ガキの結晶（『日向夏』）

大きくなったらウルトラマンになりたい

悪い敵を倒して　ヒーローになりたい

救うことができる　優しき者になりたい

溢れ出す希望は　全て過去の産物

思い出すのは　無邪気だった昔の姿
誰にも邪魔されない夢があって
誰にも邪魔されない可能性があって
それが真実だった　それが僕の全てだった

大きくなったら　俳優になりたい
大きくなったら　声優になりたい
大きくなったら　芸人になりたい
大きくなったら　有名になりたい

目指すのは輝くステージ上のスーパーマン
それが希望の柱だとすれば聞こえはいい
だが僕の可能性は踵を返してどこかへ去ってしまう
残るのは諦めの悪い残像だけ　それが僕の全て

ガキのころは楽しかった
なんだって夢に変えて
どんな手札でも笑って
全部がポジティブに思えた

どうだい　僕は10年も前の自分に問う
僕が歩む人生は　凸凹でつまづくことだらけ
それでも安定を捨てるのかい？
大事な肉親を悲しませるのかい？

身勝手なものだと大人に笑われ
自尊心を保とうと大人に対抗する
そして生まれた虚像の手は　空虚なまま
結晶一つ掴めない絶望　それが全て　

全てなんだ