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筆者の気持ちを答えなさい『薄命、革命、生命』



とある作家の遺作がありまして
それは癖のある私小説でした
ここで大人は問題を出します
「筆者の気持ちを答えなさい」

筆者はひどい鬱状態でしたが
小説を書くことで生きていました
そんな筆者が最期に見た景色は
雪が積もった庭園でした

しかし筆者の遺作で書かれているのは
夏の終わりに出てくる一匹の蚊を
潰して手を洗ってから好きな人に
恋文を書いて首を吊るって話でした

単純なことですが
見ている景色と小説は関係ない
それでも大人たちは問い続けます
「筆者の気持ちを答えなさい」

前から疑問でしたが
どうしてあいつらは
他人の複雑怪奇な気持ちを
勝手に想像しちゃうんでしょうね?

私も小説を書くことを生きがいにしています
別に書かなくたって呼吸はできるけど
書かないと人生が終わりそうな気がするからです
そんな不安定な人間ではあります

そんな人間が書く小説なのだから
それはそれは大いに陰鬱であり
気分を害するような物語であるべきですが
次作はまさかのラブコメディです!

登場人物はみんな脳内がお花畑で
アイムハッピーを口癖にするポップさんで
ストーリーもすっからかんでありきたりで
胃がムカムカするほどキラキラしています

はい ここで私はあえて大人に問います
「筆者の気持ちを答えなさい」と
わかるか? わかるわけないだろう
わかってたまるかよ と私は嘆くだけです

人間はどこかで他人のことをわかろうとして
ときに距離感を間違えてしまいますが
別にわかる必要なんてないでしょうと
ひどい私は思ってしまいますね

こんな私の気持ち、わかりますか?

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