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インターましロードを作るたび最終章~爆速のクライマックス


旅の行程 最終日

1 はじめに


『インターましロードを作るたび』、最終章へようこそ。突然決めて突然始めた最後の企画もこの日でラストになった。


最終日は、とにかく爆速の旅。ストラスブールから、南仏の都市マルセイユへ移動し、そこから飛行機でイングランドへ帰るという内容になっている。わざわざマルセイユへ行くなんて普通なら考えられないだろうが、全ては乗り放題チケットの恩恵を最後まで受けるためだ。そんなわけで、最終日を爆速で振り返っていきたい。


2 ストラスブール→パリ



朝7時。ホテルを飛び出して駅に向かった。タクシーを予約していたのだが、向こうの手違いでドライバーさんが確保できないことになってしまった。ホテルの方が大変親切な方で、駅まで一緒に行ってくださることになった。駅まではトラムで3駅だった。


今回真しろが乗車するのは、フランスの大エース、TGVだ。日本でいう新幹線と同じようなものだ。今日はこのTGVに2連チャンで乗車することになる。


まず乗車するのはパリ行きのTGV。Interrailのチケットを混みで乗車するので、日本円で4500円で乗車できる。ちなみに定価はもっと高い。今回乗車したのはいわゆる2等車だ。


2等車といっても、Wi-Fiもあるし、電源も付いている。そしてなんといっても

今まで乗ってきた電車と速さがだんちなのがTGVだ。発車して数分は気づかなかったが、まず走行音も全然違うし、駅には1駅も止まらずにパリへ向かっているようだ。


ところがここで緊急事態。前の電車の遅れの影響で、到着時刻より10分遅れてパリ東駅へ到着することになってしまった。次の電車は、パリリヨン駅という別の駅から発車することになっていて、このまま遅れれば乗り換え時間は36分しかない。2つの駅がどれほど離れているか分らないが、かなり厳しいタイムトライアルになることは間違いないだろう。爆速のTGVは、12分遅れで、パリ東駅へ到着した。


パリリヨン駅

3 TTT~超絶タイムトライアル@Paris


ストラスブールから乗り合わせた中国系フランス人のマダムが、親切にも案内してくれることになった。チケットを見せると、マダムは驚愕の表情。当然である。ストラスブールからパリ東駅へ行って、36分でパリリヨン駅へ行って乗り換えてマルセイユに行くというのは、常人ならしないことだからだ。とはいえ、なんとか方法を考えてくださった。地下鉄で行くと時間がかかるので、タクシーを利用することにした。


電車の発車時刻は10時38分。大渋滞のパリの道路をタクシーはなんとか進んでいく。そして10時25分。なんとかパリリヨン駅へ到着した。心配してくださったマダムもわざわざ見送りに来てくれた。パリは観光を楽しむべき町。そこを、まるでランナーのように駆け抜けていく。花の都なんて目に入らない。元々見えないけれど(笑)。


ホームにはなんとか到着したのだが、座席番号が分らない。あと数分で電車が発車してしまう。とりあえずチケットだけ見せて、車内に無理矢理入り込んだ。マダムにちゃんとお礼できなかったことだけが心残りだ。


マルセイユ行きの電車は、焦っている真しろの気も知らずに、ゆっくりパリを出発。楽しくて美しいパリの町には、わずか40分しか滞在しなかった。非常に奇妙な旅行者である。


車掌さんにチケットを見せて、なんとか座席を発券。無事に座ることもできた。ここからは約3時間半、このフランスの新幹線に身を預けることになる。ひとまずTTTは無事成功した。


4 パリ→マルセイユ


TGVは、この旅で乗ってきたどの電車よりも速く、いくつもの町を通過していく。これから南仏の町、マルセイユへと向かっていく。マルセイユは美食の町としても知られている。ストラスブールから電車を使って1日、いや、ほぼ半日で行く場所ではない。まして、これから英国へ帰ろうという人が行く場所ではない。しかしそれでも真しろは、マルセイユという町の地を、1度踏んでおきたかった。


正直飛行機までの時間はほとんどないので、食事を取る時間すらないだろう。とはいえ、今はTGVのこの爆速感を楽しみたかった。


約3時間後。電車はある町に停車した。そこは、歌や歴史で有名な南仏の都市、アビニョンだった。かなりフランスの南側へ来たことがよく分る。もうドイツ語を話している人は見あたらない。朝はドイツ語を話している人が多い地域にいたなんて信じられない。むしろ、旅をスタートさせたイタリアのほうが近い。


