見出し画像

フツーの会社でフツーに働く人にオススメするAI・データサイエンティスト本12選

ここ数年「もう終わりだろう」と言われ続けたAIブームは、コロナウイルスによってタピオカ屋を巻き込んでトドメを刺された。自宅作業を「WFH」と呼び、同僚や取引先とはZoomでコミュニケーションを取っている。息抜きにNetflixやYoutubeを見て、「AIは『テレワーク』と『DX』に話題も予算も奪われたな」と思ったりする。だがこれは、IT業界で働く人間の姿だ。

一方で自宅で仕事ができない方々も多く、否応なく出勤する光景は日常となった。仕事から帰って息抜きにテレビをつければ「スーパー派遣社員とAIでリストラ」なドラマや、倍返しの人がITリテラシーとコンプライアンスを無視した銀行で歌舞伎役者による顔芸勝負を見て、「月曜日なんてなければいいのに」と思っている。

つまりIT業界のイキリツイッタラーである我々と、現場で働きながら社会を動かす皆様では、住む世界も見ている光景も異なる。むしろ「当然のようにテレワーク」は少数派であり、「マスク着用とアクリルの仕切り以外は以前と変わらない」が多数派とも言える。そんなフツーの会社では、社長や部長あたりが「テレワークのついでにAIも導入しよう」とか「ハンコ押すために出社するのが手間みたいだけどAIでなんとかならない?」的な相談以前の無茶振りを、部下や取引先にぶんなげているのが通常運転である。
本記事ではそんなフツーの会社でフツーに働く人にオススメするAI・データサイエンティストに関連する本を12冊選んでみた。
対象読者はIT企業"以外"で働く、ITエンジニア"ではない"職種の方々となる。「AI導入から運用までに必要な準備」「AIを活用する組織作り」という観点で選んでおり、「完全に理解した」以上の人には物足りないと思われるが、そこらへん文句言わないように。


■AIを"だいたい"理解する

そもそもフツーの人にとって「AIでなにができるのか?」をイメージすることは難しい。普段使うITツールと言えば、ワード・エクセル・パワーポイントとスマホアプリなのだから当然である。まずはどうやってAIを仕事で使いこなすかを学ぼう。

「文系」「統計・プログラム知識不要」は怪しいAIセミナーのありがちなワードだが、本書は至って真面目に「ITに詳しくない人でもわかりやすい本」という意味で使われている(実際わかりやすい)。「AIを使う側」という視点で、日常の業務における「AIは何ができててどんな役に立つか」を説明しており、事例も豊富なのでイメージが湧きやすいのも良い。ただし何度も増刷がかかっているのにここで紹介して更に売れると、同じAI・データサイエンティスト本の著者として悔しいのが唯一にして最大の欠点である。


ゆるふわなタイトルとほんわかした表紙だが、データ分析手法やプロジェクトの流れだけでなく、分析ツールの紹介など現場の経験に裏打ちされた著者によって幅広く説明されている。ITエンジニア寄りの内容も含みつつ、他の書籍では語られる機会が少ないデータ基盤においても、解説があるのが嬉しい。ページの都合なのか個人のスキルや組織に関する描写が少ないのは残念だが、そこは他の本で補えば問題ない。


AIに対する過度な熱狂を経て、「AI導入は失敗ばかり」「PoC(試作段階)から先に進めない」というAIブームの失敗を反映した内容がまとめられている。また、費用に対して効果が不明瞭になりがちな点にも言及されているので、注意したい。よくある失敗を回避しつつ、成功確率を上げる道筋を探る本である。著者は歌舞伎の子役を経てAIで起業したが、もしも歌舞伎を続けていたら今頃は日曜日の銀行ドラマで顔芸を披露していたのだろうか。


AI開発やデータ分析プロジェクトの受託企業大手であるブレインパッド社による本。長年の受託開発で培ったノウハウをまとめており、想像だが本には書けない修羅場も経験しただろう。IT部門とは関係ない人には開発から活用までの流れがわかり、外部のIT企業に発注する立場の人なら必ず読んでおきたい。外注先でどんな問題が起きるかを事前に把握しておき、スムーズに開発が進められるよう準備すればAI導入の成功率も上がるからだ。3回読み直しても発見があるほどの良書だが、話題にならないのが不思議でしょうがない。

■事例と前例とエビデンス

フツーの会社で新しいことを始める上で必要なのは「事例」である。偉い人は二言目には「事例はあるのか?」と聞くからだ(「事例」を「前例」「エビデンス」に置き換えても可)。偉い人にとっては「事例がある=成功する」の図式が成り立つので、こちらも準備しておこう

事例探しには手間がかかり、都合よく同業他社が既に手掛けているとは限らない。ネットで検索しても「いかがでしたかブログ」のPVに貢献するのがオチである。本書は8業界36業種で様々なAI活用事例を紹介しており、フルカラーで図も多い。偉い人向けのカタログ的な用途として紹介すれば、「他社でやってるから我社でもやろう」というネタ元にもなる。意外とAIが活躍する場面は多いこともよくわかる本である。


■製造業と建設業におけるAI活用は「IoT」

日本の労働人口において、製造業と建築業で構成される第二次産業の従事者は3割程度である。つまり工場や建設現場で働く作業着のおじさんは、思った以上に多く、GDPにも貢献しているのだ。そんな「ものづくり」の世界では、「AI」ではなく「IoT」という別ジャンルで語られる。「俺たちの現場はAIなんかじゃ測れないぜ、若造」みたいな雰囲気だろうか。

「『IoT』はなにか?」を一通り網羅したのが本書である。センサーや工作機械やユンボやネコが活躍する現場で働く人は、こちらも読もう。IoTはAIというソフトウェアだけでなく、ハードウェアとの融合が求められることを意識したい。様々な人・モノ・機械が行き交う現場では、PC上で動くプログラム以外にも求められるものがあるのだ。


日本にある会社の98%は中小企業と言われる。そのなかでも代表的なイメージは「町工場」だろう。本書はいわば「MKB(町工場)がIoTをやってみた」という本である。いわゆる弁当でIoTに挑戦するのだが、垣間見える現実は大変厳しい。調子こいたIT企業の社長が「IoTで日本の中小企業を元気にしよう」と掲げたところで、手間がかかるのに売上にならず撤退するのがよくわかる。製造業従事者にとっては事例として、IT企業関係者には厳しい現実として、ある意味参考になる本である。


フツーの会社の組織づくりとは?

