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桃色浪漫 『彩』


一目で恋の始まり ランデブーなんて格好つけて

カシスオレンジが 微々たる酔いを生んでいくんだ

別にいいだろう 三十過ぎの俺にだって恋の一つ二つ

始めさせてくれ 桃色浪漫って最高の果実を


積み重ねて疲労しちまった悲しみたちが

一瞬で蒸発してパラパラと舞う紙吹雪になった

勤めを務めてきただけの俺の人生の道端に

ピンク色の一輪の花が満開に咲いていたんだ


忘れもしないドキドキ感 心臓がキュッと締められて

まるで少女漫画みたいな トキメキすら舌に感じて

電脳がバグってしまって 理性すら溶けてしまって

久々の恋慕の情が押して 思わず口元が緩んだ


一目で恋の始まり ランデブーなんて格好つけて

ハイボールですら 俺を心酔させてしまうんだ

分かっているが 三十過ぎの俺が恋をしてしまうなんて

愚かだろうけど 桃色浪漫を堪能させておくれ


不確かな恋模様 相手は俺に気があるだろうか

もしかしてだが 両想いなんてロマンス映画が

俺とあの子の二人で 始まったりしないかな

開演はもうすぐだ みんなチケットを買ってくれ


一目で恋の始まり ランデブーなんて格好つけて

生ビールじゃなくて 赤ワインで君と乾杯したい

愛してるなんて 重たい言葉を吐き出したくないんだ

今はただこの想いを 好きって想いを伝えたい


一目で恋が始まり ランデブーなんて格好つけた

一つの恋物語 俺と君の東京での素敵な出会い

桃色浪漫を奏でる 煌びやかなメロディとともに

二人でお酒を飲み交わし 大好きだって言い合って


……


いらっしゃいませ 店員が冷たい声で言う

君の隣に座ったのは 若くて高身長な男

君は微笑み 彼の手を取り キスをする

桃色浪漫は当分お預け 俺はたらふくビールを飲む


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