近くて遠いゴール

締切が近づくにつれて緊張感で眠りが浅くなるのか、最近はっきりとした夢を見る。
そして、いともたやすく目が覚める。

そうして目覚めた後、布団の中でスマホを開き、しばし現実逃避。

ソシャゲのスタミナが切れた所でようやく観念して布団から這い出る。
寒い。
さっさと身支度を整え、ちゃんと研究進めてますよ?という体裁を保つために、後ろ髪を引かれながら家を後にする。

研究室までの道のりは、無心。
ぼーっと、思考を放棄していられる時間。
会社勤めが始まって、通勤時間が延びたら読書の時間にでも充てようと思う。

研究室。
研究に対するモチベーションはとうの昔に忘れた。
正確には、理不尽な研究テーマを与えられ、その絶望に気が付いた時にはもう、やりがいなんてものは無くなっていた。
その上、年末に限界まで追い詰められた結果、本気で研究を嫌悪し出した。

それでも今続けられているのはきっと、惰性、卒業のため、そして少なくとも思考の訓練にはなるからだ。
答えがあるかどうかも分からない問いを、ああでもないこうでもないと、文献を探りながら答えに近づこうとする過程。
少し悔しいが、一つの答えに辿り着いた瞬間だけは楽しいと思える。
そして、辿り着いた答えを准教授に否定されたときはそれ以上に苦しい。

時々、社会人と同じように給料があったら、と思うことがある。
これだけ苦労して、研究室の将来のために時間と労力を提供しているんだから、報酬があってもおかしくないだろうと思う。
給料を頂いて労働する立場となった時に、今の環境が恵まれていたと思うのだろうか。
どちらにしろ、研究室で浪費した分、遊楽に耽ろうかと思い描いている。

きちんと生活を維持できる時間に帰宅。
少し前に、限界まで研究室での作業時間を増やした結果、心身が限界に達したので締切ギリギリまで無理はしないと決めた。

帰路。
正直安堵感は無い。
家に帰れる喜びよりも、明日また作業が残っている不安の方が大きい。
それでも寝るまでは研究の事は考えないと決めて逃避する。

家に着く。
疲労度合いによって、無の時間が長くなる。
一日の鬱憤を晴らすように、コントローラーを手に取ってゲームに耽ったり、溜まっていた連絡の返事を返す。
今日一日分の自分を取り返したような感覚。
一日の最後にやっと自分のための時間。

そして、疲れよりも時間に追われて眠りに就く準備を始める。
明日も研究室に行かねばならないからだ。

布団に入った後も、少しだけ現実逃避し、飽きたところで寝る。

こんな、今時期どこにでも居るような卒業間近の大学生の日常。

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