AI・データサイエンティストの組織づくりに関する書籍では、アメリカにおける取り組みを紹介するのも多い。だが本記事で対象とするのは、「フツーの会社」である。フツーの会社にはMBAホルダーもTシャツのエンジニアもいなければ、ストックオプションもない。作業着と現場と年功序列で構成されたコテコテの日本企業における取り組みを参考すべきだ。

コテコテということで、大阪ガスの2冊を紹介したい。この手の話題でいつも挙がる(元)大阪ガス・(現)滋賀大学教授の河本薫さんの本だが、ここは日本であってシリコンバレーではないので、これしか紹介しようがない。本記事における「フツーの会社」でAI・データ分析チームを立ち上げるには、現場監督のおじさんとキャバクラや接待ゴルフに付き合ったり、出張帰りにはお局様にお土産を渡すといった地道な根回しと関係構築が大切なのだ。


■「俺達の仕事にITなんて関係ねぇよ」という方へ

「『AI』ってなんかすごい技術で人間の代わりに仕事してくれそう」と言われると、IT業界の人間的には「適当じゃね?」と思う。だが自分が宝塚歌劇について聞かれたら「派手なメイクと衣装の人が階段に並んで踊ってるよね」ぐらいしか語れない。知らない分野に対する認識とはその程度であり、銀行員に扮した歌舞伎役者ばりの顔芸で「AIの本質とは!」と語っても、誰も聞いてくれない。だからこそAIを含めたITに関心がない人には、ITの重要性を伝える必要がある


かつては「ハードウェアの付属品」「外注に任せれば良い」という認識だったソフトウェアは、今やあらゆるビジネスで重要視されている。「IT=コスト削減」としか考えられない人は想像以上に多く、それが常識になっている。だがソフトウェアがビジネスの中心になりつつあると、本書を読んで認識を改めなければならない。なお、IT業界の人は既知の内容が多いので読まなくていいし、(恐らくは)著者もIT業界以外に向けたソフトウェアの重要性を訴えるのが目的だと思う。


かつては「良いものを作れば売れた」時代だったが、今や「売ったら終わり」ですらない。フツーの会社の人は「ものづくりスゴイ」と思い込みがちである。今やあらゆるセンサーが搭載されて、データを取得しながら分析して、内部のソフトウェアによって制御される。形ある「モノ」ではなく、見えない「UX(ユーザー体験)」によって製品が評価される時代になれば、カタログスペックなど意味をなさない。ハードとソフトが一体化しようとする過渡期といえる現況を、俯瞰して見られる一冊である。


最後に紹介するのはAIでもデータサイエンティストでもなく、一見するとITすら無関係な業務改革の本である。これを紹介するのは、AI導入にはおける業務の変化において、社内の抵抗勢力が存在するからだ。ITに関心がない社員にとってAIは邪魔でしか無く、反発がされれば導入も活用もできない。社内で業務改革を進めるために何をすれば良いかが詰まっているので、フツーの会社で新しいことを始める前に読むべき一冊である。

■まとめ ITは必要不可欠な存在へ

フツーの人がイメージするAIと言えば「よくわからないけど便利」「よくわからないけど怖い」「よくわからないけど人間の仕事を奪う」といったところだろう。このような意見を正解とも間違いとも言えないが、よくわからないことは事実である。「よくわからない」を「なんとなくわかる」に引き上げることが重要であり、まずは「仕事で役立つAIとは?」を自分で考えられるレベルに達する本を選んでいる。
今回紹介した12冊を全て購入すると22,424円となり、1冊読むのが2時間とすれば不眠不休でも丸一日かかる。しかも普段ITへの関心が薄い人にとっては、わかりにくい部分もあるだろう。忙しい現代人にとって、社内のAI導入活用について要点を手早く学びたいニーズがあるのは重々承知である。
そんな方々に向けて、素晴らしいセミナーが開催される。

開催日時:2020年8月21日(金)14:00~17:20予定(休憩有)
開催場所:オンライン(Zoom)
受講料 :22,000円(税込)
主催:日刊工業新聞社

今回紹介した本の内容を"だいたい"網羅したカリキュラムを、たったの3時間で学べるセミナーである。お値段的がほぼ同じでありながら、所要時間は約8分の1(当社調べ)という驚異的なコストパフォーマンスである。

・セミナーのカリキュラム
1.AI開発ミステリー
2.  よくある失敗 ~傾向と対策~
3.AI導入その前に ~ 準備が9割 ~
4.従来のシステム開発との違い
5.ワークショップ
6.成功に導く設計図
7.質疑応答

詳細なカリキュラムは上記の申し込みページをご覧いただきたい。
フツーの会社でフツーに働く皆様に向けて、わかりやすく楽しい内容となっており、AI初心者でも安心安全である。

「テメーの告知なんていらねーよ」と思った人には、本の画像をクリックしながら好きな本を購入いただきたい。アフィリエイトは貼ってないので、筆者には1円も入ってこない安心設計である。

note記事が気に入ったら、Twitterアカウントをフォローしてください! Twitter : https://twitter.com/maskedanl