見出し画像

本を書く前に、実績を作れ!

「本を書きたい!」その前に

こんな相談が来る。

「本を書きたいので出版社を紹介して下さい!」

実際に私は本を書いているので、それなりのツテがあると思われるのだろう。事実として出版社は常に書き手を求めているし、私も著者を紹介して恩を売りたい下心もあるので、相談はウェルカムだ。そして、このように質問している。

「商業メディアに掲載された記事やご自身のブログを教えて下さい」

そして相談者は元気よく、自信満々に、当たり前のように、以下のような返事を返してくれる。

「そんなものありません!でも自分は本が書けるので紹介して下さい!」

「出来ないのに出来る」と言えば詐欺だが、本人が出来ると思っているのだから、それを信じるしかない。こちらとしても人間の可能性を閉ざさないように、出版社に相談してみる。すると相手も「あー、またそのパターンね」という表情をしながら「ちょっと難しいですねぇ……」と精一杯の社会人スキルを発揮するので、お互い察して0.02秒後には別に話題が展開される。

世の中には本を書きたいと思う人がたくさんいるが、実際に書いた人はほんの一握りである。「出来る」と思うことは簡単だが、「実行」することは難しいし、「完成」させることはもっと難しい。仮に本を執筆することになれば、約100,000字の文章を書かねばならない。文字量はTwitterなら140文字、Facebookなら数百~1,000文字程度、商業媒体やブログの記事なら2,000~5,000文字、気合の入った長文記事であっても10,000文字ぐらいだろう。100,000字というハードルがいかに高いかがよくわかる。

「本を書きたいアピール」の前にやること

では本を書きたい人はどうすればいいのか?

まずは"実績"を作ろう、話はそれからだ。

具体的には、ブログ(note)、商業媒体での記事、イベント・学会・セミナーなどでの発表、論文の執筆あたりである。もちろん1回ではなく、継続的に複数回でなければ意味がない。また、自分が本を書きたい特定のテーマに絞って、異なる視点で語ったり、内容を掘り下げるなど多面的なものになると良い。どうしても本を完成させるには、まとまった文章量と執筆期間が求められるので、「継続的に同じテーマに対する文章が書ける」という実績は、出版社にも安心感を与えてくれる。

この「安心感」が意外と重要で、「執筆依頼を出したが、いつまでも完成しない」という事態がそこそこあり、出版社にとって悩みのタネとなっている。特定のテーマで100,000文字を書くのは、実際にやってみるとかーなり辛い。特に副業として書く場合なら、本業があるので後回しになるし、辞退したところで表沙汰になって本業に影響がでるわけでもない。だから「数千文字の記事を複数執筆できた」という実績がなければ、100,000文字が必要となる書籍の執筆は依頼できないのだ。

世の中で「本を出したい」という人は多いものの、実際に書いた人が少ないのは、こうした背景がある。とはいえ本の発行数(販売部数ではなく本自体の種類)は増えており、出版社側も「売れそうな本を書けるなら実績とか細かいこと言わないので、とにかく書いてくれ!」という風潮もある(気がする。なぜならワイみたいな怪しいヤツでも3冊の本を書いているのだ)。

何もしなくても本を出せる人

一方で、実績がなくても本を出せる人もいるのが現実だ。例としては「有名人」が挙げられる。昔はテレビタレントだったが、いまならインフルエンサー、YouTuber、Tiktoker、趣味や特技でSNSの注目を集める人などが該当するだろう。この手の人材であれば、本人の代わりにブックライター(ゴーストライター)が執筆するので、取材に答える感覚で喋れば勝手に本にしてくれる。もっとも出版社が「本を書く人はこちらで用意します!」と、お願いしたくなる分野での実績が求められる。つまり有名人といってもニッチすぎる分野(例えば半導体露光装置の設計とか)では、ライターを立てるほどの出版オファーは来ない(世の中の役に立っている人なのだが)。そこは一般庶民にわかりやすい分野(食・美容・娯楽など)でなければダメなので、現実とは厳しいものである。

そんなわけで「本を書きたいので出版社を紹介して下さい!」と私に相談する前に、まずは実績を作りましょう。いきなり商業媒体に連載するのは無理でも、noteで記事を10本書けば文章を書く基礎体力も身につきます。

「偉そうなこと言ってるけど、お前の実績はどうなんだ?」という方々におかれましては、11月29日に「データ分析の大学」という私の新刊が発売します。こちらも240ページで約100,000文字はありそうな感じがするボリュームなので、ご一読ください。

アフィリエイトはないので思う存分クリックして、ついでに買ってね(そして印税は入る)。

記事が気に入ったら、Twitter(X)のアカウントもフォローしてください! https://twitter.com/maskedanl