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ありふれた散歩道(『日向夏』)


ある老人がベンチに座って 天に息を吹く
ランドセルを背負った少年が 全力で駆ける
スナック菓子を拾ったカラスが それを咥える
僕は今日もありふれた散歩道を歩く

ジーパンのポケットに手を突っ込んで
一頻りラブアンドピースを頭に浮かべる
どうせお偉いさんに敵うことはないけれど
死んだ後に後悔しない人生を送りたい

一匹のアリがキャンディーを運ぶ
噴水広場を眺めるおばあちゃんがいる
子連れのお母さんがお茶を飲んで空を眺める
僕は今日もありふれた散歩道を歩く

圧倒的な劣等感と
暴力的なコンプレックス
僕はその二つに挟まれてしまって
身動きが取れないでいるけど

サラリーマンが誰かのために営業している
クレープ屋の姉ちゃんが笑顔で接客している
フレンチブルドックがワンワン騒いでいる
僕は今日もありふれた散歩道を歩く

変えたい自分を目の前に浮かべてみて
胸ぐら掴んで思い切り叫んでみる
嗚呼 お前はなんて愚かなのだ 
もっとしっかり生きろ たった一度の人生だぞ

今は夢も希望もない散歩道だけれども
ふとした瞬間に転がってくるかもしれない
それを拾い上げることができるかな
信じるだけ 多分それだけで拾える

ちびっこが楽しそうにはしゃいでる
お母さんはそれを見て笑ってる
おばあちゃんもそれを見て微笑んでいる
僕は今日もありふれた散歩道を歩く


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