河童さんと現代社会『水無月の白昼夢』
そりゃあね。生きづらい世の中ですよ。
だって夜中ですら起きてる人間がいるんだよ。
コンビニだっけ? あれは便利なんだってさ。
二十四時間営業だって。眩しいんだよ。
まあまあ、今日は何の話しましょうかな。
政治? そりゃあひどいもんよ。
張り合いもないし投票率も低いし。
人間って、税金で死ぬんだろう? かわいそうに。
経済? 俺は金には詳しくないんだ。
普通に金が無くたって生きていけるし。
今は鮎獲って食べてる。あとは虫かな。
そうだよ。夏になったら胡瓜が食えるな。
戦争? ああ、殴り合いか。え? 銃撃戦?
河童にゃ銃なんて操作できないからな。
でもあれだろ? それはすぐに人を殺せるんだろう?
恐ろしいな。人生が一瞬でパーになっちまうなんて。
そもそも、人間はどんな理由で争うんだ?
金。人間関係。恋愛。領土問題。宗教。多様な価値観。
なるほどな。やっぱり、人間様は立派で賢いな。
俺たちなんて、せいぜい胡瓜の奪い合いだよ。
え? 人間も同じようなもんだって?
そうかそうか。人間はそこまで利口じゃないのか。
科学だけが一人歩きしちゃって、人間はそれほど成長しない。
そうか。それは残念だな。
それにしても、じめっとした天気だ。今は六月だっけ?
そうか。日本は梅雨だよな。そりゃあ、雨が多いわけだ。
気分も滅入るな。メランコリーってやつだ。
でもよ、これを越えたら夏になる。夏だ。俺が一番好きな季節。
入道雲観ながら風鈴の音聞いて、セミの鳴き声を鬱陶しく思って、
スイカとか胡瓜をかじってひんやりしてさ、
のんびりするのが俺の理想の夏だな。
現代人は急ぎ過ぎている。少しくらい、肩の力抜けよ。
え? お前は河童だからそんな生活しないって?
まあまあ、俺は今でこそかっぱの姿になっちまったけど、
昔は人間様だったんだ。驚いたか? まあ、妖怪あるあるだな。
ああ、時間か。俺はそろそろ川に帰るよ。
今度はもっとハッピーな話でもしような。
そのときは胡瓜も美味いだろうから、持ってきてくれ。
じゃあな、青年。元気でな。また会おうな。
頑張って雨を乗り越えろよ。
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