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苺のショートケーキに驚くイタリア人

「苺」という、見るだけで幸せになる不思議な存在。

子供の頃から大好きで、もし自分の前にあったら我慢せず、パクって食べた後にしばらく笑顔になる。ホイップクリームをトッピングしたら更に美味しくなる。チョコレートもアイスクリームも、苺は皆と仲良くしてくれる。

考えてみよう、世界中に同じようなことがあるだろうか。イタリアにいた頃もよく食べていて、いい思い出しかない。母親は切った苺に砂糖とレモンをかけて軽く混ぜてくれた。それが大好きで大好きで、食べるたびに苺になりかけてる僕がいた。当時は僕にとっての苺は春の始まり、ピエモンテの厳しい冬が終わった証拠で、後少しで夏休みも始まるというワクワク感もあった。それを未だに、ハッキリと覚えている。

日本の生活に慣れてきた僕は、苺は春というよりクリスマスのイメージに変わった。この時期に初めて苺の商品を見た時に「秋冬に苺を食べられるなんて夢のよう」と感動したのだ。寒い時期に苺を食べて春夏を思い出して、嬉しいような待ち遠しいような、複雑な気持ちだった。

未だにニヤニヤして、ヨダレを拭きながら驚くのは苺の使い道だ。日本人にとって、当たり前で特に何も感じないかもしれないけど、秋冬の中でクリスマス時期に出る苺ショートケーキは僕にとって「ザ・クイーン」のケーキなのだ。

イタリアで見たこともなく、想像もしなかった。
見た目は海外にありそうなケーキだけど、実はなんと日本発祥なのだ。

ここから面白い異文化の話が始まる。
先日、ピエモンテ州トリノから来日した夫婦は日本が初めて。ここで1番驚いていたというか、盛り上がっていたのは苺のことだった。観光中に苺の商品がたくさんある中で、苺のショートケーキに夢中になっていたという。

見た目は綺麗すぎて、人間がここまで作れるなんて!と語りながら目がキラキラ。
真っ白なホイップクリームに薄く切られている苺がスポンジに挟まっている。上には立派なデカい苺が堂々と乗っている。なんでこんなに多いのだろうと思っていたそうで、あるケーキ屋さんに入って注文した結果、美味しすぎて泣いたらしい。

僕は、おいしいだけではなく白と赤ということでクリスマスにぴったりだよ、と教えたら、感動的な返事が来た。

「クリスマスの色に合う、そして苺の季節は春だから真冬に苺のショートケーキを食べたら心も暖まるね。寒い中で春のものを食べてある意味、苺が脳を騙して
あと少しで夏になるよ、頑張れ!というメッセージにもなるね。」

夫婦は、苺のショートケーキを食べて驚いたことがもう一つあった。
「このような立派なケーキを食べても、甘さが控えめで体にも優しくて重くない。使われている食材の味をそのまま、シンプルに楽しめる。イタリアに持って帰りたい。」と笑いながら言っていて、「やっぱりそうしたいよね」と自分の中で呟いていた。

イタリアではケーキといえば、誕生日やお祝い、特別な時がほとんど。日本ではショートケーキなど1人用のサイズで買えるから本当にありがたい。ご褒美や落ち込むときなど、ケーキを食べれば心の奥から支えてくれる。

イタリアでは秋になると、クリスマスの伝統的なパン菓子である「パネットーネ(大きなパン)」と「パンドーロ(黄金パン)」が全国に広がる。1年ぶりに食べて美味しいと感じるけど、少しずつ飽きてしまう。飽きる理由は食べ過ぎるのと、その甘さ。少し置くと湿気る=重くなる。

苺のショートケーキの話に戻ると、最高に美味しい食材を活かしてその味が落ちずに、より美味しく感じられるという調理法はさすが日本だと思う。

トリノから来た夫婦は日本の「苺のショートケーキ」に驚いて盛り上がった。その姿を見て、外国人が日本に恋に落ちる理由は、既に知っている味を新発見できることなのだろう、と再発見できたのだった。

Massi


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