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急性心筋梗塞⑪ 真夜中の珍獣動物園

もしあなたが入院することになってお金に若干の余裕があれば、迷わず個室を選択する事をお勧めします。

昼食前に相部屋へと引っ越してきた。部屋はそれぞれカーテンで仕切られている。
ガラガラとベッドや小物を入れている小型の収納ごと移動できる。
看護助手さんがテキパキと動いてくれてあっという間に部屋の移動が完了した。
「頑張りましょうね」と励ましの言葉をかけていただいた。

先に入院されている患者の様子はわからないが静かである。
まるで茂みからこちらの様子をうかがう獣のような視線を感じつつ昼間の時間帯を過ごした。昼は回診や検査、リハビリ、シャワーなどそれぞれが部屋を空けるケースが多いのもあるだろう。

朝は6時起床 朝食は8時から 昼食は12時 夕食は18時 消灯22時と規則正しい生活。初日の夜がやってきた。

皆さんは夜の動物園に行かれたことがあるだろうか。ない方は映画などで見るアマゾンのジャングルの夜を想像するといい。

どこからともなく聞こえてくるうめき声 「グワーッ グワーッ」という鳴き声 「ハプッツ ハプッツ」「カッ カッ カッ カッ」という奇妙な音 一つ一つが非常にいや異常に大きい。そういびきである。

入院したことのない いや若いころなら雑魚寝の経験はあるがある程度大人になってからは他人とそれも私よりずいぶん年上のお年寄りの方と部屋を共有するなんてことはない。中でも夜中に大声でわめいたり 歌を歌い出すなんて誰が想像したであろう。たまたま今日だけかもしれない。そう思いながら眠れない朝を迎えた。

次の日も又次の日もさらに狂宴は続いた。この間ほとんど眠れず4日目たまらず看護師さんに相談したら婦長さんがやってきて「ちょうど違うお部屋に空きが出たのでそちらへ移動しましょう」と手はずをしてくれた。「でも皆様高齢の方が多いので必ずしも要望に添えるかは・・・」とおっしゃるので いやいやある程度は我慢しますよ。夜中に大声でわめいたりいつの時代の唄かわからないものを聞かされるよりはましだろう。聞けば若干痴呆をお持ちの方だったようで夜勤の看護師さんからも報告を受けていたそうだ、

こちらも人のことは言えない悪癖があるかもしれない。そういうものこそ自分では気付かないものだ。しかし日に日に体力が削られては入院が伸びてしまう。遠慮なく病院の采配に甘える事にした。

そしてまたガラガラとお引越し。次の部屋はまだ先客の方と私の二人しか入っていない。期待できそうだ。しかしさすがに大きな病院である 夜までには4つのベッドは満床となった。そこで次の地獄が始まった。

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