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父の人生を変えた『一日』 その2~大学受験~

その2 ~大学受験~
 深夜、ふすま越しに両親の会話が聞こえた。

『大学ってどのくらいお金が掛かるのだろう?』

ふと思った。子供を大学に行かせるにはお金がかなりかかるとは聞いていた。
田舎の少年は親に迷惑をあまりかけたくなく、大学の学費は大変なのでと考え込んだ。

調べたら、お金のかからない大学があるぞ―少年はその大学を考えていた。
全寮制、しかも月に3万円も小遣いがもらえる大学。そして就職も優良企業に入れる大学。外国語も8か国の外国語を教えている大学である。

 父親が職業軍人であった関係から親父も喜ぶ。昔、陸軍士官学校と呼ばれていたその大学に田舎の少年は的を絞った。11月に試験があり理工系で数学Ⅲまである。夏休みから昼間寝て夜静まりかえった時に勉学に夢中になった。試験で落ちる気持ちは無かった。学科試験には合格して親父も非常に喜んだ。

しかし身体試験で―不合格―に成った。

少年は半年間ぐれまくった。そして考えた。よし働きながら大学に行こうと決意した。仕事と勉強の両立をしていこうと決意した。その少年には―アメリカへの道―があったからハードな仕事も勉強も耐えられた。


~倅の解釈~
父は7人兄弟の末っ子。兄弟からも可愛がられ育ったに違いない。ただ、年の離れていた兄弟は大学とは縁がなかった。完全な母親っ子だった父は、苦労する母親を何とか助けてやりたい一心だったのではないかと思う。その道を切り開くのがアメリカという夢であり、その夢を実現するのが勉学。私なんかは帰国子女の枠があり、楽勝で明治大学に入学。当時は受験する大学はすべて入学できた。在学中は両親と喧嘩をしており、仕送りゼロだったが父と同様アルバイトで生計を整えた。でも父と比べれば楽な大学生活。父が防衛大学を落ちたのも、これも運命だと今は思う。

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