恋愛詩:湖上の戦い
私の顔が自分の涙で
歪みそして波を打つ
この場所で彼は私に
婚約指輪を手渡して
将来を誓ったのにその後
お国に徴兵されて戦地で
行方知れずになったのだ
あの日
彼と二人湖上で漕いだ
ボートはまだ健在であり
戦後数年経った今
お国から渡された
本物かどうかもわからない
遺骨の一部を投げ入れ
起きた波がおさまっても尚
私は湖面を見つめつづけて
枯れたはずの涙の再潤を
待っていたのだ
落涙が生んだ微かな波長が
未来へといざなう様に
私の心を揺らしている
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