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踊る凡人(『日向夏』)



ジャンヌダルクみたいな勇敢さと
ナイチンゲールみたいな優しさと
エジソンみたいな発想力と
ジョンレノンみたいな歌声が欲しい

だけど僕は踊る凡人 
クルクルと回り続けている
果てしなく続く深海の中を
ジタバタしながらグルグルと泳いでいる

シーラカンスが忍足で歩くロードムービー
甘ったるい缶コーヒー片手に煙草吸って
呻き声に近い歌声で「愛されたい」と叫ぶ
すなわち 僕は孤独な旅人となりにけり

ダンスホールなど遠い昔の話だ
今は電子機器片手に異世界の中で
自由人が謳歌する決められたテリトリーに住む
天才はボンでベートーヴェンに酔いしれる

ナポレオンみたいな革命を起こして
宮沢賢治みたいに刺さる詩を書いて
マリリンモンローみたいにセクシーになって
キング牧師みたいに堂々と叫びたい

だけど僕は踊る凡人
靴紐が解けてしまって
足元はガクガクと震えている
もう 駆け上ることはできない

ステップ踏んで転がって
また明日とそっくり繰り越して
だけど結局何も掴んでいなくて
可笑しくて僕は笑う ひたすらに笑う

ミラーボールはすでに電池が切れていて
令和に生きる者は みんな家に篭っている
だけど僕は踊る凡人 行く当てもなく
今日も独りで踊り狂う それだけの人生


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