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あら、正義 (短編小説)



目の前が正義。
だとすると、奥にあるのは悪?
いやいや、目の前が悪で、奥にあるのが正義だよ。
あら、正義は奥にあるのね。
それはない。正義は目の前だ。奥が悪。それに決まっている。
でもでも、奥の方で子供が泣いているけど。あれは悪なの?
メディアが奥を悪と言っているんだ、間違いないだろう。
そうか。じゃあ奥を叩こう。ボロボロになるまで叩こう。
よし、奥は死んだね。正義が勝ったんだね。
あれ? あれ? 目の前にある正義がクスクス笑っているよ。
正義の色が変わっていくよ。悪の色に変わっていくよ。
あら、本当の正義は奥だったんだね。でも、もう手遅れ。
目の前の悪がこの世界を支配するんだって。あら大変。
後悔、後悔。奥を信用すれば良かったね。騙されたー。
また不幸な生活を送るんだよ。それが常識みたいに定義されて。
奥の正義さん。復活しないかなあ。
くるりんぱ。奥の正義さんが生き返ったぞ。しかも、パワーアップして。
あら、目の前の悪がどんどん破壊されている。化けの皮を剥がされて。
悪は滅びた。やっぱり最後に勝つのは正義だね。
奥にあった正義は子供を抱えて小さく微笑む。世界は平和になったとさ。

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