見出し画像

海の夢


 流るゝ波が砂を湿らして、夢を運ぶ。吹く潮風が淀みを消して、夢を浮かばす。トンビはどこまでも飛んでいくが、やがて死す。僕らの夢はどこかで潰えて、星となる。

 生きることか、死ぬことか、その二択で悩む人間は愚かだが、愛おしい。僕らは常に死生観に囚われている。この世界そのものが牢獄である。

 海の夢は、また波にさらわれていく。そして深い水の中に沈んでいく。やがて僕らもそこへ帰っていく。夢と出会えるのは、深海。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?