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文房具たちの共鳴




 シャープペンシルが未来を描き、消しゴムが過去を消す。
 ボールペンが人生の道筋となる線を引き、ハサミがそれを切り取る。
 蛍光ペンが重要な地点に印をつけ、のりは看板の役目を果たす。
 定規は真っ直ぐに天へと伸び続け、やがて分度器が宇宙の角度を測る。

 文房具は共鳴する。人間には到底たどり着けない思考回路を使って。
 私たちが眠る街の隅で、今日も自由気ままに動いている。

 私たちは不可思議なことを受け入れなければならない。
 事実は小説よりも奇なり。文房具にも生命が宿っている。
 そのことを、決して否定してはならない。
 そして当たり前の価値観を壊す必要がある。

 文房具だけではない。信号機も、電光掲示板も、草木や空も。
 私たちが見るすべての景色は、動き続けている。
 この変化を、拒絶できないことを人間は知るべきだろう。
 もう、過去のように支配することはできないということを。

 

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