなっていたのだが、流石に20年以上もかけて弱体化した日本の通信業界が中国に乗っ取られる可能性が出てきたの防衛に出てきた。日本だけでなくアメリカ自身も中国製の通信インフラを排除し始めた。そのような背景の変化で、めでたくNTTは一つになった。
何かはわからないがKDDIにも何かメリットを提供しながら、携帯料金の協力を依頼したのであろう。
官邸がソフトバンクに働きかけたのかは知らない。元々、携帯料金をゼロにすると言って孫正義が始めた事業である。彼が通信事業というか国内のビジネスに関心が亡くなったし、政府はプラチナバンドをあげたりしているからなのかもしれないが、この大手3社、勝ち負けは数年前に決まっており、そのバランスが崩れなければ一定の日銭が計算できる商売になったのである。各社、工夫をして値下げをし、勢力均衡となるようにしているはずである。なぜなら、昔みたいにシェア争いはコストの割にメリットがない。
そりゃそうだ、市場は飽和。MVNOは結局、品質の高いドコモの利用者を増やすだけ、KDDIも自社に負担にならない程度でMVNOを卸売している。ソフトバンクはそれほどの品質でないのでMVNOが広がることはない。
MVNOの各社がいろいろ工夫して料金メニューを作り、顧客の奪い合いをしているように見えるが、路面での営業はかつてのような賑わいではなく、大人しいネットでの販売中心だ。
そこに楽天が入ってきた。自社ネットワークを構築するという、MVNOではないMNOとして。まるでNTT法の改正を知らなかったように。いや知っていたが、勝てると思ったのかか、あるいは後で考えよう、せっかく国が免許をくれてもしかすると世界一革新的なネットワークキャリアになれるかしれないから、ということだったのか。
それはあり得る話だった、通信の品質がNTT並みになれば。

私はそこがわからないのだが、NTT並みになるはずだったのであろうか?言い方を変えると日本国民の8割以上がNTT並だ、と言って初めて価格の話になるだろう。今の通信品質でNTTよりも少し安いからいいや、ってなる人は本当に運が良く、生活圏内で楽天の回線網の恩恵を受けられている人だ。KDDIのローミングがあるかもしれないが。

楽天としては政府に近かったばかりに、自分達がある程度の市場を取れるチャンスが巡ってきた、できそうかもしれないと思った。しかしNTT法の改正があって、NTTがガチの総合ICT複合体になってしまった。
加えて「できるはず」だった低価格でNTT並みの通信インフラの構築は、時間がかかりコストもかかることがやってみてわかった。何よりアメリカでのITグロース企業がここにきて金利上昇で苦境に差し掛かっている。楽天がそれらの株に投資しているとすれば含み損はSBほどではないにしろ、モバイルの投資を考えなくてはならない程に膨らんでいるかも知れない。

と言うわけで、冒頭の記事のエライ簡略化された調査結果を見ると、一挙に客がいなくなると言うことでもなさそうなので、これまた厄介なのではないか、楽天にとって。
要するに乗り換えないと言う層は、運が良くて楽天回線がめっちゃ快適なので無制限にどんどん使って割安感を享受しているか、あるいは発信専用に使っているのでこの目的だけでも他社のかけ放題プランと比べて千円程度なら安いと言うことだろう。このセグメントの客が楽天に利益をもたらすとは到底思えない。いつまで続けられるのだろうか。
とはいえ、半数がもし出ていってしまったら、どうなるか。それは大損である。1回線あたりの獲得コストは他社の10倍以上かもしれない。広告と無料期間などから算出できるが、楽天経済圏という考え方でうまくこの計算ができるのだろうか。
一番大事なのは三木谷さんの財布が痛まないことなので、傷んでいると思えばそう計算になるだろう。神の一声だ。合理的な正しさ、制度やルールで企業が統治されていないのかもしれない。

最近、楽天モバイルのCMの代わりに楽天トラベルと楽天カードが多くなった気がする。

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