ゴスペラーズメンバー分析vol.1「黒沢 薫」〜突き抜けるスパイシーハイトーン〜
さて、今日も今日とてゴスペラーズの話です。
ええと、以前↓の記事を書いたんですね。
ただ、筆者の愛が重すぎて5千字を越える文章量になりつつも尚まだ語り足りない今日この頃。
なので、これよりメンバー1人につき1記事ずつ魅力を語り尽くすことにしました。
もうこの愛は誰にも止められません。
アイラブ ゴスペラーズ フォーエバー。
よろしくお願いします。
さて、まず一人目は、ゴスペラーズのカレー…じゃなくて黄色担当。
ご紹介します。突き抜けるハイトーン。
「黒ぽん」こと、黒沢薫さんである。
多くのゴスペラーズの代表曲でリードボーカルをとる彼。
「ゴスペラーズといえばどんな歌声?」と問いかければ、多くの人が彼のハイトーンをイメージするはず。
まさにゴスペラーズサウンドの顔である。
ちなみにルックスの顔は、100%間違い無くリーダーです。
長髪にグラサンのインパクトは強い。
脱線しましたね。
さて、「突き抜けるハイトーン」とご自身で歌われているだけあり、彼の持ち味はそのスリリングな高音。
すこしハスキーがかったその声は音域が上がると共にきらびやかな倍音を増し、サビのピークで一気にご婦人方のハートを貫く。物理的に。
その持ち味が堪能できるのが、こちらの名曲「永遠に」です。
つくづく、聞く者を一発で惹きつける華のある声だと思う。
メンバーの中でいち早くソロデビューを果たしたのも、ごく自然の成り行きでしょう。少なくとも我々ゴスファンにとっては、全く違和感無い話ではなかったでしょうか。
さて、彼を語る上でまず語るべきは、リードボーカルとしての功績だろう。
「Promise」「永遠に」「ミモザ」そして「誓い」。
どれもゴス色の色濃い勝負曲だが、そういった楽曲へ最後に魔法をかけるのが彼の声だ。
彼がリードを歌うことで、楽曲に「ゴスペラーズ」という表札がつく。
もちろん他の4人が歌ってもゴスの曲に違いないのだが、彼がリードをとる曲は、世間が「ゴスだ」と認知するスピードが違う。
早い話が、彼が歌った楽曲は問答無用で「ゴスペラーズです!」という名刺の役割を纏い始めるのだ。
これは、特に観客にゴスのファンが少ないアウェーな現場だと非常に効果的で、現に多くのアーティストが出演する野外フェスなどでは、まず黒沢リードで客をつかむという場面は非常に多いように思う。
メンバーもこの声を武器とし、戦略的に黒沢さんに任せていることは自明である。
「お前だから任せる」という他の4人の思いと、その思いを全部理解した上で、「自分がリードをとるんだ」という黒沢さんの歌唱。
この信頼関係。アツくないですか??
これいい機会なので覚えておいてほしいんですが、ゴスペラーズを語る上で欠かせないのが、「信頼関係」と「献身」という2つのキーワード。
彼が勝負曲でリードをとるとき、「この歌唱力集団の中、この勝負所で、自分がリードを任された」というその誇りとプレッシャーを同時に感じているのは間違いない。
そして驚くべきことに、その関係は25年以上変わっていないのである。
高校時代に、彼が村上リーダーに誘われ、文化祭で初めてアカペラを披露したその時から。
え、何これ。
自分で書いててびっくりしちゃった。
あまりにエモすぎでは?
