凹『水無月の白昼夢』
凹み。そこに、雨水が溜まる。
パチャ。そこに、飛び乗る。
ストン。僕は透明になる。
ヒューっと、夏まじりの風が吹く。
凸さん。あなたは人生において、
幸せなことがありましたか?
僕は一つだけありましたよ。
それは、透明になれたことです。
東京なんて、いつだって視界がある。
どこを見渡しても、誰かが見ている。
でも透明になっちゃえば心配ない。
僕はどこだって散歩できるわけだ。
現代は救いようのない監視社会だから
それはそれは窮屈な社会でございまして、
自由なんてあるようでないもので、
閉塞すら幸福と感じてしまうのです。
だけど僕は透明になれるから、
いつだって凹んだ状態かもしれない。
つまり、水平上にいない存在。
出発も到着も誰にも邪魔されない存在。
どこを歩いていても、気が楽なんで、
小さい頃以来のスキップなんかして、
口笛吹きながら、雨に打たれる。
普通じゃないから、気持ちがいい。
別に夢だったわけじゃないけど、
凹んだ場所に出会えて良かったです。
たまには奇跡もあるもんだね。ほんとに。
僕はこれからも、するりと生きていく。
凹み。そこに清い雨が降り注ぐ。
パチャ。そこに、しっかり入れる。
ストン。僕はまた透明になる。
ふんわりと、世界が軽くなる。
ゆったりと、世界が軽くなる。
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