日本語に潜むテュルク語
皆さんはテュルク語って私たちの生活から遠い存在だと思っていませんか?外国語から日本語に入ってきた言葉は中国語、英語、昔だったらポルトガル語やオランダ語等が有名ですが、よく目を凝らして探してみればテュルクの語彙だって実はあるのです。今日は、テュルク語を学ばずにも感じられるテュルクの風をみんなで感じてみましょう。
まず、一番有名なのは「ヨーグルト」です。トルコ語ではyoğur-「こねる、練り上げる」という動詞の派生語でyoğurt(ただし、ヨーウルトのような発音)という語から世界に広まったと言われています。ただし、中央アジアの国々ではヨーグルトを表す語としてはトルクメン語のgatykと同形の語が用いられており、トルコ以外ではあまり使われていない気がします。
次は、「シシ・ケバブ(シシカバブ)」です。ケバブはアラビア語起源(كباب kabābは動詞كب「ひっくり返す」 から)なので語彙としてはテュルクではありません。シシはトルコ語でşişと書き、「串」の意味です。なので、シシケバブは串焼きのケバブということになりますが、数年前に太宰府で見たドネル・ケバブの屋台には大きく「シシカバブー」と書いてありました。ちなみに、ドネルケバブは日本でもよく見るトルコ風のケバブで、大きな肉の塊を回転させながら焼き、周りの焼けたところをそぎ落としてパンにはさんで食べる料理(軽食?重いけど。)です。「ドネル」はもちろんトルコ語でdön-「回る」という動詞に中立形-erが付加され、形容詞の様に使われたものです。つまり、回るケバブですね。中央アジアではガンブルゲル(ロシア語でハンバーガー)と呼ばれます。ちなみに、ロシア界隈の方はシャワルマと呼びますが、これもトルコ語のçevirme「ひっくり返す」と同語源のようです。
あれ、記事がケバブ探求になっている 汗
キオスクやサライを紹介しようかと思っていましたが、これらは調べてみると起源はテュルク語ではなく、言葉としてはペルシャ語起源でした。オスマン帝国を介して世界に広まった語ではあると思うのですが、勘違いしてました。
キオスクはペルシャ語のکوشک(kushk)「日陰をつくる物」から来ており、庭園の中にある壁や屋根のない簡易な建物を指していましたが、トルコ語やトルクメン語ではköşkといえば宮殿自身を表しています。日本語のキオスクは最近はあまり使わないかもしれませんが、街角のちょっとしたお店のイメージですから、むしろ元のペルシャ語意味の方がまだ近い気がします。欧米経由で入ってきたのでだと想像できますので、どこかで意味が変わってしまったんでしょうね。
サライはあの「♪さくらーふぶーきのーサライーの空へー」で日本では知られていますが、ペルシャ語のسرای「宿または建物」を指す言葉から来ています。砂漠のオアシスをイメージして作られた曲だそうです。テュルク語に親しんでいる我々からするとトルコの世界遺産トプカプ宮殿Topkapı sarayıのsarayつまり、「宮殿」の意味の印象が強いので、歌のイメージも変わってしまいます。
またペルシャ語関連でテュルクと関係の深い言葉として、日本語の「ピラフ」があります。トルコ語でpilav、トルクメン語でもpalowと呼ばれるようにテュルク世界でよく用いられる言葉ですが、これも由来はペルシャ語のپلاو(pilaw)のようです。ウィキペディア情報ですが、「ピラフの語源はPALOV OŠで、Pはパヨズ(ネギ)、Aはアヨズ(ニンジン)、Lはラフム(肉)、Oはオリオ(脂)、Vはウェト(塩)、Oはオブ(水)、Sはシャルィ(米)を表す」というウズベク人の研究があるそうですが、ちょっとおもしろく(無理があると思って)て笑ってしまいました。でも出典は加藤九祚先生の『ユーラシア記』ということで気になります。(私も今度確認して追記しようと思いますが、もし御存じの方、お手持ちの方がいらっしゃればご教示願います。)
見切り発車で進んでしまい、途中からテュルク語ではなくなってしまいましたが、ご愛敬ということでお許しください。