どこのジャンプのスポーツ漫画かと思った。これは薄い本が厚くなりますねってやかましいわ。
とにかくこの関係性は、早く国の無形文化財に指定した方が良い。
次にその技術(スキル)について。
黒沢氏を語る上で、もう1つ言及したいことがありまして、それはおそらく彼がグループの中で一番難しい役割をやっているという点である。
グループ内で彼は、主にリード→1stコーラスを行き来する役割を担う。
ファルセットの王様、村上リーダーがコーラスに加わるときは2ndをとることも多いが、おおむね「リードor一番高いコーラス」という認識で差し支えないだろう。
恐れ多くも自身もアカペラ、そして男声コーラスを嗜む筆者の意見では、リードと1stコーラスの兼業ほど骨の折れることはない。
これが2ndや3rdなら、まだ良い。
というのは、2ndや3rdはリードと同じく、地声の音域で終始いられるのである。つまり、リードが回ってきたとしても、基本的にほぼ同じ筋肉を使って歌い続けられるので、声帯にかかる負担が少ない。
一方1stというのは、基本的に裏声でとることが多い。
そうすると、男性にとって非常に高い音域を、あるときは裏、あるときは地声と使い分ける必要があるということである。
これ、みなさんもカラオケ等で経験は無いだろうか。ずっと高音を張って出していた後に、同じ音域を裏声で出すと、掠れたりして非常に出し辛くなるのである。
ではもう一人の1stである村上さんはどうかというと、彼の場合はリードの時も裏声を多用するので、実は地声を張り続けるということが意外と多くない。つまり、
中音域 → 地声
高音域 → 裏声
と一貫しており、この問題を合理的にクリアしている。
しかし、黒沢さんの持ち味はスリリングなハイトーン。
リードでは常に地声(厳密にはミックス)をピンと張りつめ、次にコーラスに回るときは瞬時に繊細な裏声を出すことが要求される。
これ、マジで難しい…というか、人体の構造上不可能だと思うんだが、どうなんだろう。彼には長年に渡り確立した、何か特別な技術があるのだろうか。
だとしたらそれは単なるボーカルではなく、男高音コーラスのスペシャリストという非常に限られた者でないと到達できない、唯一無二のスキルなのだろう。
この名人芸をきちんと確認したい方は、名曲「Promise」の大サビ後「Just my…」の後の、「プローオォミー…(裏声)」がおすすめです。
黒沢さんの表情から、相当な集中を要する技術であることがわかります。
そういえば。
黒沢さんを語るに当たって、もう一つ言及したいことがありました。
それは、彼がとても兄貴肌な人柄であること。
具体的には、SNSで若いアカペラーと誰より積極的に交流している姿を見せてくれるのが、他ならぬ黒沢さんなのです。
ゴスペラーズといえば、日本中のアカペラーにとって共通のレジェンド。
はじめてアカペラに触れたその日から、絶対的な憧れなのです。
そう、永遠に。(←上手いこと言った)
そのレジェンドである黒沢さんがこんなに気さくに絡んでくれたら、それはもう。
凄いですよ。
だめだって。
こんなのもう好きになっちゃうって。
だって「ずっと遠巻きに憧れてた先輩に優しくされる」の、どデカスケールのやつじゃん。
学校の先輩 → 芸能人になっちゃってるじゃん。
脳バグるって。
…というか、あれだな。
ゴスペラーズはそもそも全員が人たらしなんだよな。
誰からハマるかはもう順番が違うだけで、遅かれ早かれ全員にハマるという。
担変えは無し。推しが増えるだけ。
誰に転んでも沼。
今日はちょっと気分を変えて、あちらの沼にもお邪魔しようかしら。
スーパー銭湯か?
…あ、最後に一つ思い出したので、良いですか。
あれは数年前に北海道に旅行に行ったとき。
新しくオープンしたスープカレー屋さんに行ったら、当たり前のように黒沢さんのサインが飾ってあって良かった。
いやだから「北海道の新店舗」って言ってんだろ!
都内の感覚で来てるんじゃないよ!!
…というわけで、カレーの為なら海をも超えるハードコアカレーシンガーの話でした。
僕らのアニキ、黒沢薫よ、永遠なれ。
いつまでもその偉大な背中を追わせてください。
追記。
第2弾、3弾公開しました。
音楽の分析を主なコンテンツとしてブログを運営しております。
軽い読み物としてどうぞ!
↓
音楽の話をしよう ~深読み、分析、そして考察。~
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