南仏 アヴィニヨン駅

その30分後、電車は、マルセイユの駅に到着した。約6時間のTGVでの旅はあっけなく終了した。新幹線に匹敵するこの大エースの活躍に今後も期待である。


マルセイユ・サン・シャルル駅

5 帰路


マルセイユでおいしいご飯を食べる余裕も無く、すぐにタクシーへ乗り込んだ。これから2時間半後の飛行機でイングランドへ舞い戻るのだから。


駅から空港までは案外距離があって、高速道路を使用したため、かなりの料金がかかってしまった。しかし、空港リムジンバスを予約していなかったため、これしか方法はなかっただろう。ヴェネチアのときは駅が近かったので、そのように計算していたのは迂闊だった。


空港に到着すると、1日目に経験したのと同じ問題が発生した。オンラインチェックイン問題である。しかしこれは避けようがないので、課金して切り抜けるしかなかった。ひとまず、これで残すは爆速の空の旅だけだ。それにしても、フランスに行ってフランス料理をほとんど食べなかったなんて、きっと本当に奇妙な旅行者認定されるだろう。


気づいたら空の上にいて、気づいたら夢の中にいて、気づいたら飛行機はStansted空港へ着陸していた。思えば本当にあっけなく、旅の終わりは目の前である。


あまりにも爆速で町から町へ走り、町から町へ飛んでいったので、この日は何も食べていなかった(美食の町を通り過ぎていながら)。そういうわけで、空港で軽く腹ごしらえをしてから、National Expressで、修行場の町へ快適に向かっていく。空港やバスで英語の放送を聞いたり、聞き慣れた町の地名を聞いたりするだけで、まるで昔から知っている場所へ帰ってきたみたいだ。この快感を心地良いと思った時点で、どこかのネジが外れている。あまりの爆速で、取れてしまったのだろうか。


バスを乗り継いで、21時過ぎに、この奇妙で執念に満ちた楽しくて感動的な旅は幕を閉じたのであった。


6 総括


例によって、最後にこの旅のまとめを書いておく。この旅で感じたことは以下の3点。


・    むちゃのし過ぎはよくないということ。最終日の例がそうであるように、Interrailのチケットをフル活用するために、たくさん電車に乗ろうとして、かなりむちゃなプランになってしまった。日本では実現可能に思われるプランでも、電車遅延やストライキが日常のヨーロッパでは難しいこともたくさんある。加えて、自分が話せる言語が使えない人も多い場所でむちゃは禁物だ。今回この旅が成功したのは奇跡と言って良い。決してよい子はまねしないように。次こそは、もっとゆっくりした旅をしてみたい。

・    自分も人も信じ過ぎてはいけない。言葉も視力も限られた町では、きっと大丈夫と楽観的に考えたり、助けてくれた人を信じすぎたりしてはいけない。きっちり情報を確認して、今自分がどこにいて、これから何をしたいのかを意識しなければいけない。今回は最初の日にこの事を実感させられた。物を取られたり、宿に入れなかったりといった問題はなかったが、きっちり情報と命の安全が保障されるまでは、全てを信じないように、緊張感を持って旅をすることが大切だ。その心がけは、言語の壁がない日本やイングランドでも同じだし、人生においてもそうだろう。

・    好きなことに挑戦しようとする自分の執念を知った旅になった。準備段階も含めてだが、言語と視力の2つの壁を抱えていても、とにかく電車に乗って、地理や言語を肌で感じたいと思う気持ちが、体と心を動かしていた。何も怖くないと言えば嘘になるし、むしろ真しろは臆病なほうだ。しかし、その臆病な気持ちさえ蹴散らすほどに、真しろが持っていた希望と執念は大きかった。そしてその希望がレールを走り抜け、会いたい人に会って、食べたいものを食べて、やりたいことをやった。物語の粒を束ねて、自分なりにまた新しいレールを作り上げたのだ。このレールはどこへ続くのだろうか。次なる執念の爆速列車は、どこへ向かうのだろうか。


7 おわりに


これで本当の本当に、『インターましロードを作る旅』は終わりを迎えた。実に長く、実に早く、実に楽しい旅だった。失敗もしたし、決して美しい旅とは言えないけれど、この経験は、誰にも取られることのない大きな財産になった。


きっとこの生来の性格だから、修行が終わろうと、何をしていようと、また偏屈な旅をしていることだろう。もしそんな旅人を見かけたら、きっと真しろだろうから、あきれ顔でいいから、優しく手を差し伸べてほしい。


それでは今日はこの辺で。Have a nice day!

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