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【書評】RANGE 知識の「幅」が最強の武器になる

仕事や子育てで忙しくなり、独身の頃と比べるとビジネス書を読む機会がめっきり減りました。そんな中今年は久しぶりに良い本と巡り合えましたので、慣れない書評を行ってみようと思います。

タイトルに挙げた書籍を知ったのは、それ以前に教育系の書籍としてお気に入りだった「「学力」の経済学」の著者、中室牧子さんが紹介していたことです。こちら、丁度私の長男が3歳の頃に発売されており、当時教育関連の本を読み漁ったのですが、この本が最も私の子供への教育方針に影響を与えました。「子供をご褒美で釣っても良いのか?」といった刺激的な話題もありますが、根拠をエビデンスベースで示しており、とても腑に落ちることが多い内容となっています。教育関連ではエビデンスベースで語りかける本がとても少ない中、とても貴重な一冊だと個人的には思います。
この本を読んでからは、我が家では罪悪感を感じることなく、適度ににんじん作戦を遂行しております。他にも、「褒めるときは、結果を褒めるのではなく過程を褒める」ことに気をつけるようになりました。

前置きが長くなりました。その中室さんが解説を書かれている書籍が、今回紹介したい「RANGE 知識の「幅」が最強の武器になる」です。本書では様々な社会的に成功した人物を例に挙げ、1つの分野に特化したスキルを磨いていくだけではなく他の分野への知識も広げていくことの大切さを、いろいろな角度から解説しています。
本書の目指すところは、かつての日本企業で求められたゼネラリストタイプ(複数の業務を広く浅く学ぶタイプ)というよりは、スペシャリストタイプにさらに深みを増すにはどうすれば良いかを考えた結論として、他の分野の知識が有益だと述べています。「T型人材」という言葉を聞いたことがある人はこれを思い浮かべると良いと思います。スペシャリスト+ゼネラリストタイプとなることで、本来目指していたスペシャリストの分野でブレイクスルーが起きますよ・・・といったところでしょうか。

学生の頃は、ほとんどの場合はテストの点数さえ良ければ、すなわち初めから与えられた答えに正解することさえできれば、おそらく学生でいられるうちは大きな悩みもなく進学ができると思います。しかし、社会人になると、与えられた課題に決まった答えがあることは少ないことは社会人を経験したことのある人であれば誰もが頷くところだと思います。本書では、まず「学校の勉強だけができる」という閉じられた世界だけで通用する技術だけを磨くことの危険性について述べ、その回避方法について説明をしています。
実際に例に挙げているのはゴルフ等のスポーツ、それにチェスのような競技ゲームで、スポーツであれば他のスポーツに取り組んだことがある方がより良い結果をもたらすことを力説しています。
同じ分野で研究を続ける場合も、知識が深まれば深まるほどその知識の中でしかアイデアがでず行き詰まってしまい、異なる分野の専門家の意見から解決への道が繋がった例が多いことにも言及しています。
他にも、任天堂「ゲームボーイ」を開発した横井軍平氏の「枯れた技術の水平思考」という考え方についても紹介しており、最先端技術で他社と競争ができない場合にどのような戦略を取るかという考察はとても興味深いです。

この本を読むにつれ、勉強においてもただカリキュラムに沿ったものをこなすだけではなく、一見、テストの点数には関係ない経験も多くさせることが大切だと確信するようになりました。勉強を後回しにし、電車の本や漫画ばかり読む長男にも優しくなれます。限度はあるとは思いますが、どんな回り道も無駄とならないと思えば、むしろ進んで回り道をする気持ちにもなれます。
社会人になった後も同様で、どこかの分野に軸足はおきつつも、他の分野の勉強をすることはとても有益だと思いますし、私自身の経験からもそれを実感しています。エンジニアを例に取ると、経済やマーケティングといった分野の知識を身につけることがエンジニアとしての成長にも繋がるといった具合です。エンジニア以外の専門家との話もスムーズに行きますし、様々な視点が持てるようになることでもの作りのアイデアも増える事と思います。
転職したい場合に次に選ぶ会社の選定にも影響を及ぼしそうです。全く同じ業種や職種を選べば転職には有利かもしれませんが、その後の成長を考えると、再考の余地はありそうです。

そんなわけで、息子達にも1つの世界だけではなくたくさんの世界や価値観を経験させてあげたいと思い、文武両道を掲げ、勉強だけでなく運動方面も力を注いでいるのですが、私自身が家でPCに向き合っていることが多いせいか、中々うまく行かないのが目下の悩みです。かろうじて週1回のスイミングは続けているので、ここからもう少し他のスポーツにも興味を向けてくれたらなと日々悶々としています。


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