ファジーネーブル（『回顧する蚕』）

黄桃色の飲み物が
入ったグラス傾けて
君は少し微笑んで
僕の心は寄っていく

人気のないビルの中
五階の一角にあるバー
誰にも邪魔されない
二人だけのテリトリー

閉められたネクタイを外して
ゆっくりと深呼吸しよう
愛を感じるこのひととき
無駄にしたくはない

応答しているはずなのに
耳が遠くなっていく
やけにしゃれたメロディが流れ
ずっと頭に響いている

ふわふわと浮かぶ記憶
どれも忘れたくない
もう少し起きていたい
朦朧とする自分を恨む

煌びやかな水飲み干して
大きく深呼吸しよう
愛を感じるこのひととき
無駄にしたくはない

甘ったるいのが癖になる
僕も君もファジーネーブル

締められたネクタイを解いて
ゆっくり深呼吸しよう
愛を感じるひととき
無駄にしたくはない