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父の人生を変えた『一日』その28 ~商売の心~

その28 ~商売の心~
 シアトル支店独自の商売が始まった。リスク&アカウントを持っての先輩がやってこなかった商売・支店経営に変更し米国トーメン社シアトル支店はすばらしい業績を残していった。ゴルフ会員権・社宅の完備等、儲かっている業績からいろいろ環境も良くなっていった。本社ニューヨークの鈴木人事課長が驚きと賞賛で誉めてくれた。ライオンはすばらしいよ。お前は商売するために生まれてきたのだよ。頑張れと言いながら見守ってくれた。
 商売とは、自分ですることがいかに大切か。もちろん大変な努力が必要であるが面白くなっていくのがある。中国へ韓国へとアメリカの製材工場に商売する。全て英語での商売である。自分なりによくやったと感心した。名古屋時代製材工場に土曜日通った事と同じ事をこの国アメリカでもやり遂げられた満足感があった。努力すれば報われる。そう思った。
 材木がよくわかり商売が良く解りそして一番大切な「商売の心」を持ってしていれば商売は永遠に続くのである。そしてまたライオンはとんでもない業績を残すである。


~倅の解釈~
 『商人道』。親父がこよなく愛した言葉。これを貫き通すためには「商売の心」「商人魂」が必要である。簡単に解説すると、何を犠牲にしてでも商売を最優先にするということ。家族を犠牲にして、家庭が崩壊するという意味ではなく、家族を守るためにしっかりと商売を貫き通すという意味である。365日、24時間、商売のことをひたすら考え、実践し、商売の心と魂を徹底的に磨く。その先に『商人道』が開けてくる。
 経営者だろうがサラリーマンだろうが、社会に出れば「仕事」という共通点で同じ舞台に立っている。仕事を行う一番の目的は「お金を稼ぐこと」となるが、これは結果目的であり、経過、プロセスの中にお金以上に大事なエッセンスが含まれていると私は考える。最高の仕事をするためには様々な犠牲も伴うと思うが、ここで一番犠牲にできるのは家族。なぜなら、一番、信頼がおける自分の一部であれから。一番理解をしてもらえるからである。人は「犠牲」という言葉を言い訳のように使いたがるがこういう場合は「理解」という言葉に置き換えると前向きな思想にかわる。
 忘れてはならないのは、商人道を貫き通し商売の心と魂をもって企業戦士となり、がむしゃらに動き回る後ろには、背中を押してくれている家族の存在があることだ。この絶大な「理解」に対して感謝しなくてはならない。親父と私はここが多少下手なのかもしれない。反省すべきところだ。
 親父は私が水澤電機に入社した翌年に同族のいざこざで最終的にはお袋と離婚した。全て私に水澤電機を残すためだった。心から親父はお袋を愛していた。でも最終的に家族を本当の意味で犠牲にしてしまった。今思い返せば、夫婦仲良くここまで生きていれば親父は間違いなくもっと長生きしていただろう。母が癌の闘病中の今、親父が生きていたら毎日、寄り添っていただろう。自分が長岡に戻ってきた時、もっと親父をサポート出来ていればと後悔の念は残る。しかしながら過去は変えられない。この気持ちをパワーにかえて最高の経営、仕事の心と魂をもって前進するのみである。
 少し弱音を吐けば、親父が今生きていて、お袋の癌が完治して、二人に世界一周旅行をプレゼントできたら、最高に良かった。新型コロナウイルスの関係なく、二人楽しく世界を飛び回ったかと思う。今は親父の代わりに母をしっかりと守る。

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