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誕生日に本を贈る間柄って萌えるよね


撮影当日、現場まで行くには行ったが結局雨でバラしになった。ぽっかり時間の空いた僕と煉獄さんは西区のはずれで途方にくれた。



煉獄さんと言っても人気マンガの炎柱とは一切無関係である。僕がよくコンビを組むヘアメイクの女性のことだ。初対面の際にたいまつを振り回していたので煉獄と呼んでいる。



帰路につく車内で煉獄が思いつきを口にした。「鎌切の家に遊びに行きません?」



僕と煉獄の共通の友人、鎌切くんのことは 昔、日記に書いたことがある。日本を股にかける敏腕営業マンにしてダンサーでDJでもある鎌切くん。なじみの焼肉屋に頼まれて焼肉屋専用DJミックスを3本作り、3本ともボツにされた不憫な男、鎌切くん。



はじめて会った際、長い手足をカマキリのように蠢かせてパンツ姿で踊っていたので鎌切くんと呼んでいる。



ところで、こうして日々 note なんか書いていると、時折、怪しまれることがある。作り話でしょ盛ってるでしょ、たいまつなんか振り回すわけないでしょう。そんな感じで腹を探られる。



疑われるのもしゃくなので念のため証拠写真を貼っておく。




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これがたいまつを振り回す煉獄さん。




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ほんで、これがカマキリみたいに踊るパンツ姿の鎌切くんです。僕が書くことは全て眼前で繰り広げられたしょうもない事実である。


さて


僕と煉獄と鎌切は「ズッ友会」という身も蓋も無い名称の仲よしグループを結成している。以前は「マスダ会」という卑猥な名前だったのだが、僕がそれだけはやめてくれと懇願した結果、考えうる限りダサい名前としてズッ友会に落ちついた。そんなズッ友会の3人、実は3人で会ったことがない。いつも誰か1人が欠けている。皆、なんだかんだで忙しくて。


聞けば鎌切は腰を痛めて自宅に籠っているらしい。仕事がバラしになった午後のひと時、初めて3人で集まるのも乙なものかもしれないね。僕と煉獄はカマキリの巣に押し掛けた。



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鎌切は板チョコで僕らをもてなしてくれた。


これ1枚1800円するそうだ。世の中にはそんな物々しいチョコが流通しているのだな。酔った勢いで7枚も購入した鎌切は朝になって頭を抱えたらしい。無鉄砲な阿呆がいてこそ経済はまわる。


この1800円が一般的ハイライトで、それ以外、ここに書けるような話は何も無い。なにしろズッ友会の会合である。内輪以外の方々が読んでも得るものは無いし面白くも無い。知り合いの店にガサが入ったとかそんな話書くわけにもいかない。


しかしどうしてこうも楽しいのか。


仕事柄、毎日のように誰かと会う。礼儀や誠意の欠けた人とは二度と仕事しないという控えめなポリシーを10年弱徹底した結果、僕の仕事相手は奇跡的なほど気持ちの良い人だけになったので「人と会う楽しみ」に不自由を感じることはない。現場は常に楽しい。


にも関わらず、こうして友人とのぐだついた時間を過ごすと、無意味な集まりの大切さを痛感する。昔は少なく見積もっても週に4日は飲みに出ていたが、自粛自粛ですっかり引きこもるようになった。なまじっか仕事場が楽しい分、ストレスも無いのだけれど、やはり会いたい人には会わないとな。会いたい人だけ会えばいいな。


浮かれた僕は、つい「俺、明日誕生日だわ。」と口にした。それを聞いた鎌切は痛む腰をへっぴりながら本棚を物色し始めた。


「これマスダさんなら面白いですよ。こっちは2時間で読めます。こっちは一週間かかります。」



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新品同様。「俺、余程の本じゃない限り一回読んだら充分なんですよ」そう言いつつ鎌切が渡してきた本は間違いなく僕が喜びそうな2冊だった。


余程の本じゃないからくれたんだろ。そうボヤきながらも内心嬉しい。「これマスダさんなら面白いですよ。」その言葉と共に渡される本には余程の価値がある。ありがたいね。


昨日の出来事だ。
楽しい誕生日イブとなった。
それだけの話だが僕には大切な時間だった。
みんなありがとうズッ友だよ